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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2016年12月6日(火)更新

契約更改悲喜こもごも。
理よりも情の日本式。直接対話の利点も

Photo

 各球団の主力選手が契約更改交渉に臨んでいます。新年を気分良く迎えるためにもスカッと更改したいものです。

「考えられない額を上げていただき、気持ちよくサインしました」

 こう語ったのは横浜DeNAの筒香嘉智選手です。推定年俸は1億円から2億円増の3億円になりました。今季、ホームラン44本、110打点で二冠王に輝き、チーム初のクライマックスシリーズ進出に貢献しました。3倍増も納得です。

大台ならずも納得

「来季はチームを優勝させる4番、そしてキャプテンでありたい」

 筒香選手は球団が示した最大級の評価にプレーで報いる覚悟でいます。

「大台にいきたかったけど、去年より打率やホームランの数字がよくない。だから納得してサインしました」

 こちらは北海道日本ハムの主軸、中田翔選手です。中田選手の推定年俸は2億8000万円。今季の2億4500万円から3500万円のアップです。希望していた大台の3億円とは2000万円の開きがありましたが、会見では笑顔を見せていました。

 一昔前の契約更改では選手と球団がもめることが多々ありました。納得できない金額提示に選手側は徹底抗戦で挑む。「銭闘」という文字がスポーツ新聞の一面に躍ったものです。近年、そういったシーンにお目にかかることは少なくなりました。選手がおとなしくなったというよりも、球団と選手側の事前交渉が慣例になったからだと言われています。

 事前交渉のなかった時代、ある球団の主力選手は提示された金額に驚きました。あまりの低評価に「戦力として必要とされてないんじゃないのか?」と、交渉もそこそこに席を立ちました。その後、記者会見場に入ってくるなり持っていたバッグを叩きつけ不平不満をぶちまけました。その後、この選手はトレードされてしまいました。まさしくガチンコの時代です。

「私らの時代は納得できない金額だったら机をバーンと蹴って大声をあげたもんですよ」

 以前、星野仙一さんが契約更改の裏話を教えてくれました。現在、東北楽天の副会長を務める星野さんはタフネゴシエーターとして知られています。FA選手を口説き落としたり、球団オーナーを説得して補強費を引き出すなど、交渉術に長けた人物です。楽天監督時代には3人の子供を持つ枡田慎太郎選手に「ミルク代を稼ぐのは大変だろう」と助け船を出し、契約更改を有利に導いたこともあります。

 この星野魂を受け継いだのが、中日、オリックス、楽天で活躍した強打者の山崎武司さんです。

「机をバーンで1000万円上がりました」

 過日、山崎さんはテレビ番組で契約更改のエピソードを披露していました。

代理人制度導入

 さて、プロ野球の契約更改では2000年オフから代理人による交渉が認められました。それ以前から「代理人制度」の導入を訴えていたのが野茂英雄さんです。95年、海を渡った野茂さんはオールスター出場、ナ・リーグ新人王など日本人メジャーリーガーのパイオニアとして知られています。その年に出版した自著「僕のトルネード戦記(集英社刊)」でこう述べています。

<球団側が契約のプロを何人も用意して交渉の場につくことができるに対し、選手はたったひとりです。(中略)僕たち野球選手だって、球団と対等な立場に立ってモノを言える権利があるはずです。そこで契約交渉を専門とする代理人を立て、球団と話し合ってもらう。この制度のいったいどこが悪いのでしょう。(中略)現状では、交渉が決裂しても選手が前面に立ってしまっている。これはプロ野球全体にとって、決していいことではないと思います>

 さらに野茂さんは「交渉の席で選手と球団がもめると、どこかに必ずシコリが残ってしまう」とも述べていました。交渉を代理人が行えば両者の間にシコリは残らず、選手も球団もイメージが悪くならないというわけです。

 一方、選手が直接フロントと話すことで組織の風通しがよくなることもあります。このオフ、FA宣言をせずに残留を決めた中日の平田良介選手は、交渉の席でこんな話をしたといいます。

「一部スタッフの怠慢な仕事ぶりを指摘したんです。それを球団代表に直接訴えたら、"そんな報告は伝わってきていない"と。でもそうやって直接話せる機会があり、改善も確約されたので残留を決めました」

 日本では契約更改の席は金銭交渉だけでなく、お互いが腹を割って話せる貴重な場所ともなっています。

K.Ninomiya二宮清純

二宮清純コラム プロ野球ガゼット

二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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