最後のトップリーグ(TL)は、いよいよベスト4が出揃いました。1試合が中止となった準々決勝で最大のサプライズは、初の4強入りを果たしたクボタスピアーズです。2018年度の王者・神戸製鋼コベルコスティーラーズを破る番狂わせを演じました。敗れた神戸製鋼はTLにおいて2017年12月以来の黒星(カップ戦を除く)でした。
「新しい歴史を刻んでいる」
試合後、初のベスト4進出を決めたクボタの立川理道キャプテンは、そう言って胸を張りました。
1978年に社内の同好会からスタートしたクボタは、これまでTL6位が最高で10年前にはトップイースト(当時2部相当)にいたチームです。一方の神戸製鋼は言わずと知れた社会人屈指の強豪。日本選手権では1988年度から7連覇を達成するなど、歴代最多10度の優勝を誇ります。TLの前身にあたる全国社会人大会は9度優勝しています。2003年度にスタートしたTLでも初代王者に輝くなど、2度の優勝を果たしています。
試合を振り返りましょう。先制したのはクボタです。前半3分にナンバーエイトのバツベイシオネ選手、9分にはウイングのタウモハパイホネティ選手がトライをあげ、17対0とリードを広げました。
ところが29分、クボタに衝撃が走ります。スタンドオフのバーナード・フォーリー選手がナンバーエイトのナエアタルイ選手に対する危険なタックルにより、一発退場に。今季リーグ戦10トライをあげた“フィジカルモンスター”の突進を止めようという意識が空回りしたのか、タックルが高く入ってしまいました。これにより、1人少ない状況で神戸製鋼の反撃に耐えなければならなくなったのです。オーストラリア代表71キャップを誇る司令塔の不在は、チームの苦境を予感させました。
しかし、クボタは驚くべき忍耐力を発揮します。37分、ナエアタ選手にインゴール目前まで迫られましたが、ホネティ選手が横から強烈なタックルを見舞いました。あまりの迫力にナエアタ選手はノックオン。その激しい攻防に、戸田京介レフリーが「シビれるね」と感嘆の声を発したほどでした。
17対7のリードで前半を終えたクボタは、その後も14人のハードワークで数的不利を感じさせない戦いを見せます。後半21分にはPGで3点を追加し、20対7とリードを広げました。
もちろん神戸製鋼もこのまま黙ってはいません。23分にスクラムハーフ日和佐篤選手がトライを奪って反撃開始。31分、ウイング山下楽平選手のトライで1点差に迫ると、スタンドオフのアーロン・クルーデン選手がコンバージョンキックを決め、21対20と試合をひっくり返しました。
それでもクボタは動じません。34分には南アフリカ代表フッカーのマルコム・マークス選手、日本代表フランカーのピーター・ラピース・ラブフスカフニ選手ら強力FW陣が、敵陣右でのラインアウトからモールを組んで前進しました。これが神戸製鋼のコラプシング(スクラムやモールを故意に崩す反則)を誘い、ペナルティーを獲得したのです。PGを落ち着いてウイングのゲラード・ファンデンヒーファー選手が決め、23対21と再びリードを奪いました。残り時間もしっかりとボールをキープし、神戸製鋼の再逆転を許しません。最後は立川選手がボールを外に蹴り出し、ノーサイド。
試合後、フラン・ルディケヘッドコーチ(HC)は会心の表情でこう振り返りました。
「全員が同じ絵を見ていたと思います。(イエローカードで一時2人数的不利となった)トヨタ(自動車ヴェルブリッツ)戦からもどうやればいいか、立川をはじめコーチ陣もわかっていたので、そんなにおおごとという感じではなかった。(ハーフタイムには)1、2点のキーポイントだけを伝えた。ボールコントロールのこと、ワークレートのところをお互いに助け合ってしっかり動くこと。それをしっかり立川たちがコントロールしてくれました」
指揮官の言う「全員が同じ絵を見ていた」とは、今季のクボタの戦いぶりを象徴する言葉と言えるでしょう。立川選手も2月27日に行われたTL第2節の東芝ブレイブルーパス戦後、チームの好調ぶりについて問われ、同じような答え方をしていました。
「スクラム、モールで相手をコントロールできているのが武器になっていますが、キックカウンターからのトライもとることができました。自分たちの役割を理解し、全員が動くことができています。チャンスがあればどこからでも仕掛けていくことができるのが今年のチームの特徴。みんなが同じ絵を見ることができています」
それにしても「同じ絵」とは、いい言葉です。「同じ夢」と言い換えてもいいかもしれません。準決勝の相手は本命のサントリーサンゴリアスです。
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