1月に開幕したリーグワンで開幕2連勝(不戦勝を含む)と好スタートを切ったのは、リコーブラックラムズ東京、東京サントリーサンゴリアス、横浜キヤノンイーグルス、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの4チームです。このうち昨季のトップリーグ(TL)4強は東京SGとS東京ベイ。今回はリーグワンで旋風を巻き起こしそうな予感を漂わせる横浜Eにフォーカスします。
旋風を予感させる試合がありました。ホストゲーム初戦となった1月15日、神奈川・日産スタジアムでのコベルコ神戸スティーラーズ戦です。言うまでもなく神戸SはTL初代王者で、日本選手権7連覇を含む最多10度の優勝を誇る名門。昨季のTLで横浜Eは10対73と大敗を喫しています。この試合を含め、過去18年間のTLでは1勝8敗と大きく負け越していました。その言わば天敵とも呼べる相手に4季ぶりに勝利したのですから、チームの士気はいやが上にも上がります。しかも55対21と完勝でした。
「ウチが自信を持っているフィットネスで勝とう、前半から“ぶっ飛ばしていく”というプランだった」
試合は横浜E・沢木敬介監督の狙い通りの展開になりました。
前半1分、スタンドオフ田村優選手のキックパスを敵陣右サイドでキャッチしたウイング松井千士(ちひと)選手がインゴール右隅に飛び込み、先制パンチを見舞います。10分には再び田村選手の右足からチャンスが膨らみました。ディフェンスラインの裏に蹴り込んだグラウンダーのキックパスを起点に、敵陣深くまで攻め込み、最後はスクラムハーフ荒井康植選手がトライ。その後もセンター梶村祐介選手、フルバック小倉順平選手による連続トライ。開始15分で26対0と神戸Sを圧倒しました。
後半に入っても横浜Eの勢いは止まりません。3分にナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ選手、34分には梶村選手、39分にはフランカーのコーバス・ファンダイク選手がトライをあげ、神戸Sに付け入る隙を与えず、34点差を付けました。
この試合でハットトリックを達成し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた梶村選手は「初めてのホストゲームで気持ちの入った素晴らしいゲームだった」と胸を張り、こう続けました。
「昨季、神戸に大敗していて、その悔しい思いがスタートから全員プレーに表れていた。“イーグルスとして新しい歴史を作ろう”とメンバー、ノンメンバーで体現できた。トップ4(4強入り)という目標があるので、その結果に向かって1試合1試合、目の前の試合に臨んでいきたい」
神戸S相手に計8トライ。梶村選手が語るように「走り勝つプラン」を遂行できたのは、開幕を迎えるまでの5カ月間で鍛え抜いたフィットネスの成果です。
「一人ひとり、みんながハードワークできていると思います。5カ月くらい、ずっと走ってきた」(マフィ選手)
「プレシーズンのはじめにブロンコテスト(間欠性持久力テスト)を実施し、全員がターゲット(目標タイム)を切ろうと8、9、10月はそこに特化してトレーニングしてきました。それ以降はボールゲームでゲーム以上の強度を保つようにしていた。スタッフのプランを信じてプレシーズンに実行できた」(梶村選手)
「ハードワーク」と言えば、2015年W杯イングランド大会でジャパンを率いたエディー・ジョーンズさん(現イングランド代表HC)が思い出されます。そのエディーさんの“右腕”と呼ばれたのが沢木監督です。
エディーさんのハードワークは有名で、W杯前の宮崎合宿で早朝、午前、午後の3部練習を行い、時には4部練習という殺人的なスケジュールも組みました。沢木監督はそれを間近で見てきました。
神戸S戦の前、沢木監督が「ぶっ飛ばす」と語ったのは、後半になってもへばらないだけのフィットネスを選手たちが身に付けているとの自信があったからでしょう。
沢木監督はサントリー監督時代から選手たちにハードワークを要求してきました。こんなフレーズを見つけました。
<僕は選手に好かれようとは一切思っていませんし、嫌われてもいいから、その選手を「ラグビー選手として伸ばしてやろう」としか思っていません>(サントリーサンゴリアスHP)
沢木監督は試合後、「見ている人にも攻めるというパッションが伝わっていると思う。見ている人が何かを感じられるラグビーができれば、ファンのみんなも喜んでくれる」と手応えを口にしました。一方で「後半ガス欠したので、まだまだフィットネスが必要だとロッカールームで話した」と注文も。リーグワンの“ダークホース”に浮上してきた横浜Eの今後に注目です。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。