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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2016年11月1日(火)更新

黒田博樹の背番号が永久欠番に。
数年後には「15」で監督復帰か!?

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 今年の日本シリーズは4勝2敗で北海道日本ハムが広島を下して、10年ぶりの日本一に輝きました。32年ぶりの日本一を目指しながら敗れた広島ですが、11月5日に地元で祝賀パレードを開催します。今季限りでの引退を表明している黒田博樹投手も参加する予定です。

永久欠番第一号はゲーリッグ

 それに先駆けて、黒田投手の背番号「15」が永久欠番になることが明らかになりました。広島の永久欠番は"ミスター赤ヘル"と呼ばれた山本浩二さんの「8」、2215試合連続出場の日本記録を持つ"鉄人"衣笠祥雄さんの「3」に続いて3例目です。

 松田元オーナーは「15」を永久欠番にするにあたり、こう語りました。

「(黒田投手は)成績だけではなく、男気の部分で価値観を覆してくれた。一般社会にも影響を及ぼす価値観は後世にも残すべきだと思う」

 日米通算203勝という成績はもちろんですが、黒田投手は14年オフ、パドレスが提示した約20億円の高額オファーを固辞して古巣・広島に復帰しました。なにかと金銭面の条件ばかりが話題となるこのご時世、黒田投手が示した「男気」は胸にジンとくるものがありました。成績だけでなく有形無形の財産を球団と球界に残した黒田投手に送る最大の敬意----それが「15」の永久欠番指定ということなのでしょう。

 永久欠番制度は海の向こう、メジャーリーグで始まりました。第1号はヤンキース、ルー・ゲーリッグさんの「4」でした。

 ゲーリッグさんはプロ入り17年目の1939年、難病を患いシーズン途中で現役引退を余儀なくされました。その年までにホームラン王3回、首位打者1回、打点王5回、生涯打率3割4分をマークしています。なお25年から39年までの14年間で記録した「2130試合連続出場」は当時の世界記録でした。

 志半ばでチームを去ることになった偉大なプレーヤーを讃えるため、ヤンキースは「4」を「以後、誰にも与えないものとする」と永久欠番に指定したのです。

 日本プロ野球の永久欠番第一号は47年に誕生しました。巨人が黒沢俊夫さんの「4」と沢村栄治さんの「14」を永久欠番に指定しました。史上初のノーヒットノーラン達成など数々の偉業を残した大投手の沢村さんはうなずけますが、黒沢さんは巨人在籍たった3シーズンで、通算打率も2割5分9厘とパッとしません。

 それでも永久欠番になったのは、戦時中に選手が招集されて人員が足りなくなった巨人を4番打者として引っ張ったことに加えて、47年のシーズン途中に非業の死を遂げたことに報いるためのものでした。黒沢さんは「自分が死んだら巨人軍のユニホームのまま葬ってほしい」という言葉を残しています。

 黒沢さんと沢村さんを含め、球界ではのべ15人の背番号が永久欠番となっています(消滅球団含む)。以下に名前をあげましょう。

■広島
3 衣笠祥雄
8 山本浩二

■巨人
1 王 貞治
3 長嶋茂雄
4 黒沢俊夫
14 沢村栄治
16 川上哲治
34 金田正一

■阪神
10 藤村富美男
11 村山 実
23 吉田義男

■中日
10 服部受弘
15 西沢道夫

■西武
24 稲尾和久

■近鉄(04年に球団消滅)
1 鈴木啓示

「以後、何人(なんぴと)にもその番号を与えない」

 これが永久欠番の絶対条件ですが、その選手が指導者となった場合はまた別です。有名なのは00年の長嶋茂雄さんでしょう。

 前年まで長嶋さんは「33」を付けて巨人の指揮を執っていました。そこへ広島から江藤智さんをFAで獲得することになりました。江藤さんが広島時代に付けていたのも「33」。江藤さんに「33」を譲った長嶋さんは、翌年から「3」のユニホームを着ることになりました。現役引退後、26年ぶりのことです。当然のように「背番号3フィーバー」が巻き起こりました。

 00年2月1日、例年通りにキャンプインした巨人ですが、いつもの年とは注目度がまるで違っていました。キャンプ初日からグラウンドコートを着たままの長嶋さんを、「いつ脱ぐんだろう。いつ背番号3を披露するんだろう」と、メディアは躍起になって追いかけました。

現役さながらの背番号3

 ナマで背番号3の復活を見ようとファンも宮崎に多く詰めかけました。キャンプ地の駐車場には九州だけでなく、遠く関東や東北ナンバーのクルマも見かけました。

 取材にあたった私は、最初の頃、「背番号狂騒曲」とやや冷めた目で見ていました。こんな原稿を書いています。

<正直に言えば、一連の“背番号狂騒曲"にはウンザリしていた。背番号3に戻ったからといって、今さらミスターが現役復帰を果たすわけではない。ただ「33」が「3」に変わるだけのことではないか。それを何を今さら大騒ぎしているのか。少なくとも宮崎に行くまでは、そんな気持ちだった>(Number 2000年4月号・文藝春秋)

 だが宮崎で「背番号3」を26年ぶりに見て、そんな気持ちは吹っ飛びました。江藤さん相手にノックバットを振っていた「背番号3」は、現役時代同様に躍動感にあふれたものでした。

<バットを振るその瞬間だけは現役時代と比べて何ひとつかわってはいないことにハタと気がついたのである。ミスターは普通のノッカーがそうするように右手でボールをトスしない。左手でトスし、素早くその手でグリップエンドを握るのだが、この時のトップの位置が恐ろしいほどピタリと決まるのだ。さらに、スイングした瞬間、右肩から左腰にかけてユニホームに流線型のシワが寄る。このシワは動的な美しさを表しており、まさにバットを振り抜いた直後、私たちの目は背中の「3」を視認することになる。26年ぶりの「背番号3」を目の当たりにして、なぜ、少年時代、あれほどまでに長嶋茂雄が好きだったのか、やっと謎が解けた。つまり「背番号3」は躍動の象徴だったのだ>(同)

 そういえば黒田投手の先輩、山本浩二さんも、2度目の監督の時は、長嶋さんにならって永久欠番になっていた「8」を身にまといました。黒田投手も近い将来、指導者として復帰することが予想されています。ファンは「15」での再会を願っているはずです。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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