二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2018年8月14日(火)更新

15:00

カープ、リーグ三連覇に当確ランプ!?
平均得点5.15。新流線型打線の破壊力

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 広島がリーグ三連覇に向けて独走中です。8月13日現在、2位・巨人とのゲーム差は11.5。今週中にもマジックナンバーが点灯しそうです。

リーグ随一の攻撃力

 貯金21の原動力は、なんといってもリーグ随一の攻撃力です。打率2割6分6厘、129本塁打はリーグトップ。1試合平均得点を5点台(5.15点)に乗せているのもセ・リーグでは広島だけです。参考までに紹介すれば、オールスター明けからここまで、広島が7点以上取った試合は8試合あります。その全てのゲームで勝利しています。

7月20日 10-9(巨人・マツダ)
7月21日 7-5(巨人・マツダ)
7月22日 8-6(巨人・マツダ)
7月26日 9-3(阪神・甲子園)
7月27日 10-1(横浜DeNA・マツダ)
8月1日 13-7(東京ヤクルト・神宮)
8月8日 7-5(中日・マツダ)
8月10日 9-3(巨人・マツダ)

 さらに言えばビッグイニングが多いのも広島の特徴です。7月22日の巨人戦(マツダ)、7月26日の阪神戦(甲子園)で1イニング5点以上を記録しています。

 まずは22日の巨人戦を振り返りましょう。1-6と5点のビハインドで迎えた5回裏、広島の攻撃は8番・磯村嘉孝選手からでした。相手のエラーで出塁し、続くアドゥワ誠投手は送りバントに失敗。ここで1番・田中広輔選手にツーランホームランが飛び出しました。さらに2番・菊池涼介選手がフォアボールで歩くと、すかさず二盗を決めて巨人バッテリーを揺さぶります。3番・丸佳浩選手はフルカウントからのストレートを強振。打球は右中間スタンドに飛び込み、これで5-6と1点差です。さらに4番・鈴木誠也選手が左中間へホームランを放って同点。6-6と試合を振り出しに戻し、勢いのままに、8-6と試合をひっくり返しました。

 阪神戦のビッグイニングはプレーボール直後でした。初回から広島は制球に苦しむ阪神の先発・藤浪晋太郎投手に襲いかかりました。1番・田中選手がフォアボールを選び、2番・安部友裕選手がセンター前に弾き返して無死一、三塁。三番・丸選手もフォアボールを選んで無死満塁とすると、4番・鈴木選手のショートゴロの間に1点。続く松山竜平選手が歩いて再び、1死満塁。ここで西川龍馬選手のタイムリーツーベースが飛び出し3-0。7番・岩本貴裕選手を歩かせたところで藤浪投手はマウンドを降りました。一度火のついた打線はもう止まりません。2番手・岡本洋介投手が、8番・磯村選手にライト前へタイムリーを浴び5-0。ボクシングで言えば1ラウンドに2度ほどダウンを奪ったようなものです。結局、試合は広島が9-3で圧勝しました。

「点」ではなく「線」

 このように広島打線の特徴は、どこからでもチャンスがつくれることです。上位下位を問いません。その象徴が7月21日の巨人戦でした。5回裏、4-4から勝ち越しタイムリーを放ったのは8番・會澤翼選手でした。2死ニ、三塁で先発・菅野智之投手が投じたインコースのシュートを測ったようにレフト亀井善行選手の前に落としたのです。「たまたま落ちた場所がよかった」と口にした解説者もいましたが、あれはたまたまではなく會澤選手が長年かけて磨き上げてきた技術の結晶です。そう、「詰まった」のではなく「詰まらせた」のです。

 イチロー選手も「グシャっとした当たりが外野手の前に落ちる方がクリーンヒットを打たれるよりピッチャーはショックなんです」と語っていました。この日、菅野投手は11安打6失点と乱調で、5回でマウンドを降りました。「どのヒットが一番ショックだったか?」と聞けば、おそらく會澤選手の一打をあげたことでしょう。表情にはショックの色がありありと浮かんでいました。こんなバッターが下位にいるのだから、カープは強いはずです。

 さて今の広島打線を見ていて、不意に私は魔術師の異名をとった三原脩さんが名付けた「流線型打線」という言葉を思い出しました。自著「三原メモ」(新潮社)で、三原さんはその主旨についてこう述べています。

<バッティング・オーダーは、各打者が各個に、高打率をあげるように仕組まれたものをもって最上とはしない。むしろ、全体的な安打数は少なくても、得点能力の大であることが望ましいことなのである>

 三原さんの言葉を噛み砕いて言えば、<打線の定義というのは得点をいかに効率的に奪い、そしていかに拡大していくか。打線はその手段である>ということでしょう。自著には流線型打線のイメージ図も描かれていました。それは、さながら鯉のぼりの断面のように、1番から頂点の4番に向かって曲線を描いて盛り上がり、その後ろ、下位打線に向けては滑らかに収束するというものです。打線とは文字どおり個々が独立した「点」ではなく「線」としてつながっていなければならないのです。今の広島打線をして「新流線型打線」と呼んでみても、三原さんが異議を唱えることはないでしょう。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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