二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2019年4月23日(火)更新

15:00

リリーバーも「沢村賞」の選考対象に!
沢村賞2回、斉藤和巳の脱先発選民思想

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 沢村賞といえば、プロ野球の先発ピッチャーに与えられる最高の賞です。ノーヒットノーランを3回達成したプロ野球草創期の大投手・沢村栄治さん(巨人)の名を冠していることから、球界関係者にはその年の最高のピッチャーに与えられる賞だと受け止められています。

鉄腕・稲尾の苦言

 1947年に読売新聞社が制定して以来、セ・リーグのピッチャーが受賞対象でしたが、89年からパ・リーグのピッチャーも対象になりました。過去、複数回受賞したのは以下の14人です。3回=杉下茂さん(中日)、金田正一さん(国鉄)、村山実さん(阪神)、斎藤雅樹さん(巨人)。2回=別所毅彦さん(昭/南海、巨人)、堀内恒夫さん(巨人)、高橋一三さん(巨人)、小林繁さん(巨人、阪神)、北別府学さん(広島)、斉藤和巳さん(ダイエー、ソフトバンク)、上原浩治投手(巨人)、田中将大投手(東北楽天・現ヤンキース)、前田健太投手(広島・現ドジャース)、菅野智之投手(巨人)。

 沢村賞には選考基準があります。登板試合数25試合以上、完投10試合以上、勝利15勝以上、勝率6割以上、投球回数200回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下。さらに2018年から、7回で自責点3点以内のクオリティスタート率(QS率)が補足項目として付け加えられました。

 先に紹介した14人の中で現役を除き一番若いのが斉藤和巳さんです。03年と06年に受賞しました。本人によると、20勝をあげた03年より06年の方がうれしかったといいます。26試合に登板し、201イニングを投げ18勝5敗、防御率1.75、205奪三振、勝率7割8分3厘。完投数(8)こそ基準に達しませんでしたが、他は全てクリアしました。斉藤さんは、こう振り返ります。

「僕にとって沢村賞は特別な賞でした。というのも03年、最初の受賞は阪神の井川慶投手と同時選出でした。そのとき選考委員の稲尾和久さんに『お前はオマケだぞ』と言われました。20勝をあげたものの選考基準の7つのうち4つしかクリアしていなかったから、そう言われるのも当然です。それで06年に受賞して、『今度は文句なしでとりました』とお礼が言いたかったのですが、お目にかかる前に稲尾さんが亡くなられて……。それが今でも心残りです」

 かつてエースは「先発完投」が当たり前でした。しかし、分業制が確立した今、「投げれば完投」は至難の業です。

 とはいえ、過去の沢村賞受賞者の多くは「先発選民思想」の色に染められており、6回や7回でマウンドを降りる先発投手に不甲斐なさを感じているようです。

「サイ・ヤング賞に倣え」

 そんな中、斉藤さんが以下のような持論を展開したのは、私にとっては少々驚きでした。過日、斉藤さんはこう語ったのです。

「基準を見ればわかるとおり、沢村賞受賞にはトータルでの能力が求められます。だから世間の人たちも“その年最高のピッチャーが沢村賞投手”と誤解するんでしょう。でも、あくまで『先発投手として』と注釈がつきます。リリーフのことを考えると本当に申し訳ない気持ちになりますね」

 斉藤さんは選手会長に就任した06年、「先発特権」の剥奪を首脳陣に提案しました。

「若い選手にもずっと『先発だからって特別じゃないぞ』と言ってました。リリーフは僕らの知らないようなプレッシャーの中で登板する。先発は中6日なら5日はリラックスできるけど彼らは毎日投げる準備をする。そんな彼らに対しては本当に感謝の気持ちしかなかった。当時、あがりの先発投手は5回が終わったら帰って良かったんですが、僕はそれを独断で撤廃しました。チームの勝敗を共有しないで何が先発だ、という思いが強かったんです」

 オレがオレが、というタイプの多い先発投手にあって、斉藤さんは稀有な存在です。さらには、こんな提案も。

「昔と違って完投数は勝ち星の半分もいかないのが現状です。半分以上はリリーフに助けてもらっている。先発投手の名誉が沢村賞なのはわかっていますが、アメリカのサイ・ヤング賞のようにリリーフも含めた全投手対象の賞があればいいのですが……」

 メジャーリーグの年間最高投手に贈られるサイ・ヤング賞は沢村賞から遅れること9年後の1956年に制定されました。マイク・マーシャルさん、スパーキー・ライルさん、ブルース・スーターさん、ローリー・フィンガースさん、ウィリー・ヘルナンデスさん、スティーブ・ベドローシアンさん、マーク・デービスさん、デニス・エカーズリーさん、エリック・ガニエさんと9人のリリーバーが受賞しています。これを見習うべきだという斉藤さんの主張は傾聴に値すると思われます。

K.Ninomiya二宮清純
                                                                          

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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