W杯に次ぐ国際大会が早ければ3年後にスタートします。欧州6カ国対抗「シックス・ネーションズ」と南半球4カ国対抗「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」(TRC)を部分的に統合して行われる「ネーションズ・チャンピオンシップ」(NC)の実現に向け、国際統括団体のワールドラグビー(WR)と各協会は議論を続けています。
シックス・ネーションズとはイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリアの欧州6カ国で争われる国際大会で、その歴史はW杯よりも古く、前身の大会を含めれば130年以上の伝統を誇ります。
一方、TRCは南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンの4カ国対抗戦です。南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアの3カ国で1996年にスタートした「トライ・ネーションズ」が、アルゼンチンの加入により、現名称に変更されました。大会の運営団体は4カ国の頭文字をとってSANZAARです。ちなみSANZAARは現在、日本のヒト・コミュニケーションズ サンウルブズが所属するスーパーラグビー(SR)の運営団体でもあります。
NCはシックス・ネーションズとTRCの10カ国に加え、それ以外の世界ランキング上位2チーム(日本とフィジー)の計12カ国・地域で実施される予定です。今年3月にはWRがNC創設を各協会に提案しました。大会フォーマットはシックス・ネーションズを中心とするカンファレンス、SANZAARを中心とするカンファレンスに分かれ、各組1位チームによる決勝戦を行うというものです。日本とフィジーは後者のカンファレンスに属する方向で進められています。
3月にアイルランド・ダブリンで行われたプロ・ゲーム委員会に出席した日本ラグビー協会の坂本典幸専務理事は「日本ラグビー協会としては、世界ランキング上位国との対戦が毎年11試合できることは日本代表の強化に直結すると考え、賛同した。今後、経済効果や様々なメリット、デメリットを勘案しながら、WRや各協会と調整し、日本がこの大会に参加できるよう努力していきたい」と語りました。
WRとしては市場拡大、日本としては強化・収益面でのメリットが期待できます。特に日本はサンウルブズの2021年シーズン以降のSR除外が決まっており、代表強化の貴重な場が失われます。NC創設は日本にとっては渡りに船とも言えるでしょう。
それを受け、サンウルブズでプレーし、W杯でのジャパン入りが期待されるスタンドオフの山沢拓也選手は「間違いなく国としてレベルアップできると思うので実現してほしい」と語りました。大会が実現することで各国のリーグ戦との過密日程を心配する声もありますが、「自分たちがレベルアップするには必要なこと」と前向きな思いを口にしました。
同じくサンウルブズ、ジャパン候補のスクラムハーフ茂野海人選手もNC賛成派の1人です。
「SRを経験して成長している選手はたくさんいます。実現すれば日本にとっていい方向に進んでいくと思います。(日本が除外されるという報道など)ネガティブな情報も出ていますが、そこはしっかり日本として勝ち取ってほしいですね」
茂野選手の言う「ネガティブな情報」とは、NCから日本とフィジーが除かれるかもしれないというものです。これについては、22日に行われたNCの検討委員会に出席した坂本専務理事が「日本とフィジーに競争力が足りないということではない。ただ離れた国が試合をすることで、移動が多くなり選手の負担が増えることを考慮して10チームで行う案が出てきたのは事実」と事情を説明しました。もちろん日本も、ただ傍観していたわけではありません。「アジアで初のW杯が開催され、ラグビーのマーケットが拡大するチャンス」と説明し、12チームベースでの運営を主張したようです。
ただし、結論が出るのはまだ先です。日本が参加するかしないか以前の問題として、NCの成立には飛び越えなければいけないハードルが、まだいくつか残されています。
WRはトップディビジョンを12チームで固定するのではなく昇降格を考えているようです。しかし、これには反対論もあるようです。日本協会はNCが不成立だった場合に備え、TRC加入に向けてSANZAARとの交渉も並行して進める方針です。
坂本専務理事は「今後は数カ月、各協会と話し合いを進めていきたい。いつまでという期限が示されたわけではない。先延ばしにはできない」と述べています。あと4カ月と迫ったW杯日本大会開幕までには結論が出そうな見通しです。日本協会の交渉力が問われます。
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