平成最後の文化の日、東京・味の素スタジアムで世界ランキング11位の日本代表は同1位のニュージーランド代表と対戦します。ニュージーランドはワールドカップ最多となる3度の優勝を誇る世界最強軍団です。愛称のオールブラックスを知らない人はいないでしょう。
ニュージーランドの面積は日本の約4分の3にあたる327万534平方キロメートル、人口は日本の30分の1の約476万人です。小さな島国でありながらW杯過去8大会全てに出場し、優勝3回、準優勝1回、3位2回。これまで決勝トーナメント進出を逃したことは1度もありません。世界ランキングは2009年11月から約9年に渡ってトップの座を守り続けています。
元日本代表の大畑大介さん曰く「えげつない人材の宝庫」。巨漢のスピードスターで伝説的ウイングのジョナ・ロムー、史上最多の148キャップを誇るフランカー/ナンバーエイトのリッチー・マコウ、今季神戸製鋼に加入したスタンドオフ/センターのダン・カーターらの活躍が脳裡に浮かびます。
世界最優秀選手賞はこれまでのべ17人が選ばれていますが、そのうちの10人がオールブラックスの選手です。マコウとカーターが3度ずつ。現在、オールブラックスのキャプテンを務めるナンバーエイトのキーラン・リードが1度。世界最高の司令塔との呼び声高いスタンドオフのボーデン・バレットは16年、17年と2年連続での受賞です。
10月27日に神奈川・日産スタジアムで行われた世界ランク7位のオーストラリア代表との対抗戦「ブレディスローカップ」でも37対20で勝利しました。この一戦はベストメンバーで臨みましたが、日本戦は若手主体で臨みます。
日本代表のジェイミー・ジョセフHCはニュージーランド出身で、現役時代はフランカーとしてオールブラックスで20キャップを誇ります。1995年W杯南アフリカ大会では準優勝を経験。指揮官も母国との対決に胸を躍らせていることでしょう。
<「NZは誰がメンバーであろうが、タフな世界最強チーム。シンプルにラン、パス、タックルをしてくるだろう。日本は80分間、ずっと良いパフォーマンスを一貫して出さないと勝機はない。そのためにも『ワンチャンス』をものにして、プレッシャーをかけ続けることが重要。選手と同じく、NZと戦えることにワクワクしている」>(日刊スポーツWEB版10月29日)
日本とオールブラックスは過去5回戦い、いずれも敗れています。スコアは以下の通りです。0対74(87年)、4対106(87年)、17対145(95年W杯)、7対83(11年W杯)、6対54(13年)。スコアを見れば明らかなように善戦すらありません。
17対145。中でも95年のW杯南アフリカ大会での歴史的大敗は日本ラグビー界に無力感をもたらせるものでした。
当時、代表スコッドの1人だった吉田義人さんはこう振り返ります。
「あれは屈辱の記憶です。145点も取られ、17点しか取れなかった。ラグビー界のコアファンたちが愛想を尽かした。自信を取り戻すには時間がかかりました。その後は代表の価値も下がっていき、それにより多くの選手たちが企業や自分のチームを優先することになりました」
それから16年後のニュージーランド大会、日本はW杯で再び腕試しのチャンスを得ました。スコアは7対83。ジョン・カーワンHC(当時)はオールブラックスとの勝負を避け、主力を温存しました。5日後のトンガ戦、11日後のカナダ戦の勝利を視野に入れた戦略でした。これについては賛否両論ありました。後にカーワンHCは「勝ちにこだわり過ぎて、それが重圧になった」と語っています。残念ながらカーワンHCの戦略は実を結ばず、日本はトンガに完敗、カナダとは引き分け、結局1分け3敗。1勝もあげることができず、無念の帰国となりました。
その年の暮れ、現イングランド代表のエディー・ジョーンズ監督が日本代表のHCに内定していたことを受け、インタビューしました。そのことについて問うと「Terrible(ひどい)」と言って、こう続けました。
「ワールドカップは4年に1度しかありません。毎試合勝ちたいという強い思いがなければ戦い抜けない。日本が弱い国ならば、なおさら"どの試合も勝つ"という強い意志と具体的な目標がなければいけません」
正直、この時は「随分強気な人だな」と思いました。「当たって砕けろ」を英語で「Go for broke」と言いますが、その精神は大事でも、本当に砕けてしまったら、何も残らないじゃないかと。しかし、W杯イングランド大会での対南アフリカ戦勝利を含む3勝を見て、エディーHCの施政方針の正しさがわかりました。相手が強大であればあるほど、格下の相手には高い格闘精神が必要となるのです。
今回は5年ぶりの対戦です。来年のW杯日本大会でも優勝候補の筆頭とみなされる世界最強軍団相手に、ジェイミージャパンはどんな戦いを挑むのでしょう。2019でのジェイミージャパンの現実的な目標は決勝トーナメント進出です。躍進のヒントを見つけたいものです。
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