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二宮清純コラム プロ野球ガゼット

2016年7月1日(金)更新

「4番」中田翔に代打の衝撃。
背に腹はかえられぬ事情とは……

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 パ・リーグ3位の北海道日本ハムが交流戦終盤から好調です。6月19日の中日戦から29日の埼玉西武戦まで7連勝を記録して、首位・福岡ソフトバンクとのゲーム差を9にまで縮めました。

乗り遅れた主砲

 その好調な日本ハムにあって、ひとり上げ潮に取り残されているのがチームの主砲、中田翔選手です。

 6月27日の対西武戦までの10試合、中田選手は38打数4安打と極度の打撃不振に陥りました。この試合も第1打席センターフライ、第2打席ショートゴロ、第3打席は見逃し三振といいところがありませんでした。これで10打席ノーヒットです。

 迎えた7回裏、3-7と大きくリードされていた日本ハムが反撃に出ました。大嶋匠選手の犠牲フライで1点を返し、さらに相手のエラーで1点を追加して、5-7と2点差に迫りました。なおも3番の陽岱鋼選手がフォアボールで歩いて、2死一、二塁の場面。ここで4番の中田選手に代打が告げられました。

「代打・矢野」のアナウンスが流れると、札幌ドームにはどよめきが起こりました。

「(中田は)腰の張りがあったから、それだけのことです。いろいろなパターンを考えています」

 代打の理由を聞かれた栗山英樹監督は言葉少なに、こう語りました。そして翌28日の試合ではついにスタメンからも外しました。これにより中田選手の連続試合出場記録は361で止まりました。

 不調の4番をどうするか----。

 西武黄金時代を築いた元監督の森祇晶さんの次の言葉を思い出しました。

「打てないなら"4番でも外せ!"なんて周囲は簡単にものを言います。当事者じゃないとわからないでしょうけどそれは大変なことなんですよ。まずは本人のプライドを傷つける。タイミングがズレればチーム全体に悪影響が出る。若い選手は苦しい時期を乗り越えて初めて力がつく。だからこっちは我慢するしかないんです」

 この4番とは清原和博元選手のことです。

 86年、西武に入団した清原元選手はルーキーながら日本シリーズでチームの4番に座りました。以後、ケガなどを除きほぼ西武の4番を張ってきました。しかし91年の夏場、大スランプに陥りました。

4番のプライドに配慮

 6月末から23打席ノーヒット。それでも森さんは我慢して使い続けました。

「"これ以上、追い込むと精神的にも技術的にもダメになってしまう"というギリギリのタイミングを見計らって外しました」

 91年7月6日と7日。2試合続けて森さんは清原元選手をスタメンから外しました。

 ----打順を下げるという選択肢はなかったんでしょうか?

 私は聞きました。

「それはありません。まがりなりにも5年間、ウチの4番を打ってきた選手。そのプライドを軽々しく傷つけるわけにはいかない。5番や6番はあり得ない。外すときは休ませるとき、と思っていましたから」

 そして7月9日、3試合ぶりに森さんは彼の名前をスタメン表に書き入れました。森さんの期待に応えた清原元選手は4打数2安打(1本塁打含む)と復活の狼煙を上げました。

 なおスタメン復帰後のオーダーはしばらくの間、「3番・清原、4番・秋山(幸二)」でした。清原元選手を「4番の重圧から解放したい」との森さんの配慮が感じられました。

 3番最強説もあるメジャーリーグと違って、日本では今でも「最強打者は4番」という概念があります。

 巨人時代の松井秀喜選手も4番に定着するまでは相当な年月がかかりました。3番を打つ彼に「メジャーなら最強打者だよ」と水を向けても、「いや、ここは日本ですからと」とぶっきらぼうに答えただけで、すぐ憮然とした表情になったことを覚えています。

「腰の張り」という理由があったにせよ、代打を送られてショックを受けない4番はいません。そもそも「オレがチームを背負っているんだ」という自負心がなければ4番は務まりません。このように4番とはプライドの固まりのようなものです。

 栗山監督もそのことは分かりすぎるほど分かっています。だから常に「オレが監督をやる限り4番は翔」と語っていたのです。にもかかわらず、なぜ代えたのか----。

 背に腹はかえられぬチーム事情があったのは想像に難くありません。代打を巡っては、事前に相当、突っ込んだやりとりが2人の間にはあったはずです。

*文中データは6月29日現在。

K.Ninomiya二宮清純

二宮清純コラム プロ野球ガゼット

二宮清純

国内外で幅広い取材活動を展開し、独自の視点からスポーツジャーナリストとして切れ味のよいコメントを繰り出す。毎週火・金更新。

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