ラグビーは「W杯まで」ではありません。「W杯から」が本番です。7月28日、東京・日経ホールで「SPORTS X Conference2019」が開催されました。多くの報道陣が詰めかけたシンポジウムに私はモデレーターとして参加しました。日本ラグビーフットボール協会の清宮克幸副会長、境田正樹理事、谷口真由美理事と「日本ラグビーの未来」について語り合いました。
日本ラグビーの成長戦略を担う「イノベーションプロジェクトチーム」は今年7月に発足しました。リーダーを務めるのは清宮副会長です。メンバーには境田理事、谷口理事などが名を連ねています。
弁護士の境田理事は、JリーグとBリーグの生みの親である川淵三郎さんの下でバスケットボール界を改革し、Bリーグを軌道に乗せた功労者のひとりです。周知のようにBリーグはJリーグのガバナンスやビジネスモデルを手本にしています。ラグビーの新リーグがこれらをベースにするのであれば手間は省けるでしょう。言葉は悪いですがラグビー界は“いいとこ取り”をすればいいのです。すなわち「後発者優位」です。
それについて、清宮副会長はこう語っています。
「もちろんそのつもりです。今見て“いいな”と思うことは全部やります」
私はイノベーションチームのメンバーとの議論を通じ、ラグビーには豊富な「資源」があることが理解できました。物的資源、人的資源、文化的資源……。しかし、これらが「資産」になっていませんでした。すなわち経済的価値、社会的価値、生活的価値を生み出すまでには至っていなかったのです。
以下は私のコラムからの引用です。
<「資源」を「資産」に――。ラグビーの価値そのものが向上しなければ、トップリーグを一新する「ピカピカのプロ化」も地球儀を俯瞰しての国際化も絵に描いたモチに終わってしまう>(「スポーツニッポン」2019年7月31日付)
新リーグに参加するには、当然のことながら「資格」が必要になります。財務面などを精査した上でのクラブライセンス、法人格の取得、ホームスタジアムの保有などが条件になると思われます。
ただし、サッカーやバスケットに比べ、ラグビーは試合数が少ない上に保有する選手の数が多く、こうしたハードルを乗り越えなければいけません。すなわちリーグやチームの“稼ぐ力”が必要になってくるのです。イノベーションチームが提唱する顧客データをベースにした「デジタルマーケティング」に注目するIT企業は少なくないはずです。
新リーグ成功のカギは課題解決型の「ソーシャル・イノベーション」にあると私は考えています。また、これは企業の投資意欲を促進させる担い手にもなります。
<代表メンバーを見ればわかるようにラグビーは「国籍主義」をとらない。体の大小問わずプレーすることができる。またプレーのベースには常に相手を敬う気持ちがある。互いの違いを認め合う「共生社会」において、いつかラグビーは日本人の“身だしなみ”となる日が来るのではないか>(同前)
ラグビー憲章には「INTEGRITY(品位)」「PASSION(情熱)」「SOLIDARITY(結束)」「DISCIPLINE(規律)」「RESPECT(尊重)」と5つのキーワードが記されています。
「ラグビーをする方はこの5つの原則を大事にしています。あまり細かいルールを決めなくても品位と情熱と結束と規律と尊重という原則をわかっている人がやるスポーツということです」(谷口理事)
イノベーションチームは新リーグが過疎化、いじめ、差別、貧困、社会的排除、キャリアへの不安といった様々な社会課題解決に寄与できると考えています。これもまた「ラグビー力」です。
谷口理事は言います。
「ラグビーが注目されるスポーツになることが大きく言えば、社会変革の第一歩なんだと考えています」
令和をラグビーの時代に――。新リーグの船出は2021年秋になる見通しです。
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