日本ラグビー協会は13日、オーストラリア代表前ヘッドコーチ(HC)で、ジャパンでも2012年から15年まで指揮を執ったエディー・ジョーンズさんのHC就任を発表しました。世界を見据えてのスローガンは「超速ラグビー」です。
エディーさんがスローガンに掲げた「超速」とは、こういうことです。
「相手よりも速く走るだけでなく、速く考え、速く決断ができること。ラグビーは15人とチームスポーツの中でも人数が多い。それぞれが素早く考え、リアクションし、結束して動くことが大事。一人ひとりのアクションだけでなく、頭の回転。ラグビー脳を速くしていかなければいけない」
エディーさんの言う「超速」とは、動きのスピードだけではなく、頭脳(シンキング・スピード)、判断(ディシジョン・スピード)まで含めたスピードの総体を意味しているようです。
私が初めてエディーさんにインタビューしたのは2011年12月、ジャパンのHCに就任する直前のことです。「日本は世界の真似をしたがる傾向がある」。エディーさんは開口一番そう語りました。そこで掲げたスローガンが「ジャパン・ウェイ」でした。
「日本人選手は諸外国の選手と比べると相対的に小さい。これをハンディキャップと見る向きもありますが、逆に言うと他のチームは日本のラグビーを真似できない。つまり、体が小さいことは、むしろ強みなんです。問題は体の小ささをどう生かすかということです。スピードと頭脳、スキル。ここを伸ばさなければ世界に伍して戦うことはできません。たとえばサッカーを見てみましょう。この前、日本とシリアのロンドン五輪予選(11年11月)を見ました。日本人選手のスキルレベルは素晴らしく、相手を圧倒していました。そう言うと“コンタクトスポーツのラグビーとサッカーは違う”と反論する向きもあるでしょうが、フィットネスを高め、正しいテクニックを身につけることで、そうした問題は解決していきます。サッカーにできてラグビーにできないことはないでしょう」
この「ジャパン・ウェイ」は南アフリカを撃破するなど3勝をあげた15年W杯イングランド大会で結実します。その意味で今回の「超速」は「ジャパン・ウェイ」の進化版と見ていいでしょう。
エディーさんと言えば、選手、スタッフにハードワークを課すことで知られています。前回のエディー・ジャパンを経験した大野均さんは以前、こう語っていました。
「初めての合宿も予想通り厳しいものでした。もちろんある程度、覚悟して臨みましたが、想像以上のものでした。まず驚かされたのが1日あたりの練習量の多さ。練習は最低でも1日3回。4部練習も珍しくありませんでした」
南アフリカ戦での土壇場の逆転劇は、ハードワークによるタフネスの産物でした。
それから8年。23年W杯フランス大会では後半20分過ぎの被トライの多さが課題として浮き彫りになりました。
参考までに後半のスコアを記しましょう。イングランド戦が3対21、サモア戦が11対14、アルゼンチン戦が13対24。フランカーのリーチ・マイケル選手は「弱点はラスト20分の戦い。(それを埋めるのが)最後のピース」と語りました。
さて、再登板のエディーさん、この“後半20分問題”にどう取り組むのでしょう。
「トレーニング方法が大事だと思います。昔は長いハードな合宿をし、フィットネス強化に重点を置いていた。現在のラグビーは30秒以内のボールインプレー、70秒のボールアウトプレーがあり、パワーゲームになっている。これからはスピード+パワーが必要。トレーニング方法も変えていかなければいけない」
エディーさんは策士としても知られています。既に「ジャパン・ウェイ」を進化させる手立てを用意しているはずです。
2023年の当コラムはこれが最後の更新となります。新年は1月11日(木)スタートです。読者の皆さま、ご愛読ありがとうございました。来年も引き続き宜しくお願いいたします。
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