日本ラグビー協会は先月24日、昨年のW杯日本大会の「開催後経済効果分析レポート」および「大会成果分析レポート」を公表しました。国全体を対象とした経済波及効果は大会前に試算した4372億円を上回り、前回2015年のイングランド大会の約2倍にあたる6464億円を記録しました。
もしラグビーW杯日本大会が2019年ではなく2020年だったら……。新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにより、よくて延期、場合によっては中止になっていたことでしょう。
W杯日本大会組織委員会のある幹部は「オリンピック、パラリンピックの関係者には申し訳ないが……」と前置きして、こう話しました。
「W杯が今年だったらと考えると背筋が寒くなります。9月の開催はまず不可能でしょうね。ヨーロッパは既にパンデミックの様相を呈し、南半球の国は、これから感染が拡大すると見られている。国民の期待の高いオリンピックだから、国民の多くが延期を支持したが、馴染みの薄いラグビーW杯の場合、仮にこちらが延期を持ち出したところで、国民が支持してくれたかどうか。国際競技団体のワールドラグビー(WR)も、延期してまで日本でW杯を開催しようと熱意を示してくれたかどうか。これは正直言ってわからないですね」
アジアで初のラグビーW杯、開幕前には、「黒字にするのは難しい」と悲観的な見方が大勢を占めていました。というのも、放映権料やスポンサー収入など重要な収入源の多くはWRが抑えていたからです。
組織委が黒字にするにはチケット収入に頼らざるを得ない状況でした。チケット収入とはいっても、トップリーグの年間観客動員数は45~50万人程度。その何割かは企業が買い取っているような状況でした。
しかし、そんな心配は杞憂に終わりました。黒字の立役者は、もちろん史上初のベスト8進出を果たした我らがジャパンでした。ジャパンの5試合の総入場者数は24万9750人。チケットは全て完売でした。
それだけではありません。大会を通じたチケット完売率は過去最高の99%。チケット収入は389億円を記録し、これが牽引役となって68億円の黒字を計上しました。
レポートではファンを「コアファン」、「非コアファン」、「海外ファン」の3つに分類しています。その中でチケットの売り上げに最も貢献したのが「コアファン」でした。<彼らはチケット販売だけでなく、国におけるラグビー観戦の普及といった点においても、RWC2019の成功を大きくサポートしたと言えるでしょう>と総括しています。
おエライさんの総評にも耳を傾けましょう。まずはWRのビル・ボーモント会長です。
「この総合的なレポートの結果で、2019年の日本大会がオン・ザ・フィールドとオフ・ザ・フィールドの両方で際立ったラグビーW杯の一つであったことが再認識できます。レポートでは、ラグビーW杯が、最も愛され、開催するにあたっても最も名誉ある大規模スポーツイベントの一つであることが示されつつ、開催への投資を行う国の政府や協会にとって魅力的なローリスク・ハイリターンである大会の、社会や経済への大きなメリットも浮かび上がっています」
「ローリスク・ハイリターン」とは今後に向けての実に巧みなセールストークです。
続いては組織委の事務総長を務めた嶋津昭さんです。
「ラグビーW杯日本大会は、多くの人にとって永く記憶されるであろう素晴らしい大会となりました。日本全国12の開催都市で繰り広げられた熱戦に、世界中のラグビーファンが注目し、日本中が夢中になりました。特に各開催都市でのスタジアム周辺、ファンゾーンの盛り上がりは驚くべきものでした。これは12会場19自治体の皆様に主催者意識を持って取り組んでいただいた結果だと考えています」
嶋津さんが述べたように多くのファンで埋まったのは、スタジアムだけではありません。全国12都市16会場に設けられたファンゾーンには、のべ113万7288人が集まりました。
日本のスポーツ界は2019年から2021年までの3年間を、スポーツのゴールデン・スポーツイヤーズと位置付けています。2019年がラグビーW杯日本大会、2020年が東京オリンピック・パラリンピック、そして2021年が関西ワールドマスターズゲームズ……。ラグビーW杯の成功で勢いがついたと思われたのですが、まさかまさかのコロナ禍です。今は1日も早いワクチン、治療薬の登場に期待するしかありません。
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