2024-25シーズンの開幕を前に、リーグワンは今季からの期限付き移籍(レンタル移籍)制度の導入を発表しました。<チームにとっての選手活用機会、および、選手にとっての活躍機会を増やし、シーズン中の戦術的補完や、ケガ等での選手不足による試合不成立の回避を実現する>(プレスリリース12月3日配信)ことが目的です。
レンタル移籍とはいっても、人数には制限があります。1シーズンにおける1チームの受け入れ人数は最大3人まで。シーズン終盤の4月以降は1人以内(それまでの選手受け入れが2名に満たない場合も)です。もっともレンタル移籍には<両チームの合意>が前提となります。
レンタル移籍の対象者にカテゴリーやポジション、年齢、出場試合数などの制限はありません。
ラグビーはケガと隣り合わせのスポーツです。この新制度には「選手の出場機会を増やす。チームの視点ではケガ人などが発生した場合にその部分を補う」(リーグワン東海林一専務理事)メリットがありそうです。
選手の声をいくつか紹介しましょう。
「すごく面白い(試み)です。今季、リーグワンで楽しみなことのひとつ。自分たちの選手がどこに行くか。いい選手はたくさんいます。誰が一番はじめに移籍するかも注目です。(もし迎え入れることになれば)いろいろコミュニケーションを取っていきたい。自分がレンタルされるかもしれないけど」(東芝ブレイブルーパス東京のリーチマイケル選手)
「プロスポーツ化が進んでいるというイメージを抱いています。チームスポーツではありますが、まずは試合に出てパフォーマンスで示すことがラグビー選手としての役割。出場機会を求めることは大事ですし、チームで埋もれてしまっていても、ファンの方がプレーを見たい選手はいるはず。(期限付き移籍の導入は)とてもいい機会だと思います」(浦安D-Rocksの竹内柊平選手)
「選手は今までだったら(ケガなどの理由がなく)試合に出られない時、そのチームで頑張り続けるしかなかった。自分が必要とされる場所に行けるというのは、選手にとっていいことだと思います」(三菱重工相模原ダイナボアーズの鶴谷昌隆選手)
新制度を歓迎する意見がほとんどで、ネガティブな声は聞かれませんでした。
レンタル移籍制度には、既に成功例があります。1993年にスタートしたJリーグです。翌94年から、この制度を導入しました。
主な目的は選手の育成にありました。どんなにポテンシャルを秘めた選手でも、試合に出られなければ成長しません。
といって完全移籍の場合、移籍金はクラブに入るものの、将来有望な人的資源を失うことになります。
そこで活用されるのが期限付き移籍制度です。活躍の場が与えられることで選手は成長し、後に派遣元は大きな利益を得ることができます。サカナにたとえれば、イナダをブリにして返してもらうようなものです。
一方、移籍先にもメリットがあります。資金難のクラブにとって、移籍金ゼロは大きな魅力です。期間限定といえども、移ってきた選手が活躍してくれれば、クラブにとっては大助かりです。
近年の成功例を2つほど紹介しましょう。
ひとつは現在、J3のアスルクラロ沼津に所属しているFWの齋藤学選手。
8歳で横浜F・マリノスの下部組織に入り、高校3年時にJリーグデビューを果たしました。だが、伸び悩み、リーグ戦3シーズンで1点も取ることができませんでした。
ところが、11年にJ2の愛媛FCにレンタル移籍すると、14得点をあげ“愛媛のメッシ”と呼ばれるまでになりました。
翌12シーズンに古巣に戻り、12年ロンドン五輪、14年ブラジルW杯で代表のメンバー入りを果たしました。
現在、森保ジャパンのセンターバックとして活躍するDF板倉滉選手は、川崎フロンターレユースから15年にトップチームに昇格したものの、タレント揃いのチームにあってレギュラーの座を確保することはできませんでした。
ブレークしたのは18年、J1のベガルタ仙台にレンタル移籍してからです。19年からはヨーロッパを主戦場とするようになり、W杯優勝4回のドイツと同1回のスペインを破った22年カタールW杯でも活躍しました。
大胆に言ってしまえば、選手は“試合に出てナンボ”です。ベンチに座っているだけでは上達しません。レンタル移籍制度導入による人材の流動化は、日本ラグビー全体のレベルアップに大きく資するものだと考えます。
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