第1回ラグビーW杯は1987年、オーストラリアとニュージーランドで開催されました。以降、2023年のフランス大会まで、日本代表は10大会連続出場を果たしています。過去8人の監督(ヘッドコーチ=HC)の中で、復帰したのは1月1日付けで就任したエディー・ジョーンズさんだけです。
W杯で指揮を執った歴代の代表監督(HC)は次の通りです。
87年第1回大会 宮地克実 1次L敗退
91年第2回大会 宿澤広朗 1次L敗退
95年第3回大会 小藪修 1次L敗退
99年第4回大会 平尾誠二 1次L敗退
03年第5回大会 向井昭吾 1次L敗退
07年第6回大会 ジョン・カーワン 1次L敗退
11年第7回大会 〃 1次L敗退
15年第8回大会 エディー・ジョーンズ 1次L敗退
19年第9回大会 ジェイミー・ジョセフ ベスト8
23年第10回大会 〃 1次L敗退
このように07年の第6回大会以降は5大会連続で外国人が指揮を執っています。
日本代表が、世界と伍して戦えるようになったのはエディーさんが指揮を執った15年のイングランド大会以降です。その意味で外国人指導者が果たした役割は、非常に大きかったと言えるでしょう。
しかし、一度、代表の指揮を執った者が時を経て復帰した例は、冒頭で述べたようにエディーさんが初めてです。
ジェイミーさんの退任が決まった後、日本ラグビー協会の土田雅人会長は「日本のラグビーを熟知していることに加え、高校、大学を含め、日本ラグビー全体の底上げができる指導者が望ましい」と語っていましたが、それにはエディーさんが一番適任だったということでしょう。
さる1月2日、エディー新HCの姿は東京・国立競技場にありました。全国大学ラグビー選手権準決勝の明治大学対京都産業大学戦、帝京大学対天理大学戦を視察するためです。NHKのインタビューでエディーさんは大学ラグビーの重要性を説き、この日、活躍した明治大のセンター廣瀬雄也選手を「素晴らしいコンビネーションやランを見せてくれた」と褒めていました。さらには「若手を生かすことで、日本らしいラグビーを確立したい」とも語っていました。
前回も書きましたが、復帰にあたりエディーさんは「超速」をスローガンに掲げました。プレースピードのみならず、シンキング・スピード、ディシジョン・スピードも、今以上に精度を高めながら速めていくというのです。
そのためには多少の若返りが必要になってくるでしょう。代表未経験組にとってはチャンス到来です。
ひとつ気になるのは、エディーさんのこれまでのやり方が、今回も通用するか、ということです。スパルタと言えば聞こえはいいのですが、前回はやや理不尽なところもありました。それは超ハードなトレーニングだけではありません。
かつて、元日本代表の大野均さんから、こんな話を聞きました。
2012年、エディージャパンに呼ばれた時のことです。翌日の新聞を見て、大野さんは怒り心頭に発したそうです。
<大野は2015年のワールドカップには、おそらくいないでしょう。でも今の若いチームには必要だから選びました>
カチンときた大野さん。「だったらジャパンを離れる時期を1日でも遅らせてやろう」と奮起し、イングランド大会の出場につなげるわけですが、今の選手に果たして、そうした青春ドラマのようなやり方が通用するのか。というのも、今の選手の経験値と実績は、当時とは比べものにならないほど高くなっているからです。
事の良し悪しはともかく、エディーさんの前回のHC就任時と比べると“言葉パワハラ”のハードルは、ものすごく下がっています。ひとつ間違えると、チームが空中分解ということになりかねません。
一方で、「いや、時代にあったやり方を模索するはずだよ。彼は策士で心理学者だから」とエディーさんを擁護する人もいます。かつての神通力は残っているのか、それとも……。今は“嵐の前の静けさ”なのかもしれません。
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