エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ(HC)が「ギフト(神様からの贈り物)」と評した選手がいます。ナンバーエイトのアマナキ・レレィ・マフィ選手です。現HCのジェイミー・ジョセフさんも「ベストプレーヤー」と高く評価しています。
ジャパンの新旧HCが最大級の褒め言葉を贈るマフィ選手は、ズバ抜けた身体能力を生かし、チームの攻守の要となっています。身長189センチ、体重112キロの偉丈夫。「フィジカルモンスター」の異名を地でいくような馬力溢れる突破、破壊力満点のタックルに定評があります。
4年前のW杯イングランド大会、“ブライトンの奇蹟”と呼ばれる南アフリカ戦での活躍は今も鮮明に記憶に残っています。
後半5分、ツイ・ヘンドリック選手に代わってピッチに立ったマフィ選手は南アフリカの守備網を何度も突破しました。
極めつけは試合終了間際のプレーです。ゴール前でパスを受けたマフィ選手は3対3の局面で、敵を引きつけ、左サイドのウイングのカーン・ヘスケス選手へパスを送りました。同じく途中出場のヘスケス選手は、タックルを受けながらもインゴール左隅、コーナーポストギリギリに飛び込ました。マフィ選手が相手を引きつけていなければ、タッチラインの外へ押し出されていたでしょう。すなわち彼の体を張った渾身のプレーが歴史に残る逆転劇を演出したのです。
周知のようにマフィ選手は、トンガの出身です。トンガ本島にあるハムラ村で16人きょうだいの15番目として生まれました。5歳でラグビーを始め、高校は日本にも多くの留学生を送り込んでいるトンガ・カレッジに進みました。2010年にトンガを離れ、京都の花園大学に進学しました。大学卒業後は NTTコミュニケーションズシャイニングアークスに入団。14年11月、ルーマニア代表とのテストマッチでジャパン初キャップを獲得しています。
マフィ選手の高校の先輩に元ジャパンのラトゥ・ウィリアム志南利さんがいます。オールドファンには懐かしい名前でしょう。ナンバーエイトとして大東文化大学、三洋電機、そしてジャパンで活躍しました。日本代表通算キャップ数は32。W杯は第1回大会から3大会連続で出場を果たしている名選手です。1989年にジャパンが初めてスコットランドを破ったテストマッチで、勝利を手繰り寄せる好タックルを決めたのもラトゥさんです。そのトンガのレジェンドにマフィ選手の特長を聞きました。
「スピードもパワーもある。加えてディフェンスもいい。すべてを持っているナンバーエイト。アタックだけが良くディフェンスはできないという選手がいるけど、彼は全部が揃っているね」
ナンバーエイトはラグビーにおける花形ポジションです。フォワード8人で組むスクラムでは最後尾に位置します。スピードとパワーに加え、卓抜の戦術眼が求められます。
過去、ジャパンのナンバーエイトにはラトゥさんをはじめ、45キャップのホラニ龍コリニアシさん、22キャップのタウファ統悦さんらトンガ出身者が目立ちます。その理由をラトゥさんは、こう語ります。
「トンガの少年は皆、砂浜で遊ぶ。ラグビーは国技。ヤシの実があれば、即席でタッチフットが始まるんだ。海水浴の前でも必ずね。砂浜を裸足で駆け回ることにより、足腰も自然と鍛えられる。トンガで良い選手は海外に出る傾向がある。素質のある子供たちがナンバーエイトを選ぶのは、このポジションができる能力があれば、海外のクラブや学校からスカウトされる可能性が高くなるからだよ」
ヨーロッパに目を移しても、トンガ出身のナンバーエイトの活躍が光ります。イングランド代表42キャップのビリー・ヴニボラ選手、ウェールズ代表72キャップのタウルペ・ファレタウ選手が代表格です。
最後にラトゥさんにジェイミー・ジャパンの現状について感想を伺いました。
「エディーさんのパスをつなぐラグビーは日本に一番合う。ジェイミーになってから戦術にキックを入れたりしたけど、なかなか勝てなかった。おそらくリーチ(・マイケル)らエディージャパンの選手たちが“以前のスタイルに戻そう”と直談判したのかもしれない。それによって結果が出るようになったね」
続けて、こんな“提案”も。
「日本は本当に暑い。トンガも暑いけど、カラッとしている。ジメッとしている日本の暑さは異常だよ。日本の独特の暑さに慣れていない外国の選手は苦労すると思うね。先日、パシフィックネーションズカップで日本に来たトンガの選手たちも“立っているだけでもつらい”と泣き言を言っていたよ。開幕戦のロシア戦はナイトゲーム。日本が確実に勝つためには暑いデーゲームにした方が良かったかもね(笑)。今からじゃ無理なの?」
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