二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2018年12月6日(木)更新

ジャパンの命運握るSO田村優
引き出しの多さで世界に挑む!

 スタンドオフはラグビーにおける花形ポジションです。背番号10はラグビー少年にとって憧れの的です。攻撃の要というより、チームの司令塔といっても過言ではないでしょう。

強いチームの条件

 先日、元日本代表ウイングの吉田義人さんに話を聞きました。

「今も昔も司令塔の存在は大きいですね。そこにスーパースターがいるチームは強い。現在はニュージーランドのボーデン・バレット、アイルランドのジョナサン・セクストンの2人が双璧ですね」

 最新の世界ランキングで1位はニュージーランド、2位はアイルランド。両国は2019年W杯の優勝候補です。吉田さんが名前をあげたバレット選手は16年から年間最優秀選手賞を2年連続で受賞、セクストン選手は今年MVPに輝きました。

 過去においてもW杯優勝チームには名スタンドオフがズラリと並んでいます。代表的なのが、2連覇中のニュージーランドのダン・カーター選手です。今季から神戸製鋼コベルコスティラーズでプレーするレジェンドです。現在は代表を引退していますが、日本でもハイレベルのパフォーマンスで観客を魅了しています。そのほかにも03年にイングランド代表をW杯優勝に導いたキックの名手ジョニー・ウィルキンソンさんも、ラグビー史にその名を刻むスタンドオフです。

 強いチームに名スタンドオフあり――。それは日本でも同じことが言えます。社会人日本選手権でV7を達成した新日鉄釜石と神戸製鋼のスタンドオフと言えば、松尾雄治さん、平尾誠二さん(センターとしても活躍)の顔が浮かんできます。

 ジェイミー・ジョセフHCが率いる現日本代表の背番号10は、キヤノンイーグルスに所属する田村優選手です。19年W杯で決勝トーナメント進出を目指すジャパン。そのキープレーヤーに彼の名を挙げる関係者は少なくありません。

 田村選手の父・誠さんはトヨタ自動車の司令塔として活躍しました。また弟の煕(ひかる)選手もサントリーサンゴリアスのスタンドオフです。実は田村選手がラグビーを始めたのは高校時代からです。中学まではサッカーをやっていたこともあり、キックには光るものがありました。キヤノン、ジャパンでもプレースキッカーを任されています。12年に代表入りし、15年W杯イングランド大会のスコッドにも選ばれました。スタンドオフとしては小野晃征選手、立川理道選手に続く位置にいましたが、その才能は前HCのエディー・ジョーンズさんも高く評価していました。

「才能は抜群」

 田村選手の長所は司令塔としての総合力の高さです。彼自身はパス、キック、ランを選択肢として常に持つことにこだわりを持っています。引き出しの多さは名スタンドオフの条件です。

<「何をしてくるか分からないから相手は迷う。大事にしているのは、どんな状況でも3つのオプションを持ち、そこから最善の手を選ぶこと。それが自分の強みだと思っている」>(『日刊スポーツ』2018年11月14日付)

 パス、キック、ラン。この3つを高いレベルでこなす田村選手は現在29歳です。円熟期を迎えていると言っていいでしょう。今年のテストマッチでも田村選手の持ち味は随所で発揮されました。

 代表的なシーンが2つあります。世界ランキング1位のニュージーランド相手に過去最多5トライ、31得点を記録した試合では、後半12分にウイングのヘンリー・ジェイミー選手のトライをアシストしました。敵陣中央からジェイミー選手が待つ右サイドへと、大きな弧を描くキックパスはワールドクラスの精度を誇るものでした。また逆転勝ちを収めた年内最後のテストマッチ、ロシア代表戦では後半32分に空いたスペースを巧みに突きました。グラバーキック(グラウンダーのキックパス)で、フランカーのリーチ・マイケル選手の決勝トライを演出したのです。

 元日本代表ウイングの大畑大介さんはW杯での田村選手のプレーに大きな期待を寄せる1人です。

「彼はいい時はえげつないほどのプレーをする。正直あれだけのプレーをできる選手は日本にいません。ハマった時の田村がいれば、強豪国を相手にも勝てる力はあります」

 しかし、返す刀で「時々ムラッ気が顔を出すことがある」。それが心配材料だというのです。聖地トゥイッケナムでのイングランド代表戦でも、そんなシーンがありました。前半終了間際のことです。ジャパンが攻撃を重ねていた場面で、ロックのヴィンピー・ファンデルヴァルト選手が田村選手にパスを送りました。ところが田村選手は"よそ見"をしていて、ボールを捕り損ねてしまいます。「時間を確認していた」のがミスの原因です。後半に逆転負けをくらっただけに痛いプレーでした。

 とはいえ、田村選手の活躍を抜きにしてジャパンの躍進はありません。明治大学の監督として2年生の時から彼を3年間指導した吉田さんも「才能は抜群。一番巧いプレーヤー」と、その才能を手放しで褒めていました。ところが吉田さん、明大監督時代には田村選手を試合で使わないことがありました。

「彼が3年生の時です。田村を1年見てきて、"もっと伸びるはず"と感じてゲームで使いませんでした。乗っている時はものすごくいい。しかし、勝負が見えてしまった時に気の入っていないプレーをするんです。僕はムラッ気をなくしていくことで、もっと伸びると思いました。もちろん彼が試合に出るのと出ないのとでは、チーム力は全然違う。だけど学生の時期にしっかりそういうことを知ってもらわないと、将来必ずつぶれてしまうと思ったんです。それで4年生になって絶対的な信頼を勝ち得てレギュラーになった。チームの中心として頑張ってくれました」

 ジャパン躍進のカギを握る「10番」に大きな期待が集まります。

K.Ninomiya二宮清純
2019年12月12日(木)更新
プロ化は「総論賛成、各論反対」
「独裁者」川淵三郎に学ぶ突破力
2019年12月5日(木)更新
「ONE TEAM」がラグビー界初の流行語大賞に
4年前、内定の「五郎丸」が“落選”した理由
2019年11月28日(木)更新
サンウルブズ、日本人首脳陣で発進
世界を相手に“やってみなはれ!”
2019年11月21日(木)更新
清宮副会長が描く「プロリーグ構想」
プロ化のリスクと“しなかった”リスク
2019年11月14日(木)更新
廣瀬俊朗が語る「激闘の44日」
「南アフリカには強い芯があった」
2019年11月7日(木)更新
ラグビー列島と化した44日間
「最も偉大なW杯」の余熱利用
2019年10月31日(木)更新
NZ倒した周到なエディーマジック
イングランド4大会ぶりVなるか
2019年10月24日(木)更新
制空権を握られ、南アに完敗
次なる課題はラインアウト
2019年10月17日(木)更新
加速する“Wフェラーリ”
南アの防御網を切り裂け
2019年10月10日(木)更新
リーチ支えるラピース
「ワンチーム」の輝き
2019年10月3日(木)更新
アイルランド戦勝利の陰の立役者
長谷川慎コーチは“スクラム技師”
2019年9月26日(木)更新
NZ“生ハカ”のど迫力!
和製ハカを作るとしたら
2019年9月19日(木)更新
ラグビー100年の大計
母親、女性を“身内”に
2019年9月12日(木)更新
釜石の成功こそがW杯の成功
松尾雄治、“釜石愛”を語る
2019年9月5日(木)更新
ビールグラスは左手で!
紳士のスポーツのマナー
2019年8月29日(木)更新
トンガはナンバーエイト王国
「神様からの贈り物」マフィ
2019年8月22日(木)更新
W杯で地域振興と国際交流を
キャンプ地自治体、期待と不満
2019年8月15日(木)更新
“ブライトンの奇跡”生んだ
乾坤一擲のサインプレー
2019年8月8日(木)更新
万能型バックス松島幸太朗
世界が驚く「Xファクター」
2019年8月1日(木)更新
ラグビーの「資源」を「資産」に!
ソーシャル・イノベーション計画
2019年7月25日(木)更新
W杯のダークホース・アルゼンチン
「この10年で最も進化したチーム」
2019年7月18日(木)更新
7人制、東京五輪で表彰台へ
猛暑も「備えあれば憂いなし」
2019年7月11日(木)更新
ジャパン、新戦闘服で初陣へ
機能性と視覚効果にこだわり
2019年7月4日(木)更新
ラグビー協会、若返り人事発表
「助さん、格さん」で攻めの改革
2019年6月27日(木)更新
サンウルブズの誤算と収穫
ジャパンとの連携に課題も
2019年6月20日(木)更新
W杯ロシアは縁起のいい相手
暑さを味方に「走らせろ!」
2019年6月13日(木)更新
W杯本番まで100日
宮崎合宿スタート!
2019年6月6日(木)更新
“地獄の宮崎”で
「ワンチーム」に!
2019年5月30日(木)更新
新世界大会実現に向け
試される日本の交渉力
2019年5月23日(木)更新
「鉄と魚とラグビーのまち」
釜石に大漁旗がはためく日
2019年5月16日(木)更新
「足で稼ぐ」松田力也
「田村優に対抗できる」
2019年5月9日(木)更新
三洋電機、TL初優勝秘話
「無口な男」の最後の熱弁
2019年4月26日(金)更新
<ジャパン激闘史④>
ライバルこそ成長の糧
海外挑戦のパイオニア
2019年4月25日(木)更新
対立をエネルギーに!
舞台裏のトークバトル
2019年4月18日(木)更新
W杯の借りはW杯で返す
運命のスコットランド戦
2019年4月12日(金)更新
<ジャパン激闘史③>
オーストラリアで咲いた
ブレイブ・ブロッサムズ
2019年4月11日(木)更新
トライゲッター山田章仁
新天地でV!33歳の挑戦
2019年4月4日(木)更新
世界に通用するスクラム
長谷川コーチの“職人魂”
2019年3月29日(金)更新
<ジャパン激闘史②>
W杯初勝利を呼んだ
宿澤監督の「偵察力」
2019年3月28日(木)更新
アイルランドの弱点
「セクストンを潰せ」
2019年3月22日(金)更新
<ジャパン激闘史①>
「ブライトンの奇跡」秘話
正座が生んだ最適スクラム
2019年3月21日(木)更新
ジェイミー・ジャパンに
グレイシー柔術式トレ
2019年3月14日(木)更新
NZがやってくる!
大分の“おもてなし”
2019年3月7日(木)更新
ラガーマンの誇り
タックルを語ろう
2019年2月28日(木)更新
存在感示した中村亮土
「夢の舞台」への条件
2019年2月21日(木)更新
ジャパン支えるブラウニーの
「異次元頭脳」とタフガイ伝説
2019年2月14日(木)更新
ジャパン復帰への布石か!?
トモさん、サンウルブズ入り
2019年2月7日(木)更新
“再建人”清宮克幸
新たなるミッション
2019年1月31日(木)更新
脱エリートの心意気
代表復帰狙う藤田慶和
2019年1月24日(木)更新
トップリーグ総括
カップ戦導入の意義
2019年1月17日(木)更新
明大日本一とW杯大金星
共通する“裏方”の存在
2019年1月10日(木)更新
誰もが認めるリーダー
主将リーチ・マイケル
2018年12月27日(木)更新
日野「街の誇り」をかけた戦い
地域密着でトップリーグに新風
2018年12月20日(木)更新
ジャパンへの登竜門・TL新人賞
トライゲッター岡田優輝の「嗅覚」
2018年12月13日(木)更新
成長を求めた神戸製鋼移籍
代表「激戦区」に挑む日和佐
2018年12月6日(木)更新
ジャパンの命運握るSO田村優
引き出しの多さで世界に挑む!
2018年11月29日(木)更新
ジャパンの2018年を振り返る
レフェリー分析が目標達成のカギ
2018年11月22日(木)更新
イングランド戦、後半失速の理由
指揮官に求められる「カード捌き」
2018年11月15日(木)更新
帝京大、対抗戦V8に王手
カギ握る竹山晃暉のキック
2018年11月8日(木)更新
現代ラグビーのキーワード
「オフロードパス」の極意
2018年11月1日(木)更新
11.3最強軍団オールブラックス戦
ジャパンよ、躍進のヒントを掴め!
2018年10月25日(木)更新
“生ける伝説”ダン・カーター
「平成最後の冬」を堪能しよう
2018年10月18日(木)更新
“スパルタ”から“自立を求める”指導へ
W杯ベスト8に挑むジェイミー・ジャパン
J:COM ラグビーガイド
PageTop

J:COMへのお申し込み

特典・キャンペーン

特典・キャンペーン

個別サービスのお申し込み

資料請求

加入申込

サービス追加・変更

料金シミュレーション

問い合わせ