リーグワンは今季(2024-25シーズン)、4つの新ルールを採用しました。そのうちのひとつが、<コンバージョンキックまでの時間短縮>です。これまではトライが与えられた時点からの制限時間は90秒以内でしたが、60秒以内に短縮されました。
早速、新ルール導入後のプレースキック成功率(ディビジョン1第3節終了時点)を調べてみました。計18試合でコンバージョンキックは133本。そのうちの86本(成功率64.7%)が成功しています。
では新ルール導入前の昨季(ディビジョン1第3節終了時点)と比較してみましょう。コンバージョンキックの成功率は69.0%(158本中109本成功)。昨季から4%以上落ちています。
選手たちの声も聞きました。2023年W杯では日本代表のプレースキッカーとして95%と驚異的なキック成功率を誇ったスタンドオフ松田力也選手(トヨタヴェルブリッツ)は「60秒は結構短い。ボールをセットした段階で20秒しかないとなると、“早く蹴らなければ”という焦りも出てくる」と語っていました。
第3節の東京サントリーサンゴリアス戦では、30対30の後半38分、勝ち越しを狙ったコンバージョンキックを外しました。ゴールまで約15メートル。角度はほぼ正面、比較的イージーな位置に見えましたが、松田選手の右足から放たれたボールは、ゴールポスト左に逸れていきました。試合後、「ああいう場面で決めないといけない。僕のキックが勝利に直結するのだから」と反省しきりでした。
ここまで松田選手のプレースキック成功率は71.4%。コンバージョンキックに限れば60%と、明らかに新ルールに苦しんでいます。
一方、プレースキック成功率86.7%(コンバージョンキック=84.6%、ペナルティキック=100%)とハイアベレージを記録しているのが、東芝ブレイブルーパス東京のスタンドオフ/フルバックの松永拓朗選手です。
本来、ブレイブルーパスのプレースキッカーはスタンドオフのリッチー・モウンガ選手ですが、足の張りを訴えたため、第2節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦からの2試合は松永選手が代役を務めています。
松永選手は時間短縮のルールについて、「だいぶ短い。トライをしてチームメイトと喜びたいけど、早くボールをもらわないと自分がしんどくなる。今日は走る距離が長く、息が上がった状態で蹴らないといけない。なかなか落ち着けない」と語っています。それでいながらダイナボアーズ戦ではコンバージョンキックを9本蹴り、8本決めました。
事前に松永選手は次のような対策を練っていました。
「日々の練習では60秒を計って蹴り、キックルーティンを30秒以内に完成できるようにしています。(キックの場面では)あまり画面を見ないように、自分のキックに集中する。(残り時間は)キックティーを持ってきてくれるスタッフに教えてもらいました」
新ルールには課題もあります。トライ後、大型ビジョンにはリプレー映像が流れるのですが、味の素スタジアムと日産スタジアムの試合では、途中でショットクロックのカウントダウン画面に切り替わり、肝心のトライシーンがカットされました。リプレー映像も残しつつショットクロックの残り時間も見られるという工夫が必要かもしれません。
近年、スポーツ界は時間短縮に余念がありません。たとえば野球のメジャーリーグでは、2023年からピッチクロックという新ルールを導入(ピッチャーはランナーがいない場合は15秒以内、ランナーがいる場合は20秒以内に投球動作に入らなければボールカウントが1つ追加される)しました。
24年シーズンは、ランナーがいる場合の制限時間を、さらに2秒短縮。これにより米データサイト『Baseball Reference』によると、1試合の平均試合時間は2時間38分。導入前(22年シーズン)と比べると28分の“時短”に成功しました。
リーグワンの今回の新ルールも、そうした流れから無縁とは言えないでしょう。何事も「タイパ」が幅をきかせる世の中です。
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