二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2020年12月22日(火)更新

15:00

MVP逃すも、高評価の中継ぎモイネロ
川口和久が唱える「8回最強投手説」

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 今季、パ・リーグの最優秀選手(MVP)には柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)が選ばれました。17日に発表された投票結果では柳田選手(1147点)を筆頭に2位・千賀滉大投手(542点)、3位リバン・モイネロ投手(293点)、4位・森唯斗投手(108点)とソフトバンク勢が上位を独占しました。

角度のあるボール

 この中で意外と票が伸びなかったのがモイネロ投手です。柳田選手のMVPは動かないとしても、もっと接戦になると思っていました。たとえば元ホークスの斉藤和巳さんは「(MVPは)モイネロ一択です」(ザ・ダイジェスト20年12月16日配信)と明言していました。

 入団4年目の今季、モイネロ投手は50試合、48イニングを投げ、77奪三振。打たれた本塁打はわずか1本。主に勝ち試合の8回を任され、40ホールドポイント(2勝38ホールド)をマークし、初の最優秀中継ぎのタイトルに輝きました。

 巨人との日本シリーズでも圧巻のピッチングを披露しました。4戦中3試合に登板し、3イニングで8奪三振。巨人打線に1本のヒットも許しませんでした。多くの評論家が「セ・リーグにこんなピッチャーはいない」と舌を巻きました。

 キューバ出身のサウスポー、モイネロ投手の武器は細身の体から投げ下ろすストレートとカーブです。この他にスライダーとチェンジアップもあります。奪三振率は驚異の14.44。9回を投げたとすれば14個以上の三振を奪っている計算になります。

 サウスポーの分析ならこの人、広島時代、3度の奪三振王に輝く川口和久さんに聞きました。

「モイネロの特徴は腕を縦に使い、高い位置でボールを離すことです。これによりストレートは角度がつき、カーブは上から下へ落ちるような軌道を描く、昭和の頃にドロップと呼ばれたボールですよ。バッターの視線は自ずと上下することになり、これを捉えるのは至難の業ですね」

----2020年シーズンは来日4年目。かなり研究されていたのでは?

「いや、彼の球は研究しても打てるようなものではありません」

「攻略は難しい」

----その理由は?

「人間の目はボールの軌道を線で捉えることはできないんですよ。テレビ中継のスロー映像のように線で見えるわけではないから、バットをライン上に入れることは難しい。しかもストレートとカーブが同じリリースポイントから、同じ腕の振りで放たれるんです。あのカーブが来るとバッターの視線は大きく上下します。到底、対応できませんよ。ストレート待ちならカーブを、カーブ狙いならストレートを。キャッチャー甲斐拓也のリードもシーズンを通して冴えていましたね」

----では、どうすれば攻略できるのでしょう?

「結論を言えば攻略は難しいでしょうね。というのもモイネロ投手は8回の1イニング、3つアウトをとれば仕事が完了です。一発を浴びたり、ツーベースを打たれることはあるでしょうが、彼に連打を浴びせることは不可能です。2本ヒットを打たれても、残り3人でアウトをとれるわけだから焦る必要がないんです」

 さらに川口さんはモイネロ投手に8回を任せているのが、ソフトバンクの継投の肝だと言います。

「7回、8回、9回の投手起用は“勝利の方程式”と呼ばれていますが、この中で一番重要なのは実は8回なんです。ここで万が一、逆転されると、チームとしてはクローザーを使えなくなる。それを防ぐためにリリーフの中で一番安定感のある投手を8回に持ってくる。これが勝利の方程式の肝だというのが僕の持論です。9回は役割が決まっているから、ある意味楽なんです」

 実際、川口さんも巨人の投手コーチ時代、方程式の構築に苦労したと言います。

「当時、ゲーム終盤を任せる投手はスコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗の3人。この中で一番、安定感があったのが山口。バッターの左右でマシソンと逆になることはありましたが、基本的に8回は安定感のある山口に任せていましたね」

 近年、打線では「2番最強説」が市民権を得た感がありますが、ピッチャーにおいては「8回最強説」を唱える川口さん。そのロールモデルがモイネロ投手ということです。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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