新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、日本ラグビー協会は4月2日、トップリーグ(TL)に続き、日本選手権の中止を決定しました。今なお先が見えない不透明な状況下、選手やコーチ、そしてフロントはどうしているのでしょう。今回はTLの強豪・パナソニック ワイルドナイツの飯島均GMに話を聞きました。
――今季のTLでパナソニックは第6節まで全勝と好調で、トップに立っていました。
飯島均:TLが延期になった時点でニュージーランドのサム・ホワイトロックやオーストラリアのデービッド・ポーコックなどの外国人選手については国から帰国要請があり、約半数は帰国しました。
――帰国を選択しない選手もいたのでしょうか?
飯島:はい。国によって対応は様々です。外国人選手の中にはベン・ガンターやディラン・ライリーら将来、日本代表になりたいというモチベーションを持っている者もいます。本人とヒアリングをした上で日本に残るよう指示しました。なぜならラグビーの代表資格を得るためには、継続居住期間(3年以上。2020年12月31日以降は5年以上)の条件を満たさないといけない。ここで一度帰国してしまうと、それまでの期間が無駄になってしまいかねない。
――5月に開催予定だった日本選手権は、帰国した外国人選手抜きで臨むつもりだったのでしょうか?
飯島:いえ、そうではありません。帰国した選手たちも戻ってこられる者は再合流する予定でした。当初のスケジュールでは5月の1週目から日本選手権が始まる予定だったので、一部の選手は自主トレーニングにとどめ、4月の中旬まではチームトレーニングをしないでおこうという判断でした。
――まずは感染リスクを減らそうと。
飯島:そうです。どのくらい感染が広がるのかわからなかったですからね。10年前、私は監督として新型インフルエンザの流行を経験しています。1月のTLプレーオフの決勝は、粒揃いのメンバーでした。ところが、メンバーが決まった翌日からキャプテンの霜村(誠一)が新型インフルエンザに感染してしまった。ラグビーは練習でも激しくボディコンタクトをし、スクラムも組む。その結果、あっという間にチームの約3分の1が感染してしまいました。決勝のメンバーは当初の予定から半分くらい替えて、臨むことになりました。結局、東芝ブレイブルーパスに0対6で負けた苦い思い出があります。
――ラグビーにおいて“濃厚接触”は避けられません。
飯島:その通りです。ラグビーは球技の中でも、“超濃厚接触”と呼べるシチュエーションがどうしても多くなってしまいます。感染した1人がチーム練習に参加すると、あっという間にチームに広がる恐れがあります。プレーで体を密着させますし、ピッチ上では選手間で大きな声を出し合い、コミュニケーションを取りますからね。
――4月2日には日本選手権の中止が発表され、7日には政府から緊急事態宣言が発令されました。
飯島:ワイルドナイツの本拠地は群馬県太田市にあり、宣言の対象となる7都府県には該当しません。それでもチームとしては、選手・スタッフの健康管理をきちんと行う必要があります。熱を測るなど体調管理を徹底する。また、どういう行動をしていたかをチームとして把握する。緊急事態宣言の対象となる都府県へ行ったかどうかについても調べます。
――では確認して問題なかった場合、チームのトレーニング場を開放して個人練習を許可する予定ですか?
飯島:その予定です。それがいつになるかはわかりませんが、今はクラブハウスを閉め、数週間後を目安に健康管理、行動管理をして判断したい。トレーニング場にしても、一度に3人以上は入れないようにしたり、フィットネスバイクは屋外で使えるようにするなど工夫をしていきたい。チームとしては時間と空間をマネジメントし、密にならないように注意していきたいと考えています。
――異例のシーズンとなり、給与の補償など難しい問題も出てきます。
飯島:何しろ前例のないことですから、契約上グレーゾーンのところも出てくるかもしれません。ただ契約書の条文通りに事を進めればいいというわけではありません。大変な時期ではありますが、各選手ときちんと話し合うことで信頼関係を深めていく機会にしたいですね。
――チームとしては、この困難にどう向き合うつもりでしょう?
飯島:まずは感染を広げないことが第一です。その中で選手たちの体力を含め、チーム力をどれだけ維持していくか。活動が再開できたとしても、試合でプレーできるようになるまで、あと1年はかかる、なんてことは避けたい。今回のような状況は、これまで経験したことがない。ただ、こういった苦難は、自分たちのカルチャーや本質、価値を試してもいる。スポーツやラグビーは昨年のW杯のように日本をひとつにできるところがある。私たちも日本が一致団結するために、できることがあれば何でもやっていきたいと思っています。
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