W杯フランス大会開幕まで9カ月を切ろうとしている12月6日(現地時間)、イングランドから代表ヘッドコーチ(HC)、エディー・ジョーンズさんを解任したというニュースが飛び込んできました。暫定でリチャード・コッカリルFWコーチがHCを務めます。次期HCにはスティーブ・ボーズウィックさんの名前があがっています。
解任を受け、エディーさんはイングランドラグビー協会(RFU)のHPに、「イングランド代表として達成してきた多くのことに満足している。今後のチームのパフォーマンスを楽しみにしています」とのコメントを寄せました。もちろん、内心は複雑でしょう。
折しも、今はサッカーW杯カタール大会の真っ只中。イングランドは準々決勝に進出しています。10日にはベスト4をかけてフランス代表と戦います。このカードはラグビーのフランスW杯でも実現するかもしれません。
エディーさんに話を戻しましょう。解任に至った背景には今シーズンの不振が考えられます。シックスネーションズは2年連続の2勝3敗で3位(昨年は5位)。テストマッチの戦績は5勝1分け6敗とパッとしません。4勝7敗に終わった08年以来の不振です。特にこの秋はW杯フランス大会で同組(プールD)のアルゼンチン代表に13年ぶりの黒星を喫するなど、ホーム4試合で1勝1分け2敗とさっぱりでした。
オーストラリア人のエディーさんは、ジャパンの指揮を執ったW杯イングランド大会後の2015年12月、イングランド初の外国人HCに就任しました。アウトサイダーの日本代表で3勝をあげた手腕が評価されたのです。7年間のテストマッチ戦績は59勝2分け20敗。HC在位期間の勝率ではイングランド歴代最高(73%)をマークしています。シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)を3度制し、そのうち1度はグランドスラム(全勝)。19年W杯日本大会ではチームを3大会ぶりの決勝進出(準優勝)に導きました。
イングランド代表に輝かしいタイトルをもたらし、復活に導いた手腕はRFUのビル・スウィーニーCEOも高く評価しています。にもかかわらず解任されたのは、RFUが「今後の“伸びしろ”がない」と判断したからでしょう。
イギリス国内のメディアは、総じてエディーさんには厳しいものでした。
<2019年ワールドカップ決勝で敗れて以来、エディー・ジョーンズにとっては下り坂だった>(デイリー・メールオンライン)
<マジシャンからはみ出し者へ>(ガーディアン電子版)
ガーディアンの記事を書いたロバート・キットソンさんは2016年と17年のシーズンのエディーさんの手腕は「オズの魔法使い」のようだった、と評価しています。エディーさんがテストマッチで18連勝したのは偶然ではなかったとも。「彼はラグビーの裏も面も知り尽くしており、今でも優れたテクニシャンである」。99年からガーディアンのラグビー記事を担当しているキットソンさんの論評を読むと、必ずしもエディーさんの手腕に否定的ではないことが窺えます。
にもかかわらずRFUは、なぜ解任に踏み切ったのでしょう。
キットソンさんはRFUが「コアなファンのラグビーへの幻滅と無関心の増大」を危惧したからではないか、と見ています。オーストラリア人のエディーさんが、異国のイングランドで支持を得続けるためには、結果を出し続けるより他ありません。それが途切れた時には、残念ながらこういう事態が待っているということでしょう。
再びサッカーに目を転じると、今回のカタールW杯、2010年南アフリカ大会の優勝国スペインをPK戦の末に下して、同国初のベスト8進出を決めたモロッコは、本大会3カ月前の今年8月、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を更迭し、ワレド・レグラギさんに指揮を委ねました。ギリギリのタイミングでの決断が吉と出たと言えるでしょう。
このように指揮官の交代は、本大会の結果を見ないことには、正解だったとも誤りだったとも言えません。果たしてイングランドの場合は? それは神のみぞ知るところです。
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