10月1日、ジャパンのメンバーで構成された「JAPAN XV」とオーストラリアA代表(オーストラリア代表に次ぐシニア代表)との強化試合第1戦、注目の中尾隼太(東芝ブレイブルーパス東京=BL東京)選手はスタンドオフで先発出場を果たしました。ラグビーは大学スポーツの華ですが、地方の国立大学(鹿児島大学)出身者が、このような大舞台でプレーするのは珍しいことです。
国立大学の雄といえば、関東大学対抗戦グループAに属している筑波大学です。大学選手権で2回(2012、14年度)準優勝しています。薫田真広さん(現・BL東京ゼネラルマネジャー)、梶原宏之さん(現・日川高校ラグビー部監督)、福岡堅樹さん(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ=埼玉WKアンバサダー)らジャパンでも活躍した数多くの名選手を輩出しています。
しかし、それ以外の国立大学から15人制で代表入りした選手は記憶にありません。昔はいざ知らず、近年でそうした例は寡聞にして知りません。テストマッチではないため、キャップこそ付きませんが、中尾選手には「国を代表して戦っている」との思いがあったはずです。
中尾選手が籍を置いていた鹿児島大は九州学生リーグに所属しています。このリーグの1部(Aリーグ)は現在、鹿児島大、福岡工業大学など6大学で編成されています。
長崎県出身の中尾選手は地元の長崎北陽台高から鹿児島大に進みました。高校時代は花園に2回出場し、1年時に2回戦、2年時には3回戦進出を果たしています。教育学部に進んだのは教員免許を取るためです。実際、小・中・高の教員免許を取得し、卒業後は教壇に立つ予定でした。ところが、大学4年時にセブンズ日本代表に選出されるなど評価を高めたことで、トップリーグからも注目を集めるようになりました。いくつかのチームから声がかかりましたが、中尾選手が選んだのはBL東京でした。
ブレークしたのは入団5季目です。リーグワン初年度のシーズン、スタンドオフ、あるいはセンターとして全試合に出場しました。力強いタックルと的確な判断、そしてキックの正確さも光りました。メインキッカーではないものの、プレースキックの成功率は87.1%。BL東京の4強入りに貢献しました。
「彼が自信を持ってプレーすることで、周りの選手たちも自分の役割をしっかり果たすことができ、互いのパフォーマンスが生かされていた。もうひとつ、彼の素晴らしいところは勇気を持ったタックルができること。12番(センター)として体格の大きな相手でも体を張れる強さがある」とはジェイミー・ジョセフヘッドコーチ。9月からの代表合宿にも招集され、オーストラリアA代表との第1戦で、スタメン出場を勝ち取りました。
立ち上がりは上々でした。開始2分、ゴールまで約45メートルのPGを、冷静に決めました。これを含め前半は3本のPGを全て成功させました。また守備での活躍も光りました。20分、カウンターで自陣左サイドを突破された際には、突き刺すようなタックルで相手を止めました。その7分後、今度は攻撃でらしさを見せます。センターライン付近でボールを持つと、スペースに蹴り出し、チャンスを演出しました。トライにこそ結びつきませんでしたが、抜け出したセンターのディラン・ライリー選手(埼玉WK)はインゴール付近にまで迫りました。前半は9対6。
後半の中尾選手は、やや精彩を欠きました。ジャパンは2つトライをあげたものの、中尾選手は4本(コンバージョン2本、PG2本)あったプレースキックのうち3本を外してしまいます。とりわけ24分のPGは決めて欲しい一本でした。本人も「前半はいいかたちで判断ができたが、後半は高いインテンシティ(プレー強度)の中で判断やスキルが乱れた」と反省しきりでした。試合は22対34で敗れました。
W杯本大会最終登録スコッドは33人。2019年日本大会におけるスタンドオフは田村優選手(横浜キヤノンイーグルス)と松田力也選手(埼玉WK)の2枠でした。今回は李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)、山沢拓也(埼玉WK)らと桜のジャージーを争うことになります。地方国立大学の星・中尾選手は、果たしてフランス行きの切符を手にすることができるのでしょうか。本人は「一瞬、一瞬に全力を尽くしてチャンスを掴めるように頑張っていきたい」と語っています。
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