
3月23日現在、リーグワンの2022-23シーズン王者クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、首位・東芝ブレイブルーパス東京に勝ち点差3の3位(第12節終了時点)。V奪回に向け、好位置に付けています。
今季のスピアーズの1試合平均22.4失点はリーグ最少。優勝した22-23シーズン(21.3点)に近い数字です。ちなみに6位に終わった昨季は同27.9失点でした。
3月22日、東京・スピアーズえどりくフィールドで行われたリーグワン第12節、横浜キヤノンイーグルス戦でもスピアーズの堅守が目立ちました。
まず4分、イーグルスのウイング、ヴィリアメ・タカヤワ選手をウイングの根塚洸雅選手とフルバックの押川敦治選手が2人がかりでタッチライン外に押し出しました。9分には22mライン内の侵入を許しましたが、プロップの海士広大選手とスクラムハーフの藤原忍選手が止め、相手のノックフォワード(ノックオン)を誘いました。15分にはトライエリア(インゴール)目前に迫られたものの、フッカーのマルコム・マークス選手がスティール(ジャッカル)に成功しました。
前半、スピアーズは根塚選手とロックのデーヴィッド・ブルブリング選手のトライで12対3とリードし、後半に入って4本のトライを加えます。イーグルスに3トライを返されたものの、ラスト5分間に及ぶイーグルスの猛攻に耐え、ボーナスポイントが獲得できる3トライ差をキープ、勝ち点5を積み上げました。
ラグビー専門サイト「ラグビーパス」によると、ボールポゼッションはイーグルス61%に対し、スピアーズは39%。テリトリーはイーグルスが67%に対し、スピアーズが33%。こうした数字が示すように、ボールを動かし、敵陣にも攻め込んでいたのはイーグルスでした。イーグルスのボールキャリー回数はスピアーズの倍以上(144対70)、パス回数は3倍近く(250対90)あったにもかかわらず、スコアに反映されなかったのはスピアーズの堅守に依るものと見ることができます。
堅守の要因を、スピアーズのフラン・ルディケヘッドコーチ(HC)はこう語りました。
「ディフェンスに関しては、(スコット・)マクラウドコーチが本当に小さなことを積み上げるようなかたちで指導してくれている。彼はスピアーズで1年目ですが、ディフェンス面で、大きな影響を与えてくれています」
指揮官がキーパーソンに挙げたマクラウドコーチは、今季就任したディフェンスコーチです。現役時代はニュージーランド代表10キャップを持ち、東芝ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス東京)でも6シーズンプレーしました。指導者としては、スーパーラグビーのチーフス、ハイランダーズでコーチを務めました。17年から7年間、ニュージーランド代表のディフェンスコーチを務め、計2度のW杯(19年日本大会=3位、23年フランス大会=2位)を経験しました。23年W杯フランス大会後、ルディケHCが日本代表HC候補に名乗りを挙げた際には、マクラウドコーチの入閣が取りざたされました。
さてマクラウドコーチはチームに何をもたらしたのでしょう。センター立川理道選手は、こう語ります。
「今季はディフェンスのシステムが変わりました。それをトライ&エラーをしながら対応できている。フィジカルの強さというチームの良さとも、うまく融合できていると思います。前に出るディフェンスから包み込むようなディフェンスに変わりました」
立川選手の言う「前に出るディフェンス」とは高い守備ラインを保ち、相手にプレッシャーを掛けることを意味します。これには裏を狙われるリスクがあります。一方、「包み込むディフェンス」とは、ボールと相手を見ながら守備陣形を調整し、数的優位をつくっていくことです。こちらはギャップを突かれるリスクがあります。ともに一長一短はあるものの、重要なのはそれを選手が理解し、「最適解」を探る作業を怠らないことです。
先のイーグルス戦、タッチライン際で好タックルを連発した根塚選手は、こう語ります。
「昨季と違い、今季は内側の選手の動きに対し、ウイングの選手が揃えていこうという考えがあります。昨季まではまずディフェンスラインを上げ、プレッシャーを掛けていましたが、今季は(高いラインを保つのではなく、少し引いた位置で)待つ。特に横の選手と連係し、前に出るのか、パスを狙うのかを判断しています。ストーミー(マクラウドコーチ)は練習から細かく指導してくれているので、ディフェンスはチームで同じ絵を見られるようになってきたと思います」
新ディフェンスシステムの精度向上が、スピアーズを不気味な存在へと押し上げています。
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