二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2019年10月31日(木)更新

NZ倒した周到なエディーマジック
イングランド4大会ぶりVなるか

 W杯3連覇を目指すニュージーランドの野望を打ち砕いたのはエディー・ジョーンズHC率いるイングランドでした。過去、W杯においてイングランドはニュージーランドに3戦全敗。W杯初のニュージーランド戦勝利の裏には周到な準備がありました。

“ハカ”の対抗策

「彼ら(ニュージーランド)の準備は1週間。私たちは2年半準備をしてきました」

 神奈川・日産スタジアムでの準決勝、19対7で勝利したイングランドを率いるエディーHCは試合後、“してやったり”の表情を浮かべて語りました。ニュージーランドの1週間とは準々決勝から準決勝までの期間、イングランドの2年半とは大会の組み合わせが決まってから準決勝までの期間を指します。いかに長期的なビジョンを描いてチームを強化してきたか、エディーHCはそれを言いたかったのでしょう。

 イングランドにはホイッスルが鳴る前から驚かされました。チームの士気を高めるニュージーランドの“ハカ”を、何とV字の陣形で迎え討ったのです。

 かつてフランスが矢尻形で構え、ハーフウェイラインを超えて迫ったことはありましたが、V字は初めて見る陣形でした。

 試合後、イングランドのCTBオーウェン・ファレル主将は「ただ立って、ハカを受けるだけのことはしたくなかった」と舞台裏を明かしました。FLサム・アンダーヒル選手は「ニュージーランドに対し、“我々は戦う準備ができているぞ”と示したかった」とさらに踏み込んだ発言をしました。

 イングランドの仕掛けは、これだけにとどまりません。キックオフはSOジョージ・フォード選手が右サイドに蹴ると見せかけ、直前にファレル選手にボールを渡したのです。受け取るやすぐにファレル選手は左サイドに蹴り出しました。ニュージーランドの選手たちに“いつもと違うぞ”と思わせるには十分な“奇襲”でした。

 この“奇襲”でニュージーランドの選手たちが浮き足だったわけではありませんが、イングランドは素早い展開で敵陣に迫り、最後はCTBマヌ・ツイランギがインゴール中央に飛び込みました。電光石化の先制トライに日産スタジアムは大きく沸きました。

「最後の20分間」

 先手必勝――。前半を10対0というスコアで折り返したエディー・イングランドは試合の締めくくり方も完璧でした。「最後の20分が重要」。エディーHCは常々、こう語っていました。

「フィニッシャー(最後の15人)を先に決めてから、スタートの15人を決めました。というのは(最後の20分が)一番重要な時間帯だからです。ニュージーランドとやるためにはフィニッシャーが大事なんです。彼らは素晴らしい仕事をしてくれました。その結果、ニュージーランドはなかなか自分たちの勢いを取り返すことができなかったんです」

 途中で起用されたのはプロップのジョー・マーラー選手(通算キャップ数66)、ダン・コール選手(同93)をはじめ経験豊富な選手たちでした。

 自分のペースに持っていけないニュージーランドは後半17分に1トライ1ゴールを返したものの、6点差に迫るのが精一杯。その後、2本のPGで6点を追加され、3連覇の夢は潰えました。追い上げが期待された残り20分は、自軍のスコアを動かすことができませんでした。

「80分間を60分と20分に分けました。最初の60分間は走りきれる選手。最も大切なのはフィットネスです。そして最後の20分間は元気のある選手、あるいは経験のある選手。要するにゲームをコントロールできる選手です。ウチには“37歳のフィニッシャー”がいました」

 エディーHCのこのコメントはニュージーランド戦後のものではありません。今から7年前、サントリーサンゴリアスのGM兼監督として日本選手権を制した時のものです。“37歳のフィニッシャー”とは元オーストラリア代表スクラムハーフのジョージ・グレーガン選手のことです。エディーHCが彼に託したのは「ヤンキースのクローザー、マリアーノ・リベラ」の役割」でした。ニューヨーク・ヤンキースで史上最多通算652セーブをあげたメジャーリーガーを代表する守護神の名をあげたことに私は少々驚きましたが、あらゆるスポーツからヒントを得るのがエディーHCの策士たる所以です。

 さて日産スタジアムで行われる11月2日の決勝の相手はエディーHCが2007年にチームアドバイザーとして優勝に貢献した南アフリカ。大一番を裁くレフェリーはジェローム・ガルセスさんです。このフランス人、4年前のジャパンvs.南アフリカを担当したエディーHCにとっては縁起のいいレフェリーです。イングランドに風が吹いているように思えてなりません。

K.Ninomiya二宮清純
                                                 
2019年12月12日(木)更新
プロ化は「総論賛成、各論反対」
「独裁者」川淵三郎に学ぶ突破力
2019年12月5日(木)更新
「ONE TEAM」がラグビー界初の流行語大賞に
4年前、内定の「五郎丸」が“落選”した理由
2019年11月28日(木)更新
サンウルブズ、日本人首脳陣で発進
世界を相手に“やってみなはれ!”
2019年11月21日(木)更新
清宮副会長が描く「プロリーグ構想」
プロ化のリスクと“しなかった”リスク
2019年11月14日(木)更新
廣瀬俊朗が語る「激闘の44日」
「南アフリカには強い芯があった」
2019年11月7日(木)更新
ラグビー列島と化した44日間
「最も偉大なW杯」の余熱利用
2019年10月31日(木)更新
NZ倒した周到なエディーマジック
イングランド4大会ぶりVなるか
2019年10月24日(木)更新
制空権を握られ、南アに完敗
次なる課題はラインアウト
2019年10月17日(木)更新
加速する“Wフェラーリ”
南アの防御網を切り裂け
2019年10月10日(木)更新
リーチ支えるラピース
「ワンチーム」の輝き
2019年10月3日(木)更新
アイルランド戦勝利の陰の立役者
長谷川慎コーチは“スクラム技師”
2019年9月26日(木)更新
NZ“生ハカ”のど迫力!
和製ハカを作るとしたら
2019年9月19日(木)更新
ラグビー100年の大計
母親、女性を“身内”に
2019年9月12日(木)更新
釜石の成功こそがW杯の成功
松尾雄治、“釜石愛”を語る
2019年9月5日(木)更新
ビールグラスは左手で!
紳士のスポーツのマナー
2019年8月29日(木)更新
トンガはナンバーエイト王国
「神様からの贈り物」マフィ
2019年8月22日(木)更新
W杯で地域振興と国際交流を
キャンプ地自治体、期待と不満
2019年8月15日(木)更新
“ブライトンの奇跡”生んだ
乾坤一擲のサインプレー
2019年8月8日(木)更新
万能型バックス松島幸太朗
世界が驚く「Xファクター」
2019年8月1日(木)更新
ラグビーの「資源」を「資産」に!
ソーシャル・イノベーション計画
2019年7月25日(木)更新
W杯のダークホース・アルゼンチン
「この10年で最も進化したチーム」
2019年7月18日(木)更新
7人制、東京五輪で表彰台へ
猛暑も「備えあれば憂いなし」
2019年7月11日(木)更新
ジャパン、新戦闘服で初陣へ
機能性と視覚効果にこだわり
2019年7月4日(木)更新
ラグビー協会、若返り人事発表
「助さん、格さん」で攻めの改革
2019年6月27日(木)更新
サンウルブズの誤算と収穫
ジャパンとの連携に課題も
2019年6月20日(木)更新
W杯ロシアは縁起のいい相手
暑さを味方に「走らせろ!」
2019年6月13日(木)更新
W杯本番まで100日
宮崎合宿スタート!
2019年6月6日(木)更新
“地獄の宮崎”で
「ワンチーム」に!
2019年5月30日(木)更新
新世界大会実現に向け
試される日本の交渉力
2019年5月23日(木)更新
「鉄と魚とラグビーのまち」
釜石に大漁旗がはためく日
2019年5月16日(木)更新
「足で稼ぐ」松田力也
「田村優に対抗できる」
2019年5月9日(木)更新
三洋電機、TL初優勝秘話
「無口な男」の最後の熱弁
2019年4月26日(金)更新
<ジャパン激闘史④>
ライバルこそ成長の糧
海外挑戦のパイオニア
2019年4月25日(木)更新
対立をエネルギーに!
舞台裏のトークバトル
2019年4月18日(木)更新
W杯の借りはW杯で返す
運命のスコットランド戦
2019年4月12日(金)更新
<ジャパン激闘史③>
オーストラリアで咲いた
ブレイブ・ブロッサムズ
2019年4月11日(木)更新
トライゲッター山田章仁
新天地でV!33歳の挑戦
2019年4月4日(木)更新
世界に通用するスクラム
長谷川コーチの“職人魂”
2019年3月29日(金)更新
<ジャパン激闘史②>
W杯初勝利を呼んだ
宿澤監督の「偵察力」
2019年3月28日(木)更新
アイルランドの弱点
「セクストンを潰せ」
2019年3月22日(金)更新
<ジャパン激闘史①>
「ブライトンの奇跡」秘話
正座が生んだ最適スクラム
2019年3月21日(木)更新
ジェイミー・ジャパンに
グレイシー柔術式トレ
2019年3月14日(木)更新
NZがやってくる!
大分の“おもてなし”
2019年3月7日(木)更新
ラガーマンの誇り
タックルを語ろう
2019年2月28日(木)更新
存在感示した中村亮土
「夢の舞台」への条件
2019年2月21日(木)更新
ジャパン支えるブラウニーの
「異次元頭脳」とタフガイ伝説
2019年2月14日(木)更新
ジャパン復帰への布石か!?
トモさん、サンウルブズ入り
2019年2月7日(木)更新
“再建人”清宮克幸
新たなるミッション
2019年1月31日(木)更新
脱エリートの心意気
代表復帰狙う藤田慶和
2019年1月24日(木)更新
トップリーグ総括
カップ戦導入の意義
2019年1月17日(木)更新
明大日本一とW杯大金星
共通する“裏方”の存在
2019年1月10日(木)更新
誰もが認めるリーダー
主将リーチ・マイケル
2018年12月27日(木)更新
日野「街の誇り」をかけた戦い
地域密着でトップリーグに新風
2018年12月20日(木)更新
ジャパンへの登竜門・TL新人賞
トライゲッター岡田優輝の「嗅覚」
2018年12月13日(木)更新
成長を求めた神戸製鋼移籍
代表「激戦区」に挑む日和佐
2018年12月6日(木)更新
ジャパンの命運握るSO田村優
引き出しの多さで世界に挑む!
2018年11月29日(木)更新
ジャパンの2018年を振り返る
レフェリー分析が目標達成のカギ
2018年11月22日(木)更新
イングランド戦、後半失速の理由
指揮官に求められる「カード捌き」
2018年11月15日(木)更新
帝京大、対抗戦V8に王手
カギ握る竹山晃暉のキック
2018年11月8日(木)更新
現代ラグビーのキーワード
「オフロードパス」の極意
2018年11月1日(木)更新
11.3最強軍団オールブラックス戦
ジャパンよ、躍進のヒントを掴め!
2018年10月25日(木)更新
“生ける伝説”ダン・カーター
「平成最後の冬」を堪能しよう
2018年10月18日(木)更新
“スパルタ”から“自立を求める”指導へ
W杯ベスト8に挑むジェイミー・ジャパン
J:COM ラグビーガイド
PageTop

J:COMへのお申し込み

特典・キャンペーン

特典・キャンペーン

個別サービスのお申し込み

資料請求

加入申込

サービス追加・変更

料金シミュレーション

問い合わせ