W杯開幕まで100日を切りました。ジャパン候補42人のうちスーパーラグビーに出場中の選手らを除く36人は、「地獄の」と形容される宮崎合宿に臨んでいます。
4年前も宮崎合宿は地獄でした。前ヘッドコーチ(HC)のエディー・ジョーンズさんは、時に「理不尽」とも思えるようなスパルタ指導で選手たちを鍛え上げました。
エディー・ジャパン初代キャプテンの廣瀬俊朗さんは「追い込まれても前を向ける選手をピックアップしたかったのだと思います」と語っていました。いわゆる「ストレステスト」です。
このストレステストは、選手のみならずコーチやスタッフにも向けられました。「エディーの右腕」と呼ばれたコーチングコーディネーターの沢木敬介さんはメニューの作成から時間の調整まで、トレーニングに関する一切のマネジメントを任されていました。
「エディーはコーチやスタッフに対する要求も高かった。その要求に応えなければいけないので大変でした」
合宿中、スタッフは選手よりも1時間以上早い4時起床でした。練習は6時スタートですが、その前にやるべきことがあるからです。
沢木さんは語ります。
「6時からの練習のための準備が大切なんです。その日のトレーニングのプランは僕が全部作らなければいけなかった。朝に出来上がったシートをエディーに持っていくんです」
沢木さんの仕事はコーチ陣の要求するトレーニング時間を調整することです。あっちを立てればこっちが立たず――。中には「オマエはオレの練習に時間をあまりくれなかった」と不満を口にするコーチもいたようです。
「理不尽大王」のエディーさんですが、イエスマンばかりを集めたわけではありません。気の利いた反論には、しっかりと耳を傾けたそうです。
「エディーの意見が100%正しいわけではありません。エディーがガーッと言ってくるときに“ウン?”と思わせるような理論を用意していなければいけないんです。逆にそうしなければ、ずっと言われっ放しになってしまう。僕が意見を言い返すと、エディーの顔色が変わることがありました。それは向こうが僕の意見に耳を傾け、考えてくれている時なんです。そうなったら僕の勝ちでした」
それでもコーチ、スタッフともに一丸となってエディーさんを支えたのは、沢木さんによれば「アメとムチの使い分けがうまかった」からだそうです。
「エディーは時々褒めてくれる。“今日のオマエの練習メニューはすごく良かった”。さっきまで怒っていたのに、なんで褒めるんだよ、と思いましたがやっぱりうれしかったですね」
以下は沢木さんの著書からの引用です。
<エディーといっしょに仕事をして感じたのは、「プレッシャーがなければ、人間はいい仕事ができない」ということだ。
コーチやスタッフにはエディーからのプレッシャーが大きかったが、エディーはエディーで代表を率いてW杯に臨む大きなプレッシャーを背負っていた。しかも、W杯で結果を残すと公言している以上、そのプレッシャーは半端なものではなかった。
このときの宮崎では、早朝から夕方までトレーニングに追われた選手たちも、スタッフも、エディーも、チーム全員がものすごいプレッシャーと闘っていた。しかし、そのプレッシャーがあったから、9月に開幕したW杯で史上初めての3勝1敗という結果を残すことができた。
プレッシャーがあったからこそ、いい仕事ができた>(「ハングリーな組織だけが成功を生む」ぴあ)
もちろん、エディーさんのやり方が全て正しいわけではありません。HCが10人いれば、10通りのやり方があります。ジェイミー・ジョセフHCについては、ベテランスクラムハーフの田中史朗選手が「ジェイミーの練習も体力的にハードですが、それ以上に頭を使うことを選手たちに求めます」と語っていました。指揮官の手綱さばきが問われる宮崎合宿です。
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