二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2018年11月8日(木)更新

現代ラグビーのキーワード
「オフロードパス」の極意

 世界ランキング11位の日本代表は11月3日、同1位のニュージーランド代表と東京・味の素スタジアムで対戦し、31対69で敗れました。スコアは完敗でも世界最強軍団オールブラックス相手の31得点、5トライは、いずれも過去最多でした。

「成長の証」

 試合後、ジェイミー・ジョセフHCは「いい兆しだし、成長の証」と手応えを口にしました。過去5戦で4トライしか奪えなかったことを考えれば、1試合で5トライも記録したのですから、指揮官が「成長の証」と胸を張るのも頷けます。選手たちもオフェンス面では世界と戦える自信を得たようです。何度もラインブレイクし、相手の守備網を切り裂いたウイングの福岡堅樹選手が「いいアタックができて今まで以上にトライが獲れて収穫があった」と目を輝かせて語れば、途中出場で攻撃にリズムを与えたベテランのスクラムハーフ田中史朗選手も「勢いをつけてアタックすれば、世界一相手にもトライを獲れる」と語気を強めていました。

 今回のオールブラックス戦で生まれた5つのトライの中でも、後半30分にラファエレ・ティモシー選手が奪ったトライは個人技に流れるようなパスワークが噛み合った完成度の高いものでした。

 まずはそのシーンを振り返りましょう。敵陣左サイドを福岡選手がボールを持ってタッチライン際を疾走しました。福岡選手は相手のプレッシャーを受けながら、ハンドオフで2人をかわします。3人目、スタンドオフのリッチー・モウンガ選手からタックルを受け、タッチラインへ弾き出されそうになりながらも、かろうじてバランスを保ち、左手でボールをセンターの中村亮土選手へ送りました。福岡選手からオフロードパスを受けた中村選手は、すぐさまセンターのラファエレ選手に繋ぎます。フリーになったラファエレ選手は、インゴール左に飛び込むだけでした。福岡選手のスピード、強さが際立った得点シーンです。中でも中村選手へのオフロードパスは絶妙でした。

 ところで近年、ラグビーの試合で「オフロードパス」という言葉をよく耳にするようになりました。テレビ中継を見ていても実況アナウンサーや解説者から、当たり前のように出てくる用語です。現代ラグビーのキーワードと言ってもいいでしょう。

 ちなみにオフロードパスとは、タックルを受けながら放るパスです。ラグビーではタックルを受けて一度ピッチに倒れてしまうとボールを地面に置いて離さなければなりません。

「目をつぶってでも捕れる」

 トップリーグ初の通算1000得点を記録し、今年9月に元日本代表のフルバック五郎丸歩選手に抜かれるまで歴代トップの得点数を誇っていたライアン・ニコラスさんはオフロードパスの名手として知られています。サントリーサンゴリアスでプレーし、主にセンターとして日本代表35キャップを誇るライアンさんは、サンゴリアスの公式サイト(サンゴリアス ラグビー大辞典#106 2013年10月31日掲載)で、オフロードパスのコツをこう述べています。

<気をつけなければいけないところは、ボディコントロールしなければいけないという事です。そして、優しく、丁寧にパスをします>

<1対1で100%勝っていないと出来ません。5分5分では出来ないし、6対4でも、7対3でも出来ません。8対2になってようやく出来るかなという感じです。完全に勝った時のみ、やるプレーだと思います>

 もう1人、オフロードパスの名手を紹介しましょう。12-13シーズンにパナソニックワイルドナイツでプレーした日本のファンにもお馴染みのオールブラックスの名センター、SBWことソニー・ビル・ウィリアムズ選手です。

 パナソニックで同僚だったウイングの山田章仁選手は、彼のオフロードパスについて「パスの質が全然違いますね。相手を引きつけて出してくれる球は目をつぶってでも捕れるぐらい正確です。彼が出してくれれば誰でもトライを獲れます」と絶賛していました。

 オフロードパスについて、SBW選手は来日時のインタビューで「特別なプレーではない」と答えています。

<「オフロードパスと言えば、SBWとイメージされるラグビーファンも多いでしょうが、私としてはみんなが持っているスキルだと思っている」>(スポーツナビ2012年11月5日)

 SBW選手はさらに続けます。

<「体に染み込んだスキル。オフロードパスはこだわって出しているわけではなく、本能的なものです」>(同前)

 もっとも、ゲームに躍動感と流動性を与えるオフロードパスも仲間のサポートがなければ、単なる個人技にとどまってしまいます。周囲を生かすためには、できる限り相手を引きつけ、ミクロのタイミングでボールをリリースしなければなりません。すなわち“阿吽の呼吸”が重要になってくるのです。

 日本代表は11月17日、前HCのエディー・ジョーンズさんが率いる世界ランキング4位のイングランド代表と敵地で対戦します。スキルアップしたオフロードパスでラグビーの母国に一泡吹かせたいものです。

K.Ninomiya二宮清純
2019年12月12日(木)更新
プロ化は「総論賛成、各論反対」
「独裁者」川淵三郎に学ぶ突破力
2019年12月5日(木)更新
「ONE TEAM」がラグビー界初の流行語大賞に
4年前、内定の「五郎丸」が“落選”した理由
2019年11月28日(木)更新
サンウルブズ、日本人首脳陣で発進
世界を相手に“やってみなはれ!”
2019年11月21日(木)更新
清宮副会長が描く「プロリーグ構想」
プロ化のリスクと“しなかった”リスク
2019年11月14日(木)更新
廣瀬俊朗が語る「激闘の44日」
「南アフリカには強い芯があった」
2019年11月7日(木)更新
ラグビー列島と化した44日間
「最も偉大なW杯」の余熱利用
2019年10月31日(木)更新
NZ倒した周到なエディーマジック
イングランド4大会ぶりVなるか
2019年10月24日(木)更新
制空権を握られ、南アに完敗
次なる課題はラインアウト
2019年10月17日(木)更新
加速する“Wフェラーリ”
南アの防御網を切り裂け
2019年10月10日(木)更新
リーチ支えるラピース
「ワンチーム」の輝き
2019年10月3日(木)更新
アイルランド戦勝利の陰の立役者
長谷川慎コーチは“スクラム技師”
2019年9月26日(木)更新
NZ“生ハカ”のど迫力!
和製ハカを作るとしたら
2019年9月19日(木)更新
ラグビー100年の大計
母親、女性を“身内”に
2019年9月12日(木)更新
釜石の成功こそがW杯の成功
松尾雄治、“釜石愛”を語る
2019年9月5日(木)更新
ビールグラスは左手で!
紳士のスポーツのマナー
2019年8月29日(木)更新
トンガはナンバーエイト王国
「神様からの贈り物」マフィ
2019年8月22日(木)更新
W杯で地域振興と国際交流を
キャンプ地自治体、期待と不満
2019年8月15日(木)更新
“ブライトンの奇跡”生んだ
乾坤一擲のサインプレー
2019年8月8日(木)更新
万能型バックス松島幸太朗
世界が驚く「Xファクター」
2019年8月1日(木)更新
ラグビーの「資源」を「資産」に!
ソーシャル・イノベーション計画
2019年7月25日(木)更新
W杯のダークホース・アルゼンチン
「この10年で最も進化したチーム」
2019年7月18日(木)更新
7人制、東京五輪で表彰台へ
猛暑も「備えあれば憂いなし」
2019年7月11日(木)更新
ジャパン、新戦闘服で初陣へ
機能性と視覚効果にこだわり
2019年7月4日(木)更新
ラグビー協会、若返り人事発表
「助さん、格さん」で攻めの改革
2019年6月27日(木)更新
サンウルブズの誤算と収穫
ジャパンとの連携に課題も
2019年6月20日(木)更新
W杯ロシアは縁起のいい相手
暑さを味方に「走らせろ!」
2019年6月13日(木)更新
W杯本番まで100日
宮崎合宿スタート!
2019年6月6日(木)更新
“地獄の宮崎”で
「ワンチーム」に!
2019年5月30日(木)更新
新世界大会実現に向け
試される日本の交渉力
2019年5月23日(木)更新
「鉄と魚とラグビーのまち」
釜石に大漁旗がはためく日
2019年5月16日(木)更新
「足で稼ぐ」松田力也
「田村優に対抗できる」
2019年5月9日(木)更新
三洋電機、TL初優勝秘話
「無口な男」の最後の熱弁
2019年4月26日(金)更新
<ジャパン激闘史④>
ライバルこそ成長の糧
海外挑戦のパイオニア
2019年4月25日(木)更新
対立をエネルギーに!
舞台裏のトークバトル
2019年4月18日(木)更新
W杯の借りはW杯で返す
運命のスコットランド戦
2019年4月12日(金)更新
<ジャパン激闘史③>
オーストラリアで咲いた
ブレイブ・ブロッサムズ
2019年4月11日(木)更新
トライゲッター山田章仁
新天地でV!33歳の挑戦
2019年4月4日(木)更新
世界に通用するスクラム
長谷川コーチの“職人魂”
2019年3月29日(金)更新
<ジャパン激闘史②>
W杯初勝利を呼んだ
宿澤監督の「偵察力」
2019年3月28日(木)更新
アイルランドの弱点
「セクストンを潰せ」
2019年3月22日(金)更新
<ジャパン激闘史①>
「ブライトンの奇跡」秘話
正座が生んだ最適スクラム
2019年3月21日(木)更新
ジェイミー・ジャパンに
グレイシー柔術式トレ
2019年3月14日(木)更新
NZがやってくる!
大分の“おもてなし”
2019年3月7日(木)更新
ラガーマンの誇り
タックルを語ろう
2019年2月28日(木)更新
存在感示した中村亮土
「夢の舞台」への条件
2019年2月21日(木)更新
ジャパン支えるブラウニーの
「異次元頭脳」とタフガイ伝説
2019年2月14日(木)更新
ジャパン復帰への布石か!?
トモさん、サンウルブズ入り
2019年2月7日(木)更新
“再建人”清宮克幸
新たなるミッション
2019年1月31日(木)更新
脱エリートの心意気
代表復帰狙う藤田慶和
2019年1月24日(木)更新
トップリーグ総括
カップ戦導入の意義
2019年1月17日(木)更新
明大日本一とW杯大金星
共通する“裏方”の存在
2019年1月10日(木)更新
誰もが認めるリーダー
主将リーチ・マイケル
2018年12月27日(木)更新
日野「街の誇り」をかけた戦い
地域密着でトップリーグに新風
2018年12月20日(木)更新
ジャパンへの登竜門・TL新人賞
トライゲッター岡田優輝の「嗅覚」
2018年12月13日(木)更新
成長を求めた神戸製鋼移籍
代表「激戦区」に挑む日和佐
2018年12月6日(木)更新
ジャパンの命運握るSO田村優
引き出しの多さで世界に挑む!
2018年11月29日(木)更新
ジャパンの2018年を振り返る
レフェリー分析が目標達成のカギ
2018年11月22日(木)更新
イングランド戦、後半失速の理由
指揮官に求められる「カード捌き」
2018年11月15日(木)更新
帝京大、対抗戦V8に王手
カギ握る竹山晃暉のキック
2018年11月8日(木)更新
現代ラグビーのキーワード
「オフロードパス」の極意
2018年11月1日(木)更新
11.3最強軍団オールブラックス戦
ジャパンよ、躍進のヒントを掴め!
2018年10月25日(木)更新
“生ける伝説”ダン・カーター
「平成最後の冬」を堪能しよう
2018年10月18日(木)更新
“スパルタ”から“自立を求める”指導へ
W杯ベスト8に挑むジェイミー・ジャパン
J:COM ラグビーガイド
PageTop

J:COMへのお申し込み

特典・キャンペーン

特典・キャンペーン

個別サービスのお申し込み

資料請求

加入申込

サービス追加・変更

料金シミュレーション

問い合わせ