二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2018年10月18日(木)更新

“スパルタ”から“自立を求める”指導へ
W杯ベスト8に挑むジェイミー・ジャパン

 ラグビーW杯日本大会まで、あと1年を切りました。ニュージーランド出身のHCジェイミー・ジョセフさんが率いる日本代表は予選プールAでアイルランド、スコットランド、ロシア、サモアと対戦します。このうちの上位2チームが決勝トーナメントに出場します。

対照的な指導哲学

 前回のイングランド大会では南アフリカ戦の大金星を含む過去最多の3勝を挙げたにもかかわらず、目標とするベスト8には届きませんでした。日本躍進の立役者はHCのエディー・ジョーンズさん。勝つための準備を徹底し、選手たちに猛練習を課したことで知られています。
 その“ハードワーク”ぶりを象徴するエピソードがあります。明かすのは元日本代表で、エディーさんとは1996年に日本代表コーチと選手の間柄だった大畑大介さん。
「エディー・ジャパンの選手、スタッフの誰に聞いても、“もうエディーとは仕事したくない”と言いますよ(笑)。あるスタッフは“自分たちにもハードな仕事を課すけど、エディーはそれ以上のことをやっている。あれはすごい”と。他人にも、己にも厳しい人だから、周りは大変ですよ」

 いわばエディーさんはスパルタ教師タイプでした。イングランド大会終了後に日本を去り、現在はイングランド代表の監督を務めています。彼の指導がどれほど厳しかったのか。再び大畑さんです。
「もし退任発表がないまま本大会に入っていたら、選手は“もしかして、また4年エディーとやるんか?”“勘弁してくれや”と、テンションが上がらなかったはず(笑)。8月に退任発表したことで、“よっしゃ、これで最後や”と意気が上がったんじゃないですかね。僕はそう想像しています」

 そんなスパルタ教師の跡を襲ったのが、現日本代表HCのジェイミーさんです。エディーさんとは対照的に自主性を重んじるタイプの指導者だと言われています。

 ジェイミーさんについても元代表選手から話を聞きました。

 まずは元日本代表の吉田義人さん。
「ジェイミーの良いところは、選手に自立を求めること。ニュージーランドのトッププレーヤーたちはそうやって育ってきている。ラグビー選手、1人の人間としてこうあるべきだと。だから、ジェイミーの選手たちへの要求は高いと思います」

 続いて大畑さん。
「エディーが上から下の指導法だとするならば、ジェイミーは斜め上です。兄貴分的存在です。何より人間として、選手として信頼してくれる。それは選手としても責任、プライドを持つことに繋がるんです」

ジェイミーvs.エディー

 ジェイミーさんは現役時代、ニュージーランド代表として20キャップを誇り、95年ワールドカップ南アフリカ大会準優勝メンバーの1人です。日本のサニックス(現・宗像サニックスブルース)でもプレーしていました。日本代表としては99年ワールドカップウェールズ大会に出場するなど9キャップを刻んでいます。指導者になってからはハイランダーズ(ニュージーランド)をスーパーラグビー優勝に導きました。

 エディーさんと対照的なのは指導スタイルだけではありません。エディーさんがポゼッション・ラグビーを標榜したのに対し、ジェイミーさんはキックを多用しながら空いたスペースをつくラグビーを志向します。ジェイミーさんが就任以来、通算戦績は9勝8敗1分け。当初は結果が出ず、「(戦術が)日本には合わない」という批判も聞かれました。

 それについて、吉田さんは「僕は間違った戦術・戦略を立てているとは思わなかった。キックを有効に使うのは当たり前で必須なことです」と語り、こう続けました。
「キックでひとつの戦況を劇的に変えられます。トライの演出もできる。すごく大事な要素をジェイミーは思い切ってやろうとした。浸透するまでには時間がかかりましたが、今はだいぶ良くなっている印象があります」

 日本代表のスクラムハーフ田中史朗選手は両HCの下でプレーしています。
「エディーがしっかり土台を作ってくれて、そこから自分たちの頭でもっともっと考えて上を目指さないといけない。そのために就任したのがジェイミーだと思っています。ジェイミーは練習もハードなんですが、それ以上に頭を使うことを選手たちに求めます」

 ここにきて“ジェイミー流”は確実に浸透しつつあります。昨年11月に強豪フランスに引き分け、今年6月にはイタリアに勝利しました。田中選手は<「エディーの時は『やらされている感』が強かったが、今は自分たちで考えながらやっている。当時よりも難しいが、はまれば結果が出る」>(「毎日新聞」2018年9月21日付)と手応えを感じている様子です。

 本番1年前となれば、ここからは臨戦態勢です。今月15日からスタートした宮崎合宿では、初日からハードなメニューで選手たちを追い込み、新聞には<地獄トレ>という見出しも躍りました。

 さて今後のスケジュールですが、日本は今月26日に世界選抜と対戦し、11月3日には世界ランキング1位のニュージーランドとテストマッチを行います。その後、イギリス遠征に出発し、17日には同4位のイングランド戦です。そうジェイミーvs.エディーの新旧日本代表指揮官対決が実現します。ジェイミー・ジャパンにとっては1年後に迫った本番を占う上で大事な一戦になりそうです。

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