二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2018年12月18日(火)更新

15:00

ブルペンの待遇改善なくして躍進なし
年俸アップこそが“勤続疲労”の特効薬

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 今オフの契約更改、例年以上に目立ったのが中継ぎ投手のフロントへの不満でした。17日、千葉ロッテの松永昂大投手は1000万円増の7000万円+出来高(金額は推定)でサインしたものの、表情は晴れやかではありませんでした。

「交渉では中継ぎ投手の評価方法について話をしました。評価の仕方がキツイ(厳しい)のではないか、ということです。こういうことは僕や抑えの益田直也が言わなくてはいけない。僕らがいなくなってもチームは続いていきますから。ブルペンをより良い環境にもっていければと思っています」

フォア・ザ・チーム

 松永投手は2012年、ドラフト1位で大阪ガスからロッテに入りました。左の貴重な中継ぎとしてプロ入りから6年間、毎年、50試合前後に登板しています。今季は自己最多の60試合に登板し、「来季はもっと投げてもいい」とフォア・ザ・チームの姿勢をアピールしました。フロントへの提言はブルペンの中心人物としての自覚の表れと言えるかもしれません。

 さて、ロッテに限らず中継ぎの査定に関しては、以前から「厳しい」との声が引きも切りません。今から10年ほど前、私は元巨人のリリーフ投手からこんな話を聞きました。

「リリーフでいくら頑張っても、年俸が上がらないので、査定の担当者に言ったことがあります。『これじゃ、やる気にならない』と。そうしたら、『だったら先発に起用されるよう頑張りなさい』と逆に言い返されましたよ。私がいたころの巨人ではリリーフは先発に失格した者がやる仕事だと。だから先発投手より給料を高くすることはできないと言うんです。でも、これって変でしょう。先発かリリーフかというのは適性の違いであって、先発同様、リリーフも大切な仕事なんですから」

 元リリーフ投手はさらに続けました。

「先発投手は投げたら最低でも4日間、休むことができますが、リリーフは毎日のように投げなければならない。もっと言えば試合でマウンドに上がらなくても、ブルペンで肩だけはつくっておかなければならない。そんな苦労を全く無視され『リリーフは先発に失格した者がやる仕事だ』なんて言われたら、誰だってやる気をなくしますよ」

中継ぎ初の大台突破

 こうした球界の「中継ぎ軽視」には少なくない数の投手が疑問を呈しました。その中のひとりが近鉄などで活躍した佐野慈紀さんです。佐野さんは91年、近大工学部からドラフト3位で近鉄に入団。中継ぎ一筋で奮投し、96年にはリーグ最多の57試合に登板しました。当時を振り返ってこう語ります。

「確かに先発ができないから後ろに回される、それはある意味で真実です。僕も一応、プロ入りしたときにはまっさらなマウンドで投げる先発を志していました。まわりのピッチャーだって最初から『オレは中継ぎで』なんて思っているものはひとりもいませんでしたよ。でも、そのときの編成やチーム事情で先発の夢は叶わなかった。それで中継ぎという場所があてがわれたわけですが、そこで生きるからには先発と比べて格がどうこうではなく、中継ぎとしての結果を評価してもらわないと困りますよね。僕もオフには相当戦いましたよ」

 契約更改の場で中継ぎの待遇改善を訴え続けた96年オフ、佐野さんの年俸は1億円に達しました。NPBの中継ぎ投手としては初の大台突破として話題を集めました。

「毎年、契約交渉には“オレは144試合の半分に投げてんやぞ”というプライドを持って臨んでいました。チームに貢献しているという自負だけは失いたくないし、その自負こそがマウンドでも僕の支えになっていましたから。試合の終盤、流れが向こうに行きそうなところをパチンと断ち切る。それで涼しい顔をして抑えの人に“どうぞ”とバトンを渡す。プロ入り当初は先発に憧れていましたが、やってみたら中継ぎはとてもやり甲斐のある仕事でしたよ」

 05年から中継ぎ投手を評価する「ホールド」がセ、パ両リーグで採用されています。歴代最多ホールドは北海道日本ハム・宮西尚生投手の294ホールドです。宮西投手は今オフ、海外FAの資格を得ましたが、権利を行使せずに残留しました。日本ハムは33歳のベテランに2年総額5億円(金額は推定)と最大級の評価で応えました。プロ野球における選手への「誠意」とは、すなわち年俸です。中継ぎ投手に対し「縁の下の力持ち」と持ち上げるだけでは、疲労のたまった体にムチ打ち、「チームのために」とはならないでしょう。ブルペンの待遇改善なくしてチームの躍進はありません。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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