プレーオフトーナメント進出を巡る争いが激化してきました。リーグワン・ディビジョン1は第12節終了時点で、4位の横浜キヤノンイーグルスが勝ち点36、5位の東芝ブレイブルーパス東京が34、6位のトヨタヴェルブリッツが32と、勝ち点差4以内で3チームがひしめき合っている状況です。この中で最も勢いがあるのが、3月から4勝1敗のBL東京です。
BL東京は日本選手権6度、TL最多タイ5度の優勝を誇る名門です。しかし近年は低迷し、昨季はトップリーグ(TL)9位。最後に獲ったタイトルは2009年度のTLまで遡らなければなりません。TL初年度から続いていたベスト4以上という成績も15年度を最後に途絶えました。
BL東京は前身の東芝府中からFWを軸にしたパワフルなラグビーが持ち味です。代名詞のドライビングモールは対戦相手にとって脅威そのものでした。19年度にトッド・ブラックアダーさんをヘッドコーチ(HC)に迎え、それ以降は「選手自身がプレーをしていて楽しく感じるようなアタッキングラグビーをやりたいと思っています」とボールを動かすアタッキングラグビーへと転換を図っています。
その成果は着実に表れていると言っていいでしょう。スポーツ放送局『JSPORTS』のラグビーサイトに掲載されているリーグワン・チームスタッツランキング(第12節終了時点)を見てみましょう。BL東京は6項目中3項目でトップに立っています。オフロードパス(150)、ボールキャリー(1223)、ゲインメータ(8464メートル)。ゲインメータはボールを持って進んだ距離、ボールキャリー数はボールを持って走った回数、オフロードパスはタックルを受けた時にラックなどをつくらずにパスをつないだ数です。これらの数字から、いかにアタックが連続して行われていたかがわかります。
FW・BKが一体となったBL東京のアタッキングラグビーは、4月10日に行われたトヨタV戦でも存分に発揮されました。試合前の時点でトヨタVが5位に対し、BL東京は6位。リーグワンのリーグ戦順位は、勝ち点、勝利数が並んだ場合、直接対決の結果で順位が決まります。トヨタVには第4節で対戦し、23対33で敗れているため、プレーオフ進出のためには“絶対に負けられない戦い”でした。
BL東京は8対10とビハインドの前半24分、スクラムハーフの小川高廣選手が足元に転がってきたボールをダイレクトで横に蹴り出し、フランカーのマット・トッド選手にパス。トッド選手は前進し、タックルを受けながらセンターのセタ・タマニバル選手につなぎます。フリーとなったタマニバル選手がインゴール右に、悠々とボールを置きました。スタンドオフのトム・テイラー選手がコンバージョンキックを決め、15対10と逆転します。
29分にトライを許して、逆転されましたが、BL東京のアタックは止まりません。ロスタイムにFWが体を当てて、防御網を崩すと、最後はタマニバル選手がインゴール中央に飛び込みました。テイラー選手がコンバージョンキックに成功し、22対17でハーフタイムを迎えました。
後半はトヨタVの反撃に遭って32対31と1点差まで迫られました。それでも28分、39分にトライを追加し、勝利を決定付けます。
時計は後半40分経過を報せるホーンが鳴り、ラストワンプレー。BL東京がボールを外に蹴り出せば、このまま試合を終わらせることができます。しかしBL東京は3トライ差の勝利で付くボーナスポイント獲得を目指し、アタックの継続を選択しました。
ピッチを広く使い、敵陣に攻め込みます。ウイングのニコラス・マクカラン選手が右サイドを突破し、インゴール目前に迫りました。最後はラックからのボールを拾ったタマニバル選手が人垣を飛び越え、インゴール右隅にグラウンディング。この試合7個目のトライでボーナスポイントを獲得しました。その結果、5ポイントを上積みしたBL東京の勝ち点は34となり、同32のトヨタVを抜き5位に浮上。それに伴い、4位横浜Eとの差は2に縮まりました。
試合後、共同主将のナンバーエイト徳永祥尭選手が「トヨタ相手にボーナスポイントを得て勝つことができたのは、毎週積み上げてきたことを最後まで切らさず出せたことの証明」と胸を張れば、フランカーのリーチ・マイケル選手は「練習でやっていることが形に表れてきて、タイトな試合を勝ち切ったことで自信がついた」と手応えを口にしました。
今季でブラックアダーHC、小川選手&徳永選手の共同主将体制が3季目となり、HCが標榜するアタッキングラグビーがようやく浸透してきたということでしょう。チームにはニュージーランド出身、または同代表経験者が10人も在籍しています。トヨタ戦で活躍したトッド選手、キックのみで18得点をあげたテイラー選手、ハットトリック達成のタマニバル選手は元オールブラックス。リーチ選手、ロックのディアンズ・ワーナー選手はジャパンのキャップを持っていますが、ニュージーランド生まれです。
以前、チームOBで現在はアンバサダーを務める大野均さんから、こんな話を聞いたことがあります。
「オールブラックスの選手を見ていると、ボールの扱いがものすごくうまい。しかも倒されながらでも、しっかり周囲を見ている。オールブラックスと対戦した時、タックルは決まるのにボールを何度もつなげられた」
チームスタイルを変えるのには時間がかかります。一朝一夕にはいきませんが、目指す方向に一歩一歩近付いているBL東京の戦いぶりに注目が集まります。
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