二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2019年8月22日(木)更新

W杯で地域振興と国際交流を
キャンプ地自治体、期待と不満

 ラグビーW杯日本大会開幕まで、残り1カ月を切りました。大会チケットの売上枚数は販売予定の8割を超えるなど、売れ行きは好調のようです。大会組織委員会はチケット収入見込みを260億円から290億円に上方修正しました。しかし、その一方でキャンプ地を提供する自治体では不満もくすぶっています。

大会認知度77%

 ラグビーW杯は夏季オリンピック、サッカーW杯に次ぐスポーツの3大イベントのひとつとされています。ラグビーファンは他競技のファンに比べ富裕層が多く、大会開催期間が約1カ月半に及ぶため、経済効果は4327億円(組織委)にのぼると見られています。

 7月に組織委が発表した大会認知度は77.4%。前回の調査より5.8%アップしました。それを受け、嶋津昭事務総長はこうコメントしました。

「大会認知度が77%と着実に上がっていることは、改めて身が引き締まる思いです。特に若い女性の認知度が高まっていることは非常に喜ばしいことです。これまでラグビーにあまり触れたことのない層へも認知が広がりつつあることを示しており、日本全体の機運の高まりを肌で感じています」

 さて1次リーグでジャパンと戦うアイルランド代表にはスタンドオフのジョナサン・セクストン選手、スコットランド代表にはスクラムハーフのグレイグ・レイドロー選手という世界的なスタープレーヤーがいます。その他にもニュージーランド代表スタンドオフのボーデン・バレット選手、ナンバーエイトのキアラン・リード選手、オーストラリア代表スクラムハーフのウィル・ゲニア選手、南アフリカ代表フッカーのマルコム・マークス選手、イングランド代表スタンドオフのオーウェン・ファレル選手……。ラグビー界のビッグネームが続々と日本のキャンプ地に集結しますが、果たして彼らのことを知っている日本人がどれだけいるでしょう。もっともっとPRすべきです。

 公認キャンプ地は全国61自治体に及びます。各国代表のスター選手との交流を楽しみにしている人々も多いはずです。しかし、セキュリティーと戦術漏洩を理由に練習を非公開にする可能性があるというのです。キャンプ地のひとつである北海道網走市は、フィジー代表を招致しました。ところが組織委が公認キャンプ地の日程を原則非公開としているため、網走市は詳細な日程をオープンにすることができません。

“永遠のレガシー”に

<市内のホテルも「盛り上がり」を欠く状況だ。8月から9月にかけての予約はほぼ例年並みで、まだ十分な空きがあり、期待された「ラグビー特需」からはほど遠いという。網走市ラグビーフットボール協会の大林晃会長は「戦術の関係もあるので仕方のない面もあるが、せっかく網走に合宿に来るのだから、市民には興味を持ってもらいたい」と話している>(「北海道新聞」2019年8月1日付)

 ラグビーは機密事項の多いスポーツです。組織委がトレーニングに集中できる環境を提供したい、と考えるのは十二分に理解できます。

 しかし、自治体側に立てば、そうはいきません。練習は見せてもらえない、地域住民とも触れ合えない、では何のためにキャンプ地を誘致したのか住民に説明できません。

 サッカーW杯を例にあげましょう。2002年日韓大会において、兵庫県の津名町(淡路島)はイングランド代表のキャンプ地になりました。人口1万7000人のまちが“ベッカム・フィーバー”に沸いたのは周知の通りです。“サッカー界のブラピ(ブラッド・ピッド)”と言われた貴公子デビッド・ベッカム選手見たさに連日、多くの女性ファンが詰めかけました。またニワトリのトサカのような“ベッカムヘアー”が若い男性の間で流行したことも記憶に新しいのではないでしょうか。

 イタリア代表のキャンプ地、宮城県仙台市も優勝候補の“アズーリ(イタリア代表の愛称)”の来訪に沸きました。“ローマの王子”フランチェスコ・トッティ選手ら人気と実力を兼ね備えたスター選手を一目見ようと、仙台ユースとの練習試合には約1万8000人が集まりました。03年から10年まで続いた仙台カップ国際ユースサッカー大会は、仙台市でW杯3試合を開催したことに加え、キャンプ地となったことを記念して誕生したものです。

 またカメルーン代表がキャンプを張った大分県の中津江村は、W杯で“日本一有名な村”になりました。坂本休村長(当時)の独特なキャラクターも相まって、大きな話題を呼びました。中津江村はその3年後に日田市と合併しましたが、今でもカメルーンとの交流は続いているそうです。

 ラグビーW杯の大会期間は約1カ月半ですが、キャンプ地と各国代表との国際交流は、その後も続けてほしいものです。<4年に一度じゃない。一生に一度だ。>。大会のキャッチコピーにあやかり、“永遠のレガシー”となることを願ってやみません。

K.Ninomiya二宮清純
                                                 
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