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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2016年10月28日(金)更新

沢村賞に新基準?
広島・ジョンソン受賞で「QS率」導入の動き

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 日本一を目指して広島と北海道日本ハムが覇を競っている合間の10月24日、クリス・ジョンソン投手(広島)の沢村賞受賞が発表されました。

 沢村賞は連盟表彰ではなく読売新聞社制定の特別賞ですが、投手にとって最高の栄誉と言われています。ジョンソン投手も「言葉に表せない感激だ」と受賞の喜びを語りました。外国人投手の受賞は1964年のジーン・バッキーさん以来、2人目です。

年度代表投手を選ぶ

 沢村賞は47年に元巨人の沢村栄治さんの功績を讃えて制定されました。沢村さんについては改めて説明の必要もないでしょう。プロ野球草創期の巨人、そして日本球界を代表する大投手です。

 34年の日米野球、草薙球場で行われた試合ではベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグを擁する大リーグ選抜を手玉にとり、8回5安打1失点に抑えました。36年にはプロ野球史上初のノーヒットノーランも達成しています。

 34年に大日本東京野球倶楽部(のちの巨人)に加入してから、43年まで活躍しました。その間に63勝22敗、554奪三振、勝率7割4分1厘という成績を残し、最多勝2回、最優秀防御率1回、最多奪三振2回(当時は表彰なし)、最優秀選手賞1回に輝いています。

 足を大きく上げるダイナミックなフォームから剛速球を投じ、バッタバッタと打者を打ち取る沢村さんは、まさにピッチャーの鑑でした。

 さて沢村賞です。球界を代表するレジェンドの名を冠した賞だけに、選考には高いハードルが設けられています。

 対象は両リーグの先発投手(50年~88年はセ・リーグのみ)で、登板数、完投数、勝利数、勝率、投球回数、奪三振数、防御率といった数字はもちろん、チームへの貢献度やときには人格も選出の判断材料にされます。82年には選考基準が明文化されました。それは下記の通りです。

 登板試合数・25試合以上、完投・10試合以上、勝利・15勝以上、勝率6割以上、投球回数200回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下。

 選考にあたって最終的な判断は選考委員(沢村賞受賞者を含むOB投手5名)に委ねられます。すべての数字をクリアする必要はありませんが、「物足りない数字」と選考委員が判断すれば、「該当者なし」となります。過去にも4度、そういうシーズンがありました。

 今回のジョンソン投手の選出にあたっては、選考委員会で意見が分かれたと言います。委員のひとり堀内恒夫さんはこう語っています。

「5人の委員で議論になって、我々が想像しているものよりも成績的に低いかなということで意見が分かれました。該当者なし、という意見もありました」

時代に合わせて進化

 ジョンソン投手の今季の成績は、26試合に登板して、投球回数180回1/3、完投は3。15勝をあげて勝率6割8分2厘、141奪三振、防御率2.15というものでした。完投数、投球回数、奪三振が基準を下回りました。ちなみに2000年代に入ってからの受賞者で基準値すべてをクリアしたのは、ダルビッシュ有投手(07年)、涌井秀章投手(09年)、田中将大投手(11年)の3人だけです。

 堀内さんはこうも言いました。

「来季からは規定なり基準を見直す必要があります。特に必要なのは完投数と投球回数の見直しではないでしょうか」

 振り返れば50年代は50試合以上に登板して20以上の完投をマーク。投球回数は300イニングを越える----。そんな剛腕がざらにいました。それに比べると2000年代の受賞者は完投数と投球回数が随分、減っています。

                  完投数      登板回数
2000    該当者なし              
2001    松坂大輔        12      240回1/3
2002    上原浩治        8       204回
2003    井川 慶        8       206回
      斉藤和巳        5       194回
2004    川上憲伸        5       192回1/3
2005    杉内俊哉        8       196回2/3
2006    斉藤和巳        8       201回
2007    ダルビッシュ有     12      207回2/3
2008    岩隈久志        5       201回2/3
2009    涌井秀章        11      211回2/3
2010    前田健太        6       215回2/3
2011    田中将大        14      226回1/3
2012    攝津 正        3       193回1/3
2013    田中将大        8       212回
2014    金子千尋        4       191回
2015    前田健太        5       206回1/3
2016    ジョンソン       3       180回1/3

 近代野球に合わせた基準の見直しとともに、新しく導入が検討されているのがQS率です。QS、いわゆるクオリティスタートは先発投手が6回以上を投げて自責点3以下のときに与えられます。先発した試合でいかにゲームを作ったか、先発投手の安定感を示す指標です。メジャーリーグで先発投手の評価基準として定着しています。

 今季のジョンソン投手のQS率は92.30%でした。2位以下の菅野智之投手84.62%、ランディ・メッセンジャー投手78.57%、則本昂大投手78.57%を大きく引き離しています。

 参考までに過去10年の沢村賞受賞者のQS率も調べてみました。

2006    斉藤和巳        88.50%
2007    ダルビッシュ有     76.90%
2008    岩隈久志        82.10%
2009    涌井秀章        81.50%
2010    前田健太        78.60%
2011    田中将大        92.60%
2012    攝津 正        88.90%
2013    田中将大        100.00%
2014    金子千尋        84.60%
2015    前田健太        89.70%
2016    ジョンソン       92.30%

 ここでも光るのは13年の田中投手です。

「プロ野球は沢村賞を受賞した大投手が夢と希望を与えてきました」

 選考委員の村田兆治さんの言葉です。「人生先発完投」を座右の銘としていた村田さんは、今回の選考委員会で「該当者なし」と主張していました。気持ちは分かりますが、先に紹介した7項目にこだわっていたのでは、いずれ沢村賞投手はいなくなってしまいます。堀内さんが言うように「基準を見直す」時期にきているのかもしれません。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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