あと14カ月後に迫ったW杯フランス大会、ジャパンは1次リーグプールDでイングランド代表、アルゼンチン代表、サモア代表、チリ代表と対戦します。この5チームのうち上位2チームまでが決勝トーナメントに進出します。ジャパンのライバルと目されているアルゼンチン代表は7月、スコットランド代表をホームに迎えて3試合を行い、2勝1敗と勝ち越しました。新指揮官でアルゼンチンは、どう変わったのでしょう。
“ロス・プーマス”の愛称で知られるアルゼンチンは、世界ランキング9位(7月19日時点)でジャパンよりもひとつ上です。W杯は過去全9大会全てに出場し、最高成績は3位(07年フランス大会)。11年ニュージーランド大会でベスト8、15年イングランド大会では4位に入りました。ワールドラグビーのユーチューブチャンネルでは<ここ10年で最も進化したチーム>(18年7月9日配信)と紹介されました。
そのアルゼンチンですが、18年に就任したマリオ・レデスマヘッドコーチ(HC)が今年2月に退任するという非常事態が起きました。20年に南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ」(TRC)でニュージーランド代表を初めて破ったものの、昨年のTRCは6戦全敗に終わりました。21年のテストマッチ戦績は3勝8敗1分と振るわず、レデスマHC自ら身を引くことを決めたようです。
代わって新HCに就いたのが21年からリーグワンNECグリーンロケッツ東葛のディレクター・オブ・ラグビーを務めるマイケル・チェイカさんです。チェイカ新HCはオーストラリア代表HCとして15年W杯イングランド大会でチームを準優勝に導き、その年のワールドラグビー年間最優秀コーチに輝いた実績の持ち主です。20年からアルゼンチン代表のコンサルタント/アシスタントとしてレデスマ体制をサポートしてきました。日本ラグビーを知るだけに、ジャパンにとっては不気味です。
7月のスコットランドとの3連戦は、チェイカHC就任以降初のテストマッチとなりました。現地時間2日に行われた第1戦は26対18で勝利し、スコットランド代表相手に11年ぶりの白星をあげました。第2戦(9日)は6対29で敗れたものの、第3戦(16日)は34対31、終了間際の逆転トライによる劇的勝利でした。
WOWOWで解説を務めた元ジャパンの真壁伸弥さんは、チェイカHC就任によるアルゼンチン代表の変化について、こう述べています。
「ボールを保持し続ける能力は圧倒的に上がってきている。まだゴール前でFWが必要以上にアタックしているところもありますが、立体的にボールを展開し始めているので怖いですね」
スポーツ専門局ESPNのラグビーサイトによると、スコットランド戦3試合の1試合平均ボール支配率は50%。同パス本数は130ですが、被パス本数は102.3。レデスマ体制下のTRC(21年)と比べると、支配率は45.2%から5%近く上がっています。パス本数(21年TRC131.5)はわずかに下回るものの、被パス本数(同165.2)も60本以上減らしています。このデータからは、ボールをキープして攻め続ける意図が見てとれます。指揮官が目指すオーストラリア流のスタイルが浸透しつつあると言えるでしょう。
ジャパンの脅威になりそうなのが、ユーティリティバックスのエミリアーノ・ボフェッリ選手です。身長191センチでハイボールに強く、トライを取る能力に長けています。加えて精度の高い長距離のプレースキックが持ち味です。19年W杯日本大会では3試合に出場し、プレースキックを任されることもありました。
スコットランドとの第1戦ではチームのメインキッカーであるスタンドオフのニコラス・サンチェス選手が負傷交代したことにより、途中からボフェッリ選手がその役を引き継ぎました。
試合開始からキッカーを務めた第3戦、ボフェッリ選手が本領を発揮しました。前半9分、ハーフウェイライン付近やや後方でペナルティーを獲得すると、フランカーでキャプテンのパブロ・マテラ選手はショットを選択しました。ほぼ正面とはいえ、ゴールまでの距離は50メートル以上ありました。だが、ボフェッリ選手は、長い距離をものともせず力強いキックで楕円球をゴールポストの間に通しました。この試合、7本のうち6本を成功させるなど、逆転トライと合わせて計19得点の大活躍。ジャパンにとって自陣インゴールから50メートル以内の反則は3失点を意味します。要警戒レベルをさらに一段階引き上げなければならない27歳です。
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