トップリーグ時代からしのぎを削ってきた両雄の激突とあって、3月11日、東京・秩父宮ラグビー場には今季リーグワン最多の1万9079人の観客が詰め掛けましたが、終わってみれば41対29。昨季のリーグワン王者・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)が東京サントリーサンゴリアス(東京SG)に逆転勝ちを収めました。
試合後の会見で、埼玉WKのロビー・ディーンズ監督は「選手たちがハードワークしたからこその結果。(チームには)レジリエンスがあった。苦しい時間を耐え、プレッシャーに対してもどう立ち向かうのかが感じられた」と選手たちを称えました。私が注目したのは「レジリエンス」という言葉です。これは主に「回復力」や「弾性」を意味します。
近年は「ナショナル・レジリエンス」なる言葉も目につきます。
<国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)、防災・減災の取組みは、国家のリスクマネジメントであり、強くてしなやかな国をつくることです。また、日本の産業競争力の強化であり、安全・安心な生活づくりであり、それを実現する人の力を創ることです。国民の命と財産を守り抜きます>(内閣官房HP)
この国には、古くから「柳に雪折れなし」という格言があります。堅い木や枝は、一見、強そうに見えますが、実は風雪に弱く、ポキッと折れてしまう。ところが、柳の枝はよくしなるので、強風にあおられようが、枝の上に雪が降り積もろうが、簡単に折れることはないという意味です。
ラグビーにおいても同様のことが言えます。前後半の80分、全ての時間を支配することは不可能です。予期せぬ反則で流れを失うこともあれば、選手の故障など思わぬアクシデントに見舞われることもあるでしょう。
そうした想定外の事態が発生しても、うまく適応し、粘り強く闘い抜く。まさしく柳の枝のような、しなやかさと、ある種のしたたかさを併せ持つのが、本当の意味での強いチームと言えるのかもしれません。
埼玉WKが「レジリエンス」を示したのが後半15分でした。17対24と7点差に迫った場面、東京SGに攻められながらも堅いディフェンスでしのぎます。苦境を脱すると、ハーフウェイライン付近で東京SGセンター中村亮土選手のパスをセンターのディラン・ライリー選手がインターセプト。そのまま抜け出し、ゴールポスト中央に飛び込ました。スタンドオフ松田力也選手がコンバージョンキックを決め、24対24の同点に。その後の逆転劇につながるビッグプレーでした。
最終スコアこそ41対29でしたが、前半だけ見れば埼玉WKは3対17と苦しい内容でした。序盤から東京SGの素早いパス回しに手を焼き、前半4分に先制トライを許しました。18分にはウイング野口竜司選手が自陣深くで反則を犯し、イエローカード&ペナルティトライ(7点)。流れは完全に東京SGにありました。
それでも、埼玉WKは大崩れせず、持ちこたえます。試合後、埼玉WKのキャプテン坂手淳史選手は、こう振り返りました。
「サンゴリアスさんは前半、いいアタック、いいディフェンスをしてきた。“ただ、どこかで足が止まるぞ”とハーフタイムで話しました。自分たちは自分たちの仕事をする。それを楽しみたい。こういうゲームを待っていました」
こういうゲームを待っていた、とは味のあるコメントです。
「プレッシャーを感じるゲームが自分たちにとっては必要。こういった局面にも焦らず、自分たちのラグビーをやり続けられるかどうか……」
苦境すら楽しんでいるのだから、大したものです。今の埼玉WKに死角はなさそうです。
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