二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2018年12月20日(木)更新

ジャパンへの登竜門・TL新人賞
トライゲッター岡田優輝の「嗅覚」

 ジャパントップリーグ兼日本選手権決勝終了翌日の12月16日、トップリーグの年間表彰式が開催されました。MVPは神戸製鋼コベルコスティーラーズ2冠の立役者ダン・カーター選手、そして新人賞にはトヨタ自動車ヴェルブリッツのウイング岡田優輝選手が選ばれました。

「この賞を自信に」

「今シーズンは僕を含め、新人の選手が多く試合に出場し、また活躍しているなかで、このような素晴らしい賞をいただけて本当に光栄に思っております。これを自信に変えて、次のシーズンへ向けてまた突っ走っていきたいです」

 突っ走っていきたい、との若武者らしいセリフに好感を覚えました。今季、リーグ戦全7試合に出場し、2位タイの7トライをあげました。総合順位決定トーナメント3試合も全てピッチに立ち、トヨタ自動車のベスト4に貢献しました。今季はジャパンにも選出された梶村祐介選手、堀越康介選手(ともにサントリーサンゴリアス)らがおり、例年に比べてもレベルの高い新人賞争いでした。

 2003年にスタートしたトップリーグは、今年で16回を数えました。これまで新人賞に輝いた選手は17人(13-14シーズンは2人選出)います。歴代の受賞者には昨季の姫野和樹選手の他、リーチ・マイケル選手、田中史朗選手らジャパンの中核を担うメンバーがズラリと並んでいます。17人中ジャパンのキャップ保持者は13人。ルーキーシーズンに初キャップを刻んだ者もいます。その意味ではジャパンへの登竜門と言っていいでしょう。

 所属のトヨタ自動車からは姫野選手に続き2季連続の選出です。姫野選手は「この賞をいただいて、自信を得ることができました。その自信によってラグビーでのびのびプレーすることにつながり、成長したと感じています」と語っていました。姫野選手は、今年のテストマッチ全6試合に出場するなど、今やジャパンの主力でもあります。

 トヨタ自動車のジェイク・ホワイト監督は若手の登用に積極的です。昨季は新人の姫野選手を主将に抜擢しました。今季も開幕戦で岡田選手を含めたルーキー4人をスタメンで起用しました。

 ホワイト監督は07年W杯フランス大会で南アフリカ代表を優勝に導いた名将で、04年と07年にはIRB(現ワールドラグビー)の年間最優秀コーチ賞を受賞しています。その名伯楽の目に岡田選手はどう映っているのでしょう。

チームを救った好判断

「センターもウイングでもきる非常に良い選手です。今まで多くのバックスを指導してきましたが、その中でも彼は突出している。ラグビー理解力も非常に高いです。一言で申し上げるなら、次世代の日本のバックスを象徴する選手だと思います」

 これは10月13日に東京・秩父宮ラグビー場で行われた第6節NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦後のホワイト監督のコメントです。

 この試合で岡田選手はハットトリック(3トライ以上)を達成し、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。

 その3トライを振り返りましょう。前半20分、フランカーのシュネル・シンからのパスを受けると、ディフェンスラインの裏をすり抜けました。38分には、パワーを証明しました。敵陣中央を突破し、一度相手に捕まりかけましたが、味方の援護を受けながらインゴールへ雪崩れ込みました。仕上げは後半11分。大外で待ち受けると、プレッシャーをかけてきた相手を冷静にかわし、ハットトリックを達成したのです。

 また岡田選手は守備でも高い能力を発揮しました。後半30分です。38対29とリードの場面。岡田選手は敵が自陣深くに蹴り込んできたボールを背走してキャッチしました。その後の判断にキラリと光るものがありました。相手選手のプレッシャーを受けながらも、ボールを簡単に蹴り出さず、ランを選択してキープしたのです。「あそこをしっかりセーブしたことでトヨタの戦いを助けてくれた」とホワイト監督。試合はかろうじて38対36でトヨタ自動車が逃げ切りました。チームを救った好判断でした。

 岡田選手は帝京大学時代、センターが主なポジションでしたが今季リーグ戦7試合のうち6試合はウイングで起用されました。フィニッシャー役として期待されたのです。岡田選手も「トライを獲ることを意識しました」と語っていました。この試合のテレビ解説を務めていた男子15人制日本代表の薫田真広強化委員長は「トライを獲り切る嗅覚を持っている」と岡田選手を褒めていました。

 現在のジャパンには山田章仁選手、福岡堅樹選手、レメキ・ロマノ・ラヴァ選手ら名うてのウイングが揃っています。岡田選手が彼らからポジションを奪うのは容易ではありません。12月17日に発表されたジャパンのトレーニングスコッドに岡田選手の名前はありませんでした。とはいえ2019年W杯最終スコッド選出の道が完全に閉ざされたわけではありません。薫田強化委員長も「(名前の入っていない選手にも)可能性はある」と語っていました。大学時代はケガに苦しんだ岡田選手。その4年間で「諦めないことの大事さを知った」と言います。果たして18-19シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーに吉報は届くのでしょうか。

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