アルゼンチン代表の36年ぶり3度目の優勝で幕を閉じたサッカーW杯カタール大会。森保一監督率いる日本代表は、目標のベスト8には届かなかったものの、グループリーグでW杯優勝4回のドイツ代表、同1回のスペイン代表を撃破するという快挙を成し遂げました。W杯後、複数のラグビー関係者に会いましたが、異口同音に「刺激を受けた」と語っていました。さぁ次はラグビーの番です。
2019年のラグビーW杯日本大会でジャパンが初のベスト8進出を果たした後、日本サッカー協会元会長の川淵三郎さんから、こんな話を聞きました。
「実は(06年に他界した)宿澤広朗さん(日本代表元監督)とサッカーとラグビー、どちらが先にベスト8に行くかという話題になったことがあったんだ。当時、日本のラグビーはまだ強くなかったので、僕はサッカーの方が先に行くと思っていたよ。ところがエディー・ジョーンズがヘッドコーチ(HC)になったあたりから急にラグビーの代表が強くなり、先を越されてしまった。でも、僕はうれしかったね。体格面で外国勢に劣るラグビーができてサッカーにできなわいけがない。いい刺激をもらったと思ったよ」
カタールでのサッカーW杯、コロナの影響もあり、交代枠は従来の3人から5人に拡大されました。それにより従来の大会以上に、指揮官のカード捌きに注目が集まりました。
まずドイツ戦。後半30分の同点ゴールは途中出場の三苫薫選手、南野拓実選手、堂安律選手によってもたらされました。勝ち越しゴールを決めた浅野拓磨選手も後半12分からの出場でした。
途中出場の選手が全得点に絡んだのはスペイン戦も同じです。後半3分に強烈なミドルシュートを突き刺した堂安選手、後半6分の田中碧選手の決勝ゴールを演出した三笘選手、いずれも途中出場組でした。
それを受けて森保監督は言いました。
「このチームのいいところは(登録メンバー)26人全員がレギュラーだと思ってくれている。実際に出場時間の違いはありますが、レギュラー組とサブ組という概念、考え方を選手たちは持っていないと思いますし、なにより私自身が持っていない。野球でいえば先発、中継ぎ、クローザー。役割が違う中、チームが勝つために個々が機能していくことが大事なんです」
指揮官のカード捌きが重要なのはラグビーも同様です。いや、8人まで代えられるラグビーの方が、より重要と言えるかもしれません。まさに23人全員で戦う時代になってきたのです。
ジャパンのジェイミー・ジョセフHCは19年W日本大会の全5試合中4試合でリザーブを含めた23人全員をピッチに送り出し、当時のチームスローガン「ONE TEAM」を体現しました。
ジャパンが成長を遂げるには、国内最高峰のリーグであるリーグワンの充実が欠かせません。初年度のリーグワンでMVPに輝いたフッカー堀江翔太選手は、プレーオフを含む全16試合(不戦敗を除く)中15試合で途中出場しました。クローザーの重要性が認識された選出結果でした。
余談ですが球界きってのラグビーファンでもある権藤博さんは継投の名手として知られています。横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)では、クローザーの佐々木主浩投手からの“逆算方式”でチームを38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導きました。その権藤さんには、次のような名言があります。
「先発投手が完投して勝った場合、家に帰っておいしいビールが飲めるのは1人だけ。ところが先発が6回まで投げ、セットアッパーの2人が7回と8回を、クローザーが9回を抑えて勝つと4人に勝利投手やホールド、セーブが付き、4人とも家でおいしいビールを飲むことができる。“よし明日も、このチームのために頑張ろう”となるわけです。1人でも多くの選手が勝利の喜びを分かち合える。そんなチームが強いんです」
野球のレギュラーは9人、サッカーは11人、ラグビーは15人。ところが、権藤さんに言わせれば「たまたま先に出たメンバー」。スタメン=正選手という見方自体が、もう古いのかもしれません。
データが取得できませんでした
以下よりダウンロードください。
ご視聴いただくには、「J:COMパーソナルID」または「J:COM ID」にてJ:COMオンデマンドアプリにログインしていただく必要がございます。
※よりかんたんに登録・ご利用いただける「J:COMパーソナルID」でのログインをおすすめしております。