リーグワンがスタートしてまだ2シーズン目ですが、新リーグ屈指の好ゲームだったと言っても過言ではないでしょう。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(スピアーズ)と東京サントリーサンゴリアス(サンゴリアス)とのプレーオフ準決勝は、TMO(ビデオ判定)6度の末、スピアーズが24対18で競り勝ちました。最後、サンゴリアスは“幻のトライ”に泣きました。
1万3065人の観衆で埋まった東京・秩父宮ラグビー場にホーンが鳴り響き、ラストワンプレー。しかし、試合は簡単には終わりません。スコアは24対18でスピアーズがリード。サンゴリアスはラインアウトからのモールに逆転への望みをつなぎます。
インゴール左隅に黒と黄のジャージーがなだれ込みます。フッカー中村駿太選手がチームメイトと束になり、最後尾からボールを持ち込みました。
果たしてトライか、ノートライか。滑川剛人主審は肉眼ではトライを確認できず、この日6度目のTMOに判定を委ねます。
曇り空の下、審判団が5分以上、大型のオーロラビジョンを見つめます。その間、競技場では何度もこのシーンが流れました。
結果はノートライでノーサイド。TMO担当の久保修平レフリーは「オンフィールド(・ディシジョン=グラウンド上にいるレフリーの判断・決断)を覆すまでのもの(グラウンディングできている)かというと、はっきりしたことは言えない」との見解を示しました。
立派だったのはサンゴリアスの選手たちです。スクラムハーフ流大選手はノーサイドの笛が鳴った直後、真っ先に滑川主審駆け寄り、握手を求めました。
「レフリー陣の判断が全てだと思うので、何も言うことはないです」
試合後、TMOに関する感想を求められたサンゴリアスの田中澄憲監督は「こういう一発勝負のゲームになると、レフリーにもプレッシャーがかかります。より正確な判定を求められる。スローモーションで見てそうだったのであれば、(それに)沿うしかない。TMOが多いという意見もあると思いますが、そういう制度である以上、どうこう言えない。それくらいラグビーが難しくなっているのだと思います」と語りました。
トップリーグでは2014‐15シーズンから全試合でTMOを導入しました。当初は「機械に判定を委ねるとレフリーの権威がなくなる」「TMOで時間が奪われると、流れが止まる」と否定的な声も少なくありませんでした。しかし判定に正確性を期し、レフリーを“誤審”から救う上で、TMOの導入は、世界的に見ても止められない流れだったと言っていいでしょう。
それにしても、TMOが6度とは……。スピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチは「クレイジーゲーム」と苦笑し、こう続けました。
「レフリーに関しては、自分たちではコントロールできない部分ですので、とにかくフェアなコールだけを吹いてほしい。最後のプレーでも、正しいコールがされたと思っています」
サンゴリアスはトライに関し、最後を含め3度も、TMOにかけられましたが、すべてノートライと判定されました。
ひとつ目は後半25分。13対17の場面で、ウイング尾崎泰雅選手が決めたかに見えた逆転トライは、起点となったスクラムハーフ流大選手にノックオンがあったと判定され、取り消しとなりました。
2つ目は試合終了の時間を知らせるホーンが鳴った直後。フルバック松島幸太朗選手のパスを受けた尾崎選手が左サイドを駆け抜け、インゴール左にグラウンディングしました。ところが、そこに至るまでの流選手のパスがスローフォワード(前方にパスを投げる反則)と判定されました。
この日のサンゴリアスには運がなかったとしか言いようがありません。前半5分にはロックのツイ・ヘンドリック選手がハイタックルで一発退場。14人で戦う時間が長かったこともサンゴリアスにとっては誤算だったでしょう。
一方でスポーツの世界には「強い者が勝つのではなく、勝った者が強い」という常套句があります。スピアーズは今シーズン、格上と見なされていたサンゴリアスに対し3戦3勝(31対18、39対24、24対18)。王座を争うにふさわしいチームに成長したことは衆目の一致するところです。
埼玉パナソニックワイルドナイツ(ワイルドナイツ)との決勝は5月20日。今シーズンはワイルドナイツの1勝(30対15)。スピアーズの立川理道主将は「相手がどのチームであろうと自分たちのラグビーをするだけだと思っています。そうすれば必ず、結果がついてくる」と決勝への抱負を口にしました。土曜日の午後、国立競技場には興奮と熱狂が待っています。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。