二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2017年5月2日(火)更新

11:00

21年前、オリ日本一を支えた名手が語る
守備の極意は「球際よりも第一歩」

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 開幕から1カ月が経ちました。4月を振り返るとパ・リーグは首位を走る東北楽天とともにオリックスの躍進が目を引きます。昨季の最下位から一転、15勝8敗、勝率6割5分2厘で目下、堂々の2位です。楽天を2ゲーム差でぴたりとマークしています。

田口、イチローの師匠

 今のオリックスには少々のアクシデントを跳ね返す強さがあります。4月25日、開幕から4番に座っていたステフェン・ロメロ選手が大腿骨骨挫傷で登録を抹消されました。ロメロ選手は15試合に出場し、打率2割8分1厘、5本塁打、12打点と打ちまくっていました。そんな主砲の離脱にもチームは動じませんでした。

 選手会長のT-岡田選手は「ロメロの穴は大きいと思うけど、今まで通り、みんなでつないでいく。全員で勝ちにこだわってやっていこう」と明言。その言葉通り、25日から行われた埼玉西武との3連戦、すべて1点差の接戦を制しました。

 オリックスは89年、阪急から球団を買収する形で誕生しました。その名が全国に轟いたのは90年代中盤です。希代の勝負師・仰木彬さんが監督を務め、イチロー選手(現マーリンズ)がチームを牽引しました。95年、阪神淡路大震災に見舞われた地元・神戸を励ます「がんばろう神戸」のスローガンの下、オリックスは見事にリーグ優勝を遂げました。96年も連覇を果たし、この年は巨人との日本シリーズを4勝1敗で制し日本一に輝いています。

 当時、オリックスの外野陣は「最強」と呼ばれていました。ライトがイチロー選手、レフトが現オリックス2軍監督の田口壮さん、どちらも俊足強肩で鳴らしていました。そしてセンター、文字通り外野の中心として若い2人を束ねたのが本西厚博さん(現BCリーグ・信濃グランセローズ監督)でした。

 以前、田口さんに、オリックス外野陣の"超攻撃的シフト"について聞いたことがあります。キーマンは本西さんでした。

「ランナーが二塁にいるとき、内野は二遊間を抜かれないようにだけ気をつけておけば良かったんです。そして僕とイチローは前進して、センターの本西さんが深めに守って左中間と右中間をケアする。本西さんという名手がいたから、そもそも左中間、右中間を破られるという感覚がなかったんです。レフト前、ライト前のヒットなら僕とイチローが(強肩をいかして)ホームで勝負できましたから」

 本西さんはドラフト4位で三菱重工長崎から阪急(当時)に入団し、1年目の87年から1軍に定着しました。89年にはゴールデングラブ賞に輝いています。以後、チーム名がオリックス・ブレーブス、ブルーウェーブと変わる中、本西さんは名手としてチームを支え続けました。

日本シリーズの猛抗議

 本西さんといえば忘れられないシーンがあります。96年の日本シリーズ第5戦、オリックスが5-1とリードして迎えた4回表、巨人の攻撃でした。井上真二選手の放った浅いセンターフライを本西さんは前進してランニングキャッチ……したはずが、二塁塁審はワンバウンドと見て「フェア」の判定を下しました。これに怒った仰木監督が猛抗議をして試合は10分間中断しました。

 当時のことを改めて本西さんにうかがいました。

 ----仰木監督が出て来る前に本西さんはグラブを放り投げて抗議していましたね。
「今になって"捕った捕ってない"を言っても仕方がありませんが、横で見ていたイチロー、田口も一緒になって怒っていました。仰木監督は、"あのおとなしい本西がここまで怒るんだから行ってやらなきゃ"と抗議に出たんじゃないですかね(笑)。抗議の中で仰木さんは"判定を変えろとは言わない。ただ間違えていましたと非を認めろ"と主張してましたね。それである程度、時間経ったらスパッと切り上げた。後で言ってましたが、"お客さんも一杯入っていたし、ウチがリードしていたから流れに水を差したくなかった"と」
 ----選手のプライド、審判のメンツ、そしてファンのことも考えていた。勝負師・仰木さんらしい絶妙の駆け引きですね。田口選手、イチロー選手、どちらも本西さんに外野守備を教わったと言っています。
「田口は内野から転向して悩んでいたんでしょう、何でも聞いてきましたね。イチローもそうですよ。分からないことや疑問に思ったことは何でも聞きにきました。教えたというよりも彼らと一緒に僕も成長したんです」
 ----外野守備の一番のポイントは?
「みなさん、守備で大切なのは球際だとおっしゃいますが、違うんですよ。大事なのはスタート、第一歩なんです。打球にどれだけ早く反応して正しく動けるか。そうすればスライディングやダイビングをする必要がない。これはノックではなかなか鍛えられないんです。だから誰かがフリーバッティングをしているときに外野に行ったもんです。それで打球に合わせてスタートを切っていました。ノックと違ってスライスもあればラインドライブもある。いい勉強になりましたよ」

 本西さんたちの活躍でオリックスが日本一になってからもう20年以上が経ちました。まだ気の早い話ですが21年ぶりのリーグ優勝に向け、ファンの期待は徐々に高まっています。

 *文中データは4月30日時点。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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