クボタスピアーズ船橋・東京ベイは昨季のトップリーグ(TL)で、過去最高の3位に入りました。この成績が評価され、来年1月にスタートする「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(ジャパンラグビーリーグワン)において、7日、他カードに先駆け、昨季TL王者の埼玉パナソニックワイルドナイツと国立競技場で対戦します。スピアーズの石川充ゼネラルマネジャー(GM)にリーグワンへの意気込みを聞きました。
――リーグワンの開幕戦は全ディビジョンの試合に先立ち、スピアーズは埼玉パナソニックワイルドナイツと国立競技場で対戦します。
石川充: チームの歴史の中でオープニングゲームを任せてもらうことは初めてです。この何年間かの自分たちの取り組みが評価されたのかなと思っています。開幕戦は“パナソニックが勝つだろう”という大方の予想を、いい意味で裏切ってみせたい。
――最後のTLとなった昨季は、チーム史上最高成績の3位に入りました。躍進の要因は?
石川: よく勝つ文化、勝つ伝統と言われますが、ヘッドコーチ(HC)のフラン(・ルディケ)に就任当初から「正しい文化と正しい環境をつくり、正しい行動をすることがチームを強くする」と言われ続けました。その“正しい”の基準をチームで6年間、しっかりつくることできたことが好成績につながったんだと思います。
――正しい文化、正しい環境、正しい行動とは?
石川: 特別なことはしていません。たとえば工場の中の練習グラウンドでは「工場で定められたルールを守りましょう」などです。当たり前のことを当たり前にできるようにすること。それをフランはきちんと選手ひとりひとりと面談して決めました。やると決めたことはやる。そこを明確にしました。
――2016年度からルディケHCが就任しました。彼を招聘した理由は?
石川: 長くチームづくりをしてもらえるHCが欲しかった。フランはスーパーラグビー(SR)のブルズ(南アフリカ)で8年間指揮を執った経験があり、2度の優勝に導くなど実績も十分でした。
――就任1年目は12位、以降11位、7位、19年度は不成立。なかなか結果が出ませんでした。
石川: 我々が目指す“正しい文化”をつくるには、時間がかかると思っていた。時には我慢も必要で、そこは中長期的な視点を持ってやらないといけないと考えていました。
――ルディケHCと立川理道選手は「同じ絵が見えていた」と話していました。
石川: ウチにはチームキャプテンの立川理道、日本代表現キャプテンのラピース(ピーター・ラブスカフニ)をはじめ、フランの考え方にリンクする真面目な選手が多い。彼らとともに正しい文化をつくってきた。その意味でチームは成熟しつつあると思っています。
――昨季、新人賞に輝いた金秀隆選手は関東大学リーグ戦2部の朝鮮大から加入したルーキーです。
石川: 彼が大学2、3年の時に出場していた関東大学リーグ戦のセブンズの大会を視察しました。彼みたいなタイプはウチにいなかったので、活躍するんじゃないかなというイメージが湧きました。高さ(身長186センチ)があり、ランニングスキルもある。それにスペースに走り込んでいけるところが魅力的でした。
――彼の能力を知っていた石川GMからすれば、昨季の活躍は予想通り?
石川: いや、正直に言うと驚きましたね。身体づくりに1、2年かかるだろうなと思っていましたから。でもボールを持たせたら絶対活躍するという自信はありました。1年目からケガをして長期離脱だけは避けたいと思っていましたが、無事にシーズンを戦い終えたのでホッとしています。
――スピアーズのチームスタイルに合うキャラクター?
石川: そうですね。彼も真面目ですね。ハングリー精神があり、“2部の朝鮮大からTLのチームで活躍する”という明確な目標を持っていた。それが実現できてよかった。
――リクルートに関しては、選手の人間性を重要視していると?
石川: そこに重きを置いています。ここ最近のいい選手は採用担当の前川(泰慶)が採ってきている。基本的にはラグビーが上手い下手の前に“人”です。その部分はしっかり見極めていきたい。
――それは外国人選手も同じですか?
石川: もちろんです。ラピースも映像を見て、献身的なプレーヤーだということがわかりました。人間性は誰もが認めるところ。複数の試合を映像で観ましたが、ワークレート(仕事量)が飛び抜けていた。南アフリカの代表キャップを持っていないことを確認した上で獲得を決めました。
――ルディケHCにも相談したと伺いました。
石川: フランも「絶対獲るべきだ」と言っていましたね。
――昨季の好成績の要因のひとつにセットプレーの安定がありました。現役南アフリカ代表フッカーのマルコム・マークス選手、2メートル5センチのロック、ルアン・ボタ選手の存在が大きかった。
石川: 彼らにチームが合わせるのではなく、彼らがチームに合わせてくれた。トップ選手でもスピアーズの文化に合わせることがベースになっています。
――新リーグに向け、選手の大きな入れ替えはありませんでした。
石川: 私自身、中長期視点で新リーグ2年目までの絵を描いてきた。それに合わせ、外国人も新リーグに上がるまでの1年だけではなく、新リーグ1、2年目に結果を出すために契約を結んでいます。
――スピアーズと言えば、ファンやサポーターを“オレンジアーミー”と呼びます。これもルディケHCのアイディア?
石川: はい。彼は「スタジアムをオレンジに染め、サポートしてくれる人たちも一緒に戦うメンバーだ」ということで“オレンジアーミー”と呼ぶようになりました。
――愛称があることで親しみも湧く。石川GMにとって“オレンジアーミー”の存在とは?
石川: スピアーズには「Proud Billboard~強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの誇りの広告塔となる~」というビジョンがあります。互いを誇りに思える関係性をつくっていきたい。
――リーグワンではホストエリアの設定や主催ゲームの興行権を持つなど、地域密着がカギになります。
石川: JリーグやBリーグにおけるホームタウンの感覚とは、ちょっと違うものになると思っています。ウチがホストエリアを東京都江戸川区、中央区、千葉県市川市、船橋市、千葉市、市原市、成田市と広く見ているのは、スタジアムや練習場があるところ以外にチームやクボタという企業と関係のある地域も入れているからです。コアになるのは練習場のある船橋やスタジアムのある江戸川ですが、もっと広域での活動を考えています。
――企業の地域貢献を見据えた上での判断ですね。
石川: 今後、リーグや各チームは事業面だけじゃなく、社会的価値も打ち出していければ、ラグビーの価値はさらに高まっていくはずです。いろいろなかたちのチーム、いろいろな強化の仕方があると思いますが、ウチは事業化と社会化の両輪でチームを回していきたいと考えています。
<石川充(いしかわ・みつる)プロフィール>
1969年2月2日、大阪府出身。現役時代のポジションはスクラムハーフ。中学1年でラグビーを始める。龍谷大を経て92年、クボタに入社。クボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)チームが初の全国社会人大会出場を果たした97年度まで選手としてプレー。2003年度に採用担当、翌年は主務に就いた。11年度からチーム統括、16年からはGM(19~20年度はチームコーディネーター)に就き、スピアーズのチーム強化に力を注いでいる。
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