現在、日本ラグビーの競技人口は約29万6000人です。今回のW杯に出場する20カ国・地域中6位。ただし人口比では18位にまで落ちてしまいます。日本ラグビーフットボール協会はW杯でのジャパンの躍進が底辺拡大につながることを期待しています。
高体連の資料によると、2018年度の男子ラグビー部は全国で1000チーム、部員数は2万1702人です。15年前と比較すると252チーム、8717人も減少しています。少子化に加え、ケガへの不安、家族の負担などが減少の背景にはあるようです。
いかにしてラグビーを身近に感じてもらえるか。W杯大会組織員会がファンサービスの一環としてW杯開催都市に開設するのが、イベントスペースの「ファンゾーン」です。
どんなサービスが展開されるのでしょう。核になるのが大型ビジョンによる試合のライブ中継、いわゆるパブリックビューイングです。またラグビー体験コーナーも目玉の一つです。
「ファンゾーンは大会の盛り上がりにとって、非常に重要な役割を持ちます。試合が始まる前、そして試合後にも、海外からの観戦者と国内の観戦者との交流の場所になることはもちろん、大会のチケットをお持ちでない方にとっても、ラグビーW杯の雰囲気をお楽しみいただける素晴らしい機会となるはずです」(組織委・嶋津昭事務総長)
ファンゾーンが初めてお目見えしたのは2011年のニュージーランド大会です。15年イングランド大会では12都市15会場で100万人の来場者数を記録しました。組織委は日本大会で同程度の来場者数を見込んでいます。
都内では東京スポーツスクエア(有楽町)と調布駅前広場の2カ所にファンゾーンが設けられます。運営を担当するラグビーW杯開催準備課・原田幸定事業調整担当課長は「1日平均5000人、2会場を合わせて平均1万人の入場者数を目指しています」と意気込んでいます。
「ここでラグビーに触れ、後世にラグビーをやる人が増えるのが望ましい。有楽町のファンゾーンでは東京都のラグビー協会に協力をいただき、ラグビースクールやラグビー部がある中学・高校の紹介をしています。親御さんからの相談を受け付けるコーナーも設けたいと思っています」
底辺拡大のカギを握るのは女性です。前ヘッドコーチで、今大会ではイングランド代表を率いるエディ・ジョーンズさんが朝日新聞(2019年9月18日付)のインタビューの中で興味深い提案を行っていました。
<自国開催を競技の発展につなげるため、お母さんたちも巻き込みたい。子どもたちがどのスポーツを好きになるか。一般的に母親の影響が強い。既にラグビーに熱中している子を持つお母さんたちにも、ぜひW杯を楽しんでほしい>
お母さんたちも巻き込みたい、というエディさんの意見には諸手をあげて賛成します。子どもたちがスポーツを選ぶにあたり、母親の影響を受けるというのも、その通りです。
Jリーグがスタートした頃、スタジアムはミサンガを手首に巻いた若い女性たちであふれていました。お目当てはカズ(三浦知良)、武田修宏、北澤豪といったイケメンや個性派の面々でした。
しかし、古くからのサッカーファンは、こうした女性たちをミーハー扱いし、「にわかファンは長続きしない」と言って一線を画そうとする者まで現れました。
こうした動きをどう思うか。初代チェアマン川淵三郎さんの主張は明快でした。
「いや、とてもありがたいことですよ。サッカーに興味を持ってくれた女性たちは、結婚しても興味を持ち続けることでしょう。そうなれば、子どもたちにも必ずサッカーをやらせますよ。こうやって底辺が拡大していく。そもそもファンを、にわかだとかプロだとか区分けすること自体がおかしい」
Jリーグができて四半世紀が過ぎましたが、川淵さんの先見の明には驚かされます。
母親を巻き込む、若い女性を取り込む――。「ラグビー100年の大計」を立てる上で、女性ファンをどう位置付けるかは、喫緊にして最大の課題と言っても過言ではないでしょう。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。