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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2017年2月7日(火)更新

19:00

千葉ロッテ・鈴木大地のコンバート
セカンドに必要な”当て捕り”の技術

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 就任5年目、千葉ロッテの伊東勤監督は今シーズンを勝負の年と位置づけています。今季は"翔破~限界を超えろ!~"をチームスローガンに2年連続3位からの浮上を狙います。

「優勝してここ石垣島でパレードをしたい」

 恒例の石垣島キャンプのスタートに際し、こう意気込みを口にしました。

正遊撃手を配置転換

 新シーズンを迎えるにあたり伊東監督が手をつけたのがセンターラインの強化と活性化です。セカンドに正遊撃手の鈴木大地選手をコンバートしました。ショートは2年目を迎えるドラフト1位・平沢大河選手をはじめ、大嶺翔太選手、三木亮選手ら若手が争います。伊東監督は鈴木選手の高い適応力と若手選手の台頭に期待しています。

 さて鈴木選手は12年、ドラフト3位でロッテに入団しました。2年目の13年から1軍に定着し、ベストナインにはショートで2度輝いています。プロでセカンドを守ったことはありますが本格転向は今回が初めてです。

 鈴木選手がセカンド転向を命じられたのは1月31日、キャンプ前日でした。

「(セカンドは)去年から練習しているから戸惑いはありません。伊東監督に言ってもらっていいスタートが切れます」

 そう語っていた鈴木選手ですが、やはりショートとセカンドでは勝手が違いました。キャンプ序盤から連日、居残りでセカンドの守備練習を続けています。

 ショートからセカンドへのコンバート、その難しさはどこにあるのか。以前、辻発彦さん(現埼玉西武監督)に聞いたことがあります。辻さんといえばアマチュア時代はサードを守り、プロ入り後に転向したセカンドで史上最多の8度のゴールデングラブ賞に輝いた名手です。中日コーチ時代には当時の監督・落合博満さんがアライバ(荒木雅博選手、井端雅弘選手)の二遊間コンバートを敢行しました。その際の指導役が辻さんでした。

「ショートとセカンドのどっちが難しいか?どっちも難しいです(笑)。ただショートからセカンドに移ると足の運びや体の使い方が逆になるからその点で難しさがある。あとセカンドはダブルプレーのときにグラブにパンと当ててすぐにボールを投げなきゃいけませんからね」

 辻さんが強調したのは、いわゆる"当て捕り"というテクニックでした。

「基本的にゲッツーのときにセカンドは早く送球するためにグラブでボールは握りません。逆シングルなど状況により異なりますが、基本はパンと当てるだけなんですよ」

遊撃&二塁のGグラブ賞は歴代3人

 東北楽天でセカンドを守る藤田一也選手も当て捕りの名手です。藤田選手はセカンドで3度のゴールデングラブ賞に輝き、14年にはセカンドとしてリーグ最多の73併殺を記録しています。

「僕は肩がそう強くないのでとにかく早く投げなきゃいけない。だからグラブを閉じないで当てるだけという感じです。あと6-4-3のゲッツーのときにセカンドはボールを早く離さないとランナーのスライディングでやられるので、とにかく捕ってから早く投げるというのを心がけています」

 一方、ショートが定位置だった鈴木選手は当て捕りよりも"しっかり捕る"感覚を好んでいるようです。

<鈴木大地はボールがグラブに収まる感覚を好んでいる。「その方が握り替えはうまくいく。プロの選手は皆、足が早いので、握り替えひとつが命取りになります」>(週刊ベースボール16年11月14号「道具の流儀」)

 ショートの選手がしっかり深くボールを握る理由について、辻さんはこう説明してくれました。

「ショートはジャッグルすると(一塁まで距離があるので)間に合わない。そういう時間的制約があるのでしっかり握る選手が多いんじゃないかな」

 だが鈴木選手もセカンドに転向したからには、そうも言っていられません。セカンドの名手たちにならい、当て捕りの技術を向上させなければなりません。郷に入りては郷に従えです。

 以前、辻さんから現役時代のグラブを見せてもらったことがあります。グラブメーカーの職人と様々なアイディアを出し合って完成した"辻モデル"です。捕球面は広く平らにも使えるようにと革紐の場所や通し方に工夫が施されていました。

「パパっとダブルプレーをとるときにはグラブを板のように使います。もちろんタッチプレーや逆シングルで捕るときは深く握るとか臨機応変さが求められますがね。いずれにしてもグラブは大切ですよ。日当たりのいいところに置いたりしないし、いつも(型が崩れないように)立てて置いてましたから」

 現役時代、辻さんにとってグラブは分身のようなものでした。ルーキー時代の清原和博選手には「キヨ、守備というものはグラブの指先まで神経を通わさなあかんぞ」と、守備の心得を説いていました。

「まるで新人時代のようにすべてを吸収しようと思いながらやっています」

 汗だくで居残り守備練習を続ける鈴木選手の左手には新品のグラブがはめられていました。

 これまでショートとセカンドでゴールデングラブ賞を受賞したのは立浪和義さん、金子誠さん、西岡剛選手の3人だけです。鈴木選手には是非4人目として名を連ねてもらいたいものです。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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