二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2019年4月11日(木)更新

トライゲッター山田章仁
新天地でV!33歳の挑戦

 春は出会いと別れの季節です。4月1日には、2019年W杯日本代表候補のウイング山田章仁選手が、9シーズンプレーしたパナソニック ワイルドナイツからNTTコミュニケーションズシャイニングアークスへの移籍を発表しました。

「2つのVを達成したい」

 山田選手は7日に千葉・浦安市内にあるNTTコミュニケーションズのクラブハウスで行われた記者会見に真新しいジャージー姿で登場しました。

「チームが試合などを通して価値を高めていく。そんな姿勢に共感して入団することになりました。もちろんスポーツですので試合に勝っていかないといけないという思いがあります。ビクトリーとバリュー。2つのVを達成できるようにしたい」

 W杯イヤーでの移籍はリスクが大きいとの指摘もありましたが、山田選手は「ただそれ以上にメリットが大きいと思っています」ときっぱり否定しました。

 山田選手が口にする「メリット」とは環境面のことです。「室内の施設は24時間、365日トレーニングできる」。浦安市にある練習拠点アークス浦安パークはジャパンの合宿で使用されるほど施設面が充実しています。加えて昨年に移住したハワイへのアクセスの良さも理由にあげました。

「今年は2019年W杯もありますので、NTTコミュニケーションズの看板を背負い、日本中、世界中にひとつでも多くのいいニュース、大きなインパクトを届けられるように頑張りたい」

 NTTコミュニケーションズは76年の創部で、10-11シーズンからトップリーグに昇格しました。最高位は5位(16-17シーズン、18-19シーズン)。近年メキメキと力を付けてきているチームです。

「2019年のW杯に向けて自分自身がどんなリスクをとって、どんなチャレンジをしていくことがベストなのかを考えました」

 チームには主将のフランカー金正奎選手や、15年イングランド大会で活躍したナンバーエイトのアマナキ・レレィ・マフィ選手など、ジャパンで一緒にプレーした実力者が揃っています。山田選手も「見ていて楽しいラグビーをする」と印象を口にしました。新チームでの目標はもちろん優勝です。

 山田選手は50メートル5秒9の俊足を生かしたスピードと独特のステップワークを駆使した突破力が持ち味です。現役最多のトップリーグ通算92トライ、2度のトライ王(12-13シーズン、17-18シーズン)に輝いています。

アメフトで広がった視野

 12年にはアメリカンフットボールとの“二刀流”にチャレンジして注目を集めました。パナソニックに所属しながら、アメフト・Xリーグのノジマ相模原ライズでプレーしたのです。2つの国内最高峰リーグで同時にプレーする前代未聞の挑戦でした。

 これを受け、「まさかアメフトに挑戦だなんて想像もしていませんでした」と振り返ったのはパナソニック部長の飯島均さんです。

「12年の春のことです。個別ミーティングで“来シーズンを迎えるにあたって何か考えていることは?”と聞くと、“アメフトに挑戦したいと思っている”と。正直言って、これには驚きました。海外のクラブでプレーしたいというのなら、まだわかります。しかしアメフトとは……」

 このアメフト挑戦、実は随分前から温めていたプランでした。大学時代からNFL入りを目指すアメフト選手と一緒にトレーニングをしていたそうです。

 山田選手がノジマで任されたポジションはリターナーでした。相手が蹴ったボールを確実にキャッチし、敵陣に走り込むのが主な役割です。

「ボールを持って走ると一斉に相手の選手が僕に向かってくる。このプレッシャーの中で、わずかな穴を見つけて走らないといけない。一方、ラグビーではボールを持っている選手だけでなく、地域を守らなければならないので、アメフトに比べればプレッシャーがかからない。おかげで随分、視野が広がったと思います」

 飯島さんにとっても、二刀流効果は想像以上だったようです。

「狭いスペースの中、どこで抜けるか。アメフトをやるようになってからイメージがより鮮明になってきたのではないでしょうか」

 スペースを抜け出す術に磨きをかけた山田選手は、トップリーグとジャパンでトライを量産してきました。わけても印象深いのが15年W杯イングランド大会での活躍です。

 ジャパンが同大会であげた3勝のうち山田選手は2試合に先発、サモア戦ではW杯初トライを記録しました。前半41分、敵陣深く右サイドでボールを受け取った山田選手は、ディフェンスから受けたタックルをクルリと反転してかわしました。そのままインゴール右隅へ飛び込んだプレーは「忍者トライ」とも評されました。これを山田選手は「アメフトのおかげ」と話していました。

 33歳の山田選手にとって、9月のW杯、翌年の東京オリンピック(7人制)はプレーヤーとしての総決算と言っていいでしょう。「どちらもチャレンジできる環境があるのは現役選手として幸運なこと。全力でチャレンジしていきたい」と力強く語っていました。

K.Ninomiya二宮清純
                                                 
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