ラグビーW杯フランス大会開幕まで100日を切り、臨戦ムードが高まってきました。ジャパンは5月24日に46人(代表36人、同候補10人)の合宿参加メンバーを発表しました。この中でキャップ数ゼロは11人。今回は代表初選出で、リーグワン新人賞とベストフィフティーンに輝いたセンター長田智希選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)にスポットを当てます。
まずは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイとのリーグワン決勝でのプレーから。10対12と2点ビハインドの後半25分、一時逆転となるトライをあげたのが、この試合ウイングで起用された長田選手でした。スタンドオフ山沢拓也選手の飛ばしパスを大外で受けると、一気に加速し、トイメンの木田晴斗選手のタックルをものともせず、インゴール右に飛び込みました。試合こそ15対17で敗れたものの、長田選手の奮闘が光りました。
それよりも印象に残っているのが、第16節の東芝ブレイブルーパス東京戦でのプレーです。27対15とリードして迎えた後半34分。7点差以内のボーナスポイントを獲得しなければプレーオフ進出の望みが絶たれるブレイブルーパスは、リスク覚悟でボールを回してきました。
長田選手は、相手が前がかりになり、スキが生じる瞬間を狙っていました。センターライン付近で相手スタンドオフのマット・テイラー選手のオフロードパスをインターセプトすると、そのまま40メートルを走り切りました。
こうしたトライの臭覚は昔からのものですが、ワイルドナイツに入り、さらに磨きがかかったような印象を受けます。「レベルが上がれば上がるほど、いいパフォーマンスをする」とはジャパンの藤井雄一郎ナショナルチームディレクター。
大きく選手は2つのタイプに分けることができます。格上のカテゴリーに身を置くことで、ひと回りもふた回りも大きくなる選手。これが長田選手や、前回紹介した木田選手。
もうひとつは、高いレベルに行く手を阻まれる、あるいは順応するのに時間がかかるタイプです。もっとも、“大器晩成”や“遅咲き”という言葉もあるくらいですから、このタイプが全くダメだというわけではありません。
しかしトップリーグ創設以降、飛躍的にレベルが上がった日本ラグビーにおいて、もたもたしていると、すぐに後輩に抜かれてしまいます。クラブであれ代表であれ、一度奪われたポジションを奪い返すのは容易ではありません。大学を出て間もない長田選手や木田選手には、常に「明日なき戦い」に身を置いているような覚悟を感じ取ることができるのです。
長田選手は東海大学付属仰星高校(現・東海大学付属大阪仰星高)、早稲田大学を経て、2022年4月、ワイルドナイツに加わりました。高校、大学で主将を務め、高校3年時と大学2年時には日本一を経験しています。各世代の日本代表にも選ばれたエリートです。ポジションは主にセンター。力強いボールキャリーと好守でのハードワークが持ち味です。
初選出の報を受け、長田選手は「代表に入ることを目標にしてきたのでうれしい。やるしかない、頑張らないといけないという気持ちが大きい」と率直な思いを口にしました。
もっともワイルドナイツに入ってからの道のりが順風満帆だったわけではありません。層の厚いチームゆえ、昨シーズンは1試合も公式戦に出場することができませんでした。
それについて、長田選手は、こう語っています。
「いつでも出られる準備はしていました」
今季リーグワン第5節からスタメン出場すると、センター、ウイングとして公式戦14試合連続出場を果たしました。ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は「チームに欠かせない選手となった」と満足そうに話していました。
さて、ジャパンの今後です。まず6月12日から千葉・浦安で合宿を行います。W杯本大会の最終スコッドは33人。「日本代表の目指すラグビーを理解し、どういうふうにチームに貢献できるかを示していきたい」と長田選手。フランスに向けたサバイバルレースがスタートします。
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