日本と四季が反対のオーストラリアで、季節外れのサクラが咲きました。5月10日、サクラフィフティーンの愛称を持つ、世界ランキング12位の女子日本代表が、同5位の女子オーストラリア代表を12対10で破ったのです。
ワラビーズならぬワラルーズこと女子オーストラリア代表は、2010年W杯イングランド大会で3位の実績を持つ格上の相手です。過去の対戦成績は3戦全敗。17年W杯アイルランド大会では15対29。レスリー・マッケンジー体制になってからも、3年前のオーストラリア遠征で2連敗(5対34、3対46)、しかも1ケタ得点に抑えられていました。
雪辱に燃える日本でしたが、試合直前にアクシデントに見舞われます。新型コロナウイルスの影響で、登録メンバー23人中4人が登録外に。遠征中にコロナに罹患したマッケンジーヘッドコーチ(HC)も会場に姿を見せることができませんでした。
そんな窮地を救ったのが日本のディフェンスです。前半は自陣に押し込まれる時間が続きましたが、相手に得点を許しませんでした。最大のピンチは32分。ラインアウトから左に展開され、インゴール目前まで迫られましたが、スクラムハーフ津久井萌選手の低いタックルが相手の勢い止めました。そこから再度攻撃をつなげようとしたパスをウイング今釘小町選手がインターセプト。ボールを前方に大きく蹴り出し、事なきを得ました。
スコアレスでハーフタイムを迎え、後半9分に日本が均衡を破ります。敵陣で前に出るディフェンスで相手のパスミスを誘い、こぼれ球に反応したのがスタンドオフ大塚朱紗選手。ボールを前方に蹴り出すと、自らキャッチし、インゴール左中間に飛び込みました。大塚選手はコンバージョンキックも決め、7対0と日本がリードします。
15分に1トライを返されましたが、4分後に突き放します。敵陣に攻め込み、大塚選手のパスからフランカー細川恭子選手がインゴールに抜け出しました。12対5と再び7点差にします。
その後は25分にトライを許し、38分には自陣中央やや左で反則を犯してしまいます。PGを決められれば逆転という場面を迎えましたが、ここは相手選手のキックが枠を外れて命拾い。終了間際にプレッシャーをかけて相手の落球を誘うなど、集中力を最後まで切らさず守り抜きました。結局、12対10でノーサイド。強豪撃破で女子ラグビー史に新たなページを刻みました。
これで今回のオーストラリア遠征は3連勝。10月に行われるW杯ニュージーランド大会に弾みをつけました。フランカー長田いろは選手は「他の国にとっても脅威と感じてもらえると思う。サクラウェーブという自分たちの波をもっと加速し、大きな波をつくれた」と胸を張りました。
19年にカナダ代表のフッカーとして25キャップを記録し、W杯2大会に出場したマッケンジーHCは就任以来、ディフェンスに力を入れてきました。キャプテンのプロップ南早紀選手も「このチームが始まった当初からディフェンス、コンタクトの部分はずっと強化してきた」と語っています。
オーストラリア戦でフル出場を果たした長田選手は、「キーワードを言いながらディフェンスし続けたので冷静にディフェンスができた」と言い、続けました。
「レスリーHCから言われた『ゴー・ダンス・ゴー』というキーワードがあり、フットワークを使って相手を倒すことを意識していました」
このキーワードには、どういう意味があるのでしょう。マッケンジーHCの説明です。
「この言葉はタックルまわりに使われるキーワードのひとつです。最初のゴーでラインから上がる瞬発性、ダンスは足、体を動かし続けることを意図しています。2回目のゴーでアクセル(タックルを仕掛ける)。『ゴー・ダンス・ゴー』と聞くと、軽やかな感じがしますが、より選手たちを力強くさせるものです」
昨年秋のヨーロッパ遠征ではウェールズ代表、スコットランド代表、アイルランド代表に3連敗しました。失点数は23、36、15と、1試合平均24.7失点でした。それが今回の遠征3試合では14、10、10。平均11.3失点。このデータからもディフェンス面での成長が見てとれます。
日本が5回目の出場となるW杯はニュージーランドで10月開催予定です。南半球の季節は春。満開のサクラに期待しましょう。
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