二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2019年4月12日(金)更新

<ジャパン激闘史③>
オーストラリアで咲いた
ブレイブ・ブロッサムズ

 4戦全敗(vs.スコットランド11対32、vs.フィジー13対41、vs.フランス29対51、vs.アメリカ26対39)に終わったものの、2003年W杯オーストラリア大会はジャパンにとって「世界の背中」が見えた大会でした。指揮を執ったのは向井昭吾さん。「ブレイブ・ブロッサムズ」と称えられた初戦のスコットランド戦を振り返ります。

心の中で「勝てる」

――前半2トライを奪われましたが、2つのPGを決め、6対15で終えました。

向井昭吾:後半の選手の入れ替えまでは予定通りに進みました。最後は突き離されましたが、ある程度手応えを掴んだゲームはできました。選手起用がカチッとはまりプラン通りにいったので、心の中では“勝てる”と思っていました。

――後半11分にスタンドオフのアンドリュー・ミラー選手、スクラムハーフの苑田右二選手を投入しました。

向井:前半は堅く試合を運び、後半にハーフ団を替えてリズムを変えることが最初からのプランでした。

――その4分後にウイングの小野澤宏時選手がトライをあげ、11対15と4点差に迫りました。このゲーム一番の名場面です。

向井:ラインアウトのミスはありましたが、そこからオープン展開から一発でトライを獲るサインプレーも決まりました。またトライを獲った小野澤君が目立ちはしたものの、その裏(逆サイド)にいた大畑大介君の存在が大きかった。彼は足が速く、トライを獲ることばかりを期待されていましたが、スコットランド戦ではディフェンスが光りました。大畑君が一皮むけた試合でもありました。

――ニュージーランド出身、神戸製鋼で活躍していたミラー選手の起用法は?

向井:いや願わくば最初から使いたかったのですが、ケガで万全ではなかった。それに先発したスタンドオフの廣瀬佳司君とスクラムハーフの辻高志君のディフェンス力を買ったという点もありました。前半は堅くいき、後半はセットプレーから一発でトライを獲るサインプレーを考えていたんです。守備では粘って、低いタックルで倒す。それがベースでした。

――しかし15分のトライが逆に相手の闘志に火をつけました。終盤は突き放され、11対32で敗れました。勝敗を分けたのは終盤のスタミナでした。

向井:そうですね。この点は“やはり”という感じでした。15年イングランド大会を率いたエディー・ジョーンズさんも「ハードワーク」が有名でしたけど、僕も同じように厳しい練習を課そうとしました。しかし、この頃はまだトレーニングで追い込むことは良しとされていない時代でした。

コンタクト・フィットネス

――次節のフランス戦は29対51で敗れたものの、一時は1点差に迫るなど善戦しました。

向井:フランス相手にあそこまでフォワードで勝負できるとは思っていませんでした。それにバックスもトライを獲れた。あとはディフェンスをどうにかすれば、世界と戦えるところまで来たという実感はありました。

――向井さんは当時からフィットネスの重要性を説いていましたよね。

向井:走ることに関しては、日本人はマラソンでも上位に入っていたように世界を相手にしても引けをとらなかった。でも日本人はコンタクトしてから体が回復するのに時間がかかっていた。ラグビーで大事なのは、コンタクト・フィットネス。ランニング・フィットネスは当然として、コンタクト・フィットネスはもっと重要です。僕にも経験がありますが、屈強な外国人選手とぶつかり合うと、動きたくなくなるぐらい体が痛いんです。そういう面でもコンタクト・フィットネスをきっちり高めていかないと戦えない。ましてやジャパンは中5日、中4日、中3日というスケジュールでしたから、気持ちはあっても体がついていかない状態でしたね。前年度には中3日での試合も経験して準備してきましたが、そこは難しいところでした。

――大会全体を振り返っての印象は?

向井:僕は世界の背中が見えたと思っています。コンタクト・フィットネスもそうですし、世界と戦うにはどこが足りないかもわかった。そこを補強しながら経験値を重ねることが、ジャパンのレベルアップには必要だと方向性が見えた。この年にスタートしたトップリーグのレベルが上がり、相乗効果を生み出せば、ジャパンは強くなるだろうと予感しました。

――地元メディアから「チェリー・ブロサッムズ」の愛称をもじって、「ブレイブ・ブロッサムズ」と名付けられました。

向井:スコットランド戦の翌日にまちへ出かけた時、現地の人が会うたびに「昨日の試合はすごかったよ。ありがとう」と声をかけてくれた。あらためて“いい試合をしたんだな”と思いました。でも勝っていればもっと反応も違ったのかなと(笑)。

――オーストラリアでは1勝もできませんでしたが、「ブレイブ・ブロッサムズ」は現在もジャパンの愛称となっています。

向井:本当にいいチームでしたね。僕は6番から8番(大久保直弥、箕内拓郎、伊藤剛臣)の3人はジャパンの歴代最強だと思っています。特にナンバーエイト伊藤のサイドアタックのスピードは天下一品。タックルも低く下からいく。両フランカーを含めて、あの3人の働きは素晴らしかったと思います。

<向井昭吾(むかい・しょうご)プロフィール>
1961年10月2日、愛媛県伊予市出身。新田高、東海大学を経て東芝に入社。ジャパンのフルバックとして13キャップ。W杯には87年ニュージーランド・オーストラリア大会に出場した。現役引退後の94年に東芝府中(現東芝ブレイブルーパス)の監督に就任。チームを96年度から日本選手権3連覇に導いた。00年に日本代表監督に就任。01年から日本ラグビー初の専任代表監督となった。03年W杯オーストラリア大会では4戦全敗だったものの、強豪相手に善戦した。04年にコカ・コーラウエストジャパン(現コカ・コーラレッドスパークス)の監督に就任。2年目でトップリーグ昇格に導いた。12年度はGM兼任監督、13年度はGM専任となり、14年度限りでチームを離れた。19年度より監督として5年ぶりにチームに復帰した。

K.Ninomiya二宮清純
                                                 
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