日本ラグビーフットボール協会は1月28日、都内で記者ブリーフィングを行い、2021年秋にスタートする新リーグの概要を発表しました。新リーグは1部、2部ともに8~12チームで構成され、昇降格制度も導入される見通しです。
1月12日に開幕した今季のトップリーグは、ジャパンが初のベスト8進出を果たしたW杯日本大会の追い風を受け、順調に観客動員数を伸ばしています。3節終了時点では29万5332人。昨年の17万2735人を大きく上回る盛況ぶりです。
そんな中、新リーグ創設の意図を岩渕健輔専務理事はこう説明しました。
「2015年W杯後のシーズンは非常に多くのお客さんに入っていただいた。しかし、次のシーズン以降も観客動員が右肩上がりというわけにはいかなかった。今シーズンもW杯の影響で昨季の第3節までと比べると2倍近いお客さんが入っている。一方で来シーズン以降のトップリーグがそのままでいられるのかというと、必ずしもそんなことはない。少子化などいろいろな外的要因もあり、ラグビーが置かれている環境は非常に厳しいものであるというのがラグビー協会の認識です」
今のトップリーグの活況は、あくまでも一時的なもの。持続的な発展を遂げるには、新リーグを立ち上げるしかないとの岩渕専務理事の認識は全く正しいように思われます。
協会は新リーグ創設を「迅速に進めるため」(岩渕専務理事)、今月ふたつの準備室設置を決めました。ひとつは法人準備室、もうひとつはマーケティング会社設立準備室。前者は谷口真由美理事、後者は清宮克幸副会長が室長を務めます。
参入要件の骨子のひとつとして<各参加団体は事業機能を持つこと>という事項が明記されました。<事業機能とは、チーム運営・収益事業すべての責任者となる事業責任者の設置、収支の透明化、主催興行(収益事業)体制の整備を言う。事業計画の策定をすること>。昨年7月に発表した新リーグ構想では分社化、すなわち独立採算制への移行が参入要件に盛り込まれる予定だっただけに、トーンダウンした印象は否めません。
推測するに、いわゆるプロ化に対する企業側のアレルギーが想定していた以上に強かったということでしょう。これまでの企業スポーツの枠組みを維持しつつ、運営やマーケティングについては、随時見直しを図るというスキームです。その点について、谷口理事は「ラグビーならではの多様性、緩さでいいんじゃないかという結論に至りました」と語り、こう抱負を述べました。「あらゆる可能性を模索していきたい。どの形態が良いのか、プロという言葉をひとり歩きさせるのは得策ではないと思っています」
一方でサッカーのJリーグ、バスケットのBリーグが基本理念とする「地域密着」へのこだわりは、新リーグにおいてもホームエリアの確定やホームスタジアムの確保、あるいは地域名を含むチーム名称――などの参入要件から見てとることができます。
また1部リーグに対しては、1試合あたり1万5000人の観客動員数という高い目標が設定されました。そのためには1万5000人以上のスタジアムを確保する必要があります。
近年、プロスポーツの主流はファシリティです。魅力的なスタジアム、アリーナが観客を引き寄せ、飲食や物販などで稼ぐというものです。いくらゲームの中身が良くても、スタンドがガラガラでは売り上げは伸びません。スポンサーも広告的価値を見出せないでしょう。放送事業者も権利獲得に二の足を踏むに違いありません。
よく日本人は熱しやすく、冷めやすいと言われます。追い風が吹いている今だからこそ、高々と帆を掲げ、未来に向かって突き進んでもらいたいものです。
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