97対0――。衝撃的な数字が神戸総合運動公園ユニバー記念競技場のスコアボードに刻まれました。2日、神戸製鋼コベルコスティーラーズがNTTドコモレッドハリケーンズ相手に記録した97得点はトップリーグ(TL)史上歴代2位、97点差は歴代最多でした。
連覇を狙う王者と2部に相当するトップチャレンジリーグから昇格したチームの力量差は想定以上でした。
試合を振り返りましょう。前半8分、神戸製鋼のウイング山下楽平選手のトライが大量得点の狼煙でした。神戸製鋼は前半だけでナンバーエイトのタウムア・ナエアタ選手がハットトリックを達成するなど、6トライ5ゴールをあげ、40対0で試合を折り返しました。
後半に入っても神戸製鋼は攻撃の手を緩めません。ナエアタ選手のノーホイッスルトライを皮切りに、フランカーのブロディ・マクカラン選手、ロックのブロディ・レタリック選手、センターのラファエレ・ティモシー選手などが次々にトライを重ね、気がつくと90対0。ここでホーンが鳴り響きます。なおも攻める神戸製鋼は、ウイングのアタアタ・モエアキオラ選手がインゴールに飛び込み、この日15本目のトライ。途中出場のスタンドオフ清水晶大選手がコンバージョンキックを決め、終わってみればスコアは97対0。記録ずくめの圧勝でした。
神戸製鋼のデーブ・ディロンヘッドコーチ(HC)は試合後、涼しげな表情でこう語りました。
「チームがどれだけ80分間プレーに集中できるか、常にアタックし続けることを考えている。スタッフを含めた選手たちは最後まで気持ちを切らさずプレーした」
一方、敗れたNTTドコモのマイケル・ブリューワーHCは「日本一強いチームに好きなようにやられた」と言って肩を落としました。
今月9日に放送されたTBS系列の情報番組サンデーモーニングでは、野球評論家の張本勲さんから「喝」が飛び出しました。
「90点台というのはラグビーでありますが、(得点)ゼロはね……。やっぱり途中であきらめちゃだめだよ。ファンも見ているんだから」
門外漢の意見、と切って捨てるわけにはいきません。
というのも、日本ラグビーには大量失点に関する苦い記憶があるからです。17対145。1995年W杯南アフリカ大会での対ニュージーランド戦のスコアです。ジャパンが記録した17得点は覚えていなくても145失点はよく覚えている、という読者は少なくないはずです。ラグビー人気凋落のきっかけとなった試合とも言われています。
この試合、スタメンで起用されたスクラムハーフの村田亙さんは「試合が始まってから5分までは覚えています」と語っていました。残り75分は「頭が真っ白だった」というのです。今回のNTTドコモの選手たちもそんな心境だったかもしれません。
TLは第4節を終了し、観客動員数が計35万5000人を超えるなど好調に推移しています。好試合が続いていただけに、NTTドコモが一矢も報えなかったのは残念でした。もちろん、選手たちは必死にプレーしています。ラグビーは気合いや意地だけではどうにもならない試合があります。おそらくNTTドコモの選手たちは80分間、皮肉にもハリケーンの渦に巻き込まれ続けた心境だったのではないでしょうか。
折しも日本ラグビー協会は、21年秋スタート予定の新リーグの参入要件を発表しました。各チームにはホームエリアの決定とホームスタジアムの確保が求められています。プロ野球やサッカーJリーグのようなホーム&アウェー方式が導入されれば、ファンやサポーターの目も厳しくなります。TLのチームには、観客のいま以上に温かくも厳しい視線が必要です。
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