二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2017年4月4日(火)更新

15:00

両軍28四死球で5時間24分。
「平均試合時間3時間以内」の目標はどこへ

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 昨季、25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島はチャンピオンフラッグの下、本拠地マツダスタジアムで阪神を相手に開幕を迎えました。初勝利となった1日のゲームで、私は珍しいものを目にしました。

プロ野球タイのワースト記録

 広島13個、阪神13個(9回まで)。計26個の1試合与四球の日本記録です。2リーグ分立後としては23個(1994年7月1日・西武対近鉄)を上回る新記録、プロ野球史を振り返っても37年9月12日の金鯱対ライオンで記録されて以来のワーストタイ記録です。死球と延長10回も含めれば四死球は28にまで積み上がりました。

 試合を振り返りましょう。この日の先発は広島が2年目の本格派・岡田明丈投手、阪神が4年目のサウスポー・岩貞祐太投手でした。両投手ともに立ち上がりから四球を連発しました。

 初回、岡田投手は阪神の先頭バッター高山俊選手を四球で歩かせます。続く上本博紀選手のヒット、糸井嘉男選手の犠牲フライでいきなり先制点を奪われました。その後も岡田投手は制球に苦しみ、4回7四球6失点で降板しました。

 対する阪神の岩貞投手もコントロールが定まりません。1回裏、1番の田中広輔選手にヒットを打たれ、続く菊池涼介選手に7球粘られた末に四球を与えました。ノーアウト一、二塁で3番・丸佳浩に3ランを打たれて3-4。その後も立ち直ることができず、岩貞投手は5回5四球5失点でマウンドを降りました。

 四球の山を築いたのは先発投手だけではありません。広島は2番手の中田廉投手が2個、4番手の今村猛投手と5番手のジェイ・ジャクソン投手が各1個、抑えの中﨑翔太投手も3個。阪神は松田遼馬投手が1個、藤川球児投手が3個、マルコス・マテオ投手にいたっては4つも記録しました。

 9-8でかろうじて乱戦を制した広島・緒方孝市監督は試合後、こう語りました。

「フォアボールをこれだけ出したことは、勝った試合の中でもしっかりと反省しなくてはならない」

 敗れた阪神の金本知憲監督は緒方監督以上に渋い表情でした。

「四球は13個ですか……。いくら延長10回とはいっても多すぎるね」

 さらにいえばこの試合、阪神は4つのエラー、広島も1つのエラーを記録しています。四球、四球の連発では守っている方もなかなかリズムに乗ることができません。四球の連発が試合を壊したことは間違いありませんが、ピッチャーの不甲斐なさだけが、乱戦の理由ではありません。

投手だけを責められない

 というのもこの試合、ストライクゾーンぎりぎりのコースがことごとくボールと判定されました。マツダスタジアムのスタンドからは何度も「今のはストライクじゃろう……」と不満の声が漏れていました。阪神の梅野隆太郎捕手は試合後、次のコメントを残しました。

「最初にストライクをとってくれないところは、ずっととってくれない。その日のゾーンの中でファウルを打たせたり球威で押したり空振りをとるとか、そういうリードができたら良かったんですが……」

 捕手として投手を助けられなかった無念の思いが滲んでいます。この日、放った3安打は梅野捕手のせめてもの意地でしょう。

 翌日、この試合をラジオ解説した安仁屋宗八さんと球場で話をしました。広島で13年、阪神で5年プレーした名投手です。開口一番、安仁屋さんは切り出しました。

「昨日のフォアボールは投手を責められん。あの判定だったら誰が投げてもああなるよ。広島だけでなく相手の阪神もフォアボールを連発して結局、日本タイ記録っていうんだからね。あれじゃ投手がかわいそうだ」

 安仁屋さんの話は続きます。

「緒方がわしにこう言ってきたよ。"安仁屋さん、投手ミーティングに出てくれ。なんぼフォアボール出しとるんじゃ、と喝入れてくれ"と。だから"そりゃ違うじゃろ、ストライクも結構入っとったよ。ピッチャーを責めるのはやめなさい"と諭したんよ。岡田とか昨日投げたピッチャーは、これからも自信を持って投げたらいいよ。もし現役時代のわしが投げていたら?昨日の審判だったら決め球のシュートは全部ボールにされていたじゃろうね、アッハッハッ」

 最後に球審の名誉のために言っておくと、9回までの四球数はともに13。どちらかに偏った判定ではなかったということです。ただそれにしても5時間24分という試合時間は延長に入ったとしても長過ぎます。日本野球機構(NPB)は「平均試合時間3時間以内」を目標に掲げています。NPBの幹部はこのゲームをビデオで検証し、改善すべきポイントはないか考えるべきです。でなければ目標達成は絵に描いたモチに終わってしまうことでしょう。

K.Ninomiya二宮清純

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二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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