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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2016年7月15日(金)更新

三原マジックに傾倒する
日ハム・栗山監督が狙う大逆転

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 プロ野球は7月18日から後半戦が始まります。パ・リーグは、首位・福岡ソフトバンクに2位・北海道日本ハムが6ゲーム差に迫っています。

 振り返ればシーズン序盤はソフトバンクが独走しました。その状況に待ったをかけたのが、球団新記録となる15連勝をマークした日本ハムでした。

首位の背中が見えた

 日本ハムの快進撃は6月19日に始まりました。この時点で日本ハムはリーグ3位、首位との差は11.5ゲームでした。

 この日、敵地で中日とのゲームに3対2で勝利した日本ハムは、その後も横浜DeNA、オリックス、埼玉西武を相手に勝ち続けました。7月になっても勢いは衰えず、福岡ヤフオクドームに乗り込んでの7月1日からの対ソフトバンク3連戦、日本ハムは5対2、4対0、2対0と完勝しました。これで日本ハムは2位に浮上し、ソフトバンクの背中が視界に入るようになりました。

 東北楽天相手の1勝を挟み、今度は札幌ドームにロッテを迎えました。このカード2連勝で迎えた7月10日の3戦目は、球団タイ記録の14連勝がかかった大一番でした。

 ところが先発・大谷翔平投手がピリッとしません。初回に先制点を許し、7回にはマメが潰れて緊急降板しました。4対5のまま9回裏ツーアウトランナーなし、日本ハムは土俵際に追い込まれました。ここでベテラン田中賢介選手の同点ホームランが飛び出したのです。

 死地から生還した日本ハムは延長12回、先頭打者ブランドン・レアード選手がレフトへサヨナラホームランを叩き込みました。これにより劇的なサヨナラ勝ちで球団タイ記録の14連勝を達成したのです。その後、日本ハムは連勝を15にまで伸ばし、今では首位をうかがう勢いです。

 チームを率いる栗山英樹監督は今季が5年目ということもあり、心中、期するものがあるのでしょう。采配に大胆さと覚悟が見受けられます。

 周知のように栗山監督が"心の師"と仰ぐのが"三原マジック"で知られる三原脩さんです。西鉄と大洋で計4度の日本一に輝いています。

 栗山監督の三原さんへの傾倒ぶりは、こんなコメントからもうかがえます。

「大局観というんでしょうか、三原さんにはそれがあった。目先の試合に勝つことも大事だけど、それ以上にプロ野球にとって大切なのものは何か。それはお客さんを喜ばせることだろうと。三原さんにはプロ野球全体のことが見えていたんじゃないでしょうか」

 西鉄の監督時代、三原さんは強打者の豊田泰光さんを2番打者に起用しました。2番といえば"つなぎ技"が定石の時代ですから、これは議論を呼びました。

世紀の大逆転

 なぜ豊田さんが2番だったのか。三原さんのマネージャーを務めていた藤本哲男さんから直接、聞いたことがあります。

「大リーグに匹敵するチームを作る。西鉄にきた当初、三原さんがこうおっしゃってたんです。仮に大リーグを相手にした場合、2番がバントでランナーを進めて先制してもすぐにひっくり返されてしまう。ある程度、まとめて点を取らないと勝てない。そういう考えに基づいての"2番・豊田"だったんじゃないかと思うんです」

 そういえば栗山監督も、就任1年目の2012年、開幕カードで稲葉篤紀さんを2番に起用しました。クリーンアップも務まる稲葉さんを2番に起用した采配は、三原さんを意識したものだったように感じました。

 今季の栗山采配で驚いたもののひとつに、二刀流・大谷選手の「1番ピッチャー」があります。7月3日、福岡ドームでのソフトバンク戦で実現しました。

「いい打者に打順がたくさん回るようにした」

 こう語った指揮官の期待に応えるように、大谷選手は初回、初球を右中間スタンドへ叩き込みました。

「ファンはプロ野球のロマンを感じてくれたでしょう」

 声を弾ませながら、栗山監督はこう話しました。「お客さんを喜ばせる」という三原イズムを具現化したのです。

 実は三原さんもヤクルト監督時代の1971年に「1番ピッチャー」を実行しています。その選手の名前は外山義明さん。大谷選手ほどのスケールはありませんでしたが、"巧打のサウスポー"として鳴らしました。

 さて長いプロ野球の歴史の中で、最大ゲーム差を逆転して優勝したのは、63年、14.5ゲーム差をひっくり返した西鉄です。三原イズムを引き継いだ中西太さんが監督(選手兼任)を務めていました。

 この年、西鉄は主力の不振で出遅れました。しかし、このチームには地力がありました。オールスター明けから6連勝、7連勝、9連勝と"まとめ勝ち"して首位・南海を猛追しました。最後は全日程を終えて1ゲーム差で首位にいた南海を、残り4試合に全勝した西鉄が逆転しました。これぞ"元祖メークドラマ"でした。

「勝負どころではまた使うことになるかもしれない」

 7月3日を最後に、大谷投手の"リアル二刀流"を封印している栗山監督のセリフです。現代の魔術師の目には、シーズン終盤に起こる波乱が映っているようです。

K.Ninomiya二宮清純

二宮清純コラム プロ野球ガゼット

二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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