二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2020年5月14日(木)更新

早大相良監督、苦境下の泰然
「今は主体性を育む時期」

 2019年度の「ジャパンラグビーコーチングアワード」で最優秀賞に選ばれた早稲田大学・相良南海夫監督は「選手一人一人の主体性を重視する」(選出理由)注目の指導者です。新型コロナウイルスの影響で練習もままならない中、どうチームをマネジメントするのか。本人に聞きました。

異例のシーズン

――新型コロナウイルス感染拡大により、活動を休止するなど各チームに大きな影響が出ています。
相良南海夫:早稲田のラグビー部員は約130人。その約6割が寮生活をしていますが、今回の状況を受け、各自の判断で実家へ戻った者もいます。

――130人の大所帯となると、管理するのも大変ですね。
相良:そうですね。私は毎日クラブハウスに来るようにはしていますので、寮に残っているメンバーと顔を合わせることはできますが、ひとりひとりに対する面談は容易ではありません。メールを送ったり、オンラインでコミュニケーションを取るのが主ですね。早稲田はクラウドを使い、各選手のコンディションをモニタリングできるシステムを導入しています。その入力項目に体温を加え、部員の体調管理を徹底しています。

――4月1日から全体練習を休止したことで、新入部員と顔を合わせる機会もないのでは?
相良:3月に入部希望者を集め、説明会や5日間ほどの練習を行いました。本来なら練習は1週間から10日間、そして4月中旬に入部式を行うのですが、今回は練習を途中で休止し、WEBで承認というかたちをとりました。

――選手たちにはどのような指示を?
相良:緊急事態宣言が解けるまでは、不要不急の外出はしないこと。手洗いうがいの徹底や“三密”を避けること。当たり前ですが、それを徹底させています。

――グラウンドやウエイトルームは使用禁止だと伺いました。
相良:はい。今は最低限の体力維持や体の柔軟性を高めることを指示しています。学生たちには家の中でもできることにフォーカスしてくれ、と。選手とスタッフ陣はLINEやZOOMなどのアプリでコミュニケーションを取り、トレーニング方法についての質問があれば答えるようにしています。

――春季大会は中止となり、夏合宿も例年通り行えるかどうかわかりません。
相良:これまでとは違ったスケジュールのシーズンとなることは間違いないでしょう。チームとして、そこをどうプランニングしていくかが重要だと思います。

――昨年度は11大会ぶりの大学日本一に輝きました。明大との決勝戦は前半31対0と完璧なかたちで折り返しました。部史に残る40分間だったんじゃないでしょうか?
相良:そう思います。もう一度やれと言われてもできない。それほど完璧な40分間でしたね。

――その要因は?
相良:私たちはチャレンジャーだった。一方、明治には「ディフェンディングチャンピオン」という意識が強かったのかなと思います。対抗戦で明治には大敗していたので、“やり返す”との思いが強かった。あとはケガ人が戻ってきて、ベストメンバーを組めたこと。準決勝で天理に勝ってから決勝までの約10日間、しっかり明治戦に向けた準備ができたことが大きかった。

「我慢すべき時は我慢する」

――連覇に向けて今年度のチームスローガンは「BATTLE」ですね。
相良:チームスローガンは私が監督になってからは学生に考えさせています。選手とスタッフが話し合っていく中で、「BATTLE」に決まりました。今年度は1年時から主力だった齋藤直人、岸岡智樹、中野将伍ら大学屈指のプレーヤーがいません。彼らが抜けたことを言い訳にせず、本当にひとりひとりが戦わないと明治や帝京といったタレント軍団には勝てないと考えています。

――昨年度のキャプテン・齋藤選手は今年1月の大学選手権決勝でキック成功率100%を記録するなど安定したプレースキックが持ち味でした。
相良:後任はまだ決まっていません。今年はキッカーが課題になるかもしれませんね。蹴る可能性のある選手には、「それがオマエの売りになるかもしれないぞ」と声を掛けています。今のところはグラウンドも使用禁止ですから、大学の許可が下りれば、なるべく早くプレースキックの練習を再開させたいと考えています。

――異例のシーズンを乗り切る上での心構えは?
相良:今は我慢するしかない。私たちが焦燥感にかられると、選手に動揺を与えることになってしまいます。選手には「今できることを自分で考えてやりなさい」と伝えています。自分と向き合い、課題を見つける。ある意味突き離していますが、今は主体性を育む時期だと思っています。

――個々人が成長するチャンスだと?
相良:そう思います。それに、そもそも私が学生の時から型にはめられたり、人からやらされることが好きじゃなかったんです。自分がなりたい姿があり、そこを追い求めてこそ、きついことにも対峙できる。そうあるべきだと思っていましたし、早稲田のラグビー部員はそういうものだとも思っていました。

――それは高校時代の恩師である大西鐵之祐さんの教えですか?
相良:大西さんからはラグビーだけではなく、「ラグビーを通じて社会のリーダーになるんだ」とよく言われました。自分が追い求めていくものに対し、どう行動し、周りを巻きこんでいけるかが大事だと思っています。

――ラグビーにおける早稲田クオリティとは?
相良:動き続けることですね。イーブンボールは必ず相手より先に仕掛け、味方へのサポートを怠らない。あるいは抜け出した相手に対し、諦めずに追いかけること。早稲田にはエリートもいれば、2浪、3浪して入った苦労人もいます。以上のことはスキルの有無に限らず、誰にでもできること。レギュラーだろうが、一番下のカテゴリーにいようが、チームの一員である以上は絶対にやり切る。それが早稲田クオリティだと考えています。

――今年度は新型コロナウイルスの影響で、どのチームも手探りの状況です。ラグビーは不確実性のスポーツ。不確実な時代だからこそラグビーマインドが必要になってくるのではないでしょうか。
相良:おっしゃる通りかもしれないですね。他人に流されず、状況に適した判断を各々がすべきだと思います。ラグビーは自分を律するスポーツ。我慢すべき時は我慢する。学生にはそれを日常の中でも意識して生活してほしいと思いますね。

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