2023年8月17日(木)更新

リスクヘッジ重視の代表選手選考
故障者多く、残り3枠はFWから

　15日、日本ラグビー協会はW杯フランス大会のジャパンの登録メンバー33人中30人を発表しました。残り3人は故障者などを考慮し、この日の発表を見送りました。エントリーの最終期限は21日です。

山中亮平の無念

　まず最初に栄えある30人を紹介しましょう。

PR稲垣啓太（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、クレイグ・ミラー（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、シオネ・ハラシリ（横浜キヤノンイーグルス）、具智元（コベルコ神戸スティーラーズ）、垣永真之介（東京サントリーサンゴリアス）、ヴァル・アサエリ愛（埼玉パナソニックワイルドナイツ）

HO堀江翔太（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、坂手淳史（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、堀越康介（東京サントリーサンゴリアス）

LOジェームス・ムーア（浦安D-Rocks）

LO/FLジャック・コーネルセン（埼玉パナソニックワイルドナイツ）

FL姫野和樹（トヨタヴェルブリッツ）、ベン・ガンター（埼玉パナソニックワイルドナイツ）福井翔大（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、リーチ・マイケル（東芝ブレイブルーパス東京）

SH齋藤直人（東京サントリーサンゴリアス）、流大（東京サントリーサンゴリアス）、福田健太（トヨタヴェルブリッツ）

FB/SO小倉順平（横浜キヤノンイーグルス）

SO李承信（コベルコ神戸スティーラーズ）、松田力也（埼玉パナソニックワイルドナイツ）

CTB長田智希（埼玉パナソニックワイルドナイツ）、中野将伍（東京サントリーサンゴリアス）、中村亮土（東京サントリーサンゴリアス）、ディラン・ライリー（埼玉パナソニックワイルドナイツ）

WTBジョネ・ナイカブラ（東芝ブレイブルーパス東京）、シオサイア・フィフィタ（トヨタヴェルブリッツ）、セミシ・マシレワ（花園近鉄ライナーズ）、レメキ・ロマノ・ラヴァ（NECグリーンロケッツ東葛）

FB/WTB松島幸太朗（東京サントリーサンゴリアス）

　最大のサプライズは、前回の2019年日本大会で5試合に出場し、ベスト8進出に貢献したフルバックの山中亮平選手が外れたことです。山中選手は188センチの長身フルバックで、左足からのロングキックが持ち味です。この夏の5試合のうち2試合でスタメン出場していました。

　ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ（HC）は落選理由について、「もちろん山中は素晴らしい選手でクオリティも高い。だが神戸（コベルコ神戸スティーラーズ）で10番としてプレーしていなかった」と準備不足をあげました。

　ジェイミーHCは、山中選手のスタンドオフとしてのプレーを確かめたかったようです。

堅実さ好む南島

　しかし、どこのポジションを与えるかは所属クラブのHCが決めること。山中選手にとっては気の毒な結果になりました。

　その山中選手、当初は今大会限りでの代表引退を示唆していましたが、落選が決まった後、SNSに＜このまま諦めるのは性に合わないので山中は、2027年のワールドカップ目指します＞と書き込みました。是非、落選の悔しさを次へのモチベーションにかえてもらいたいものです。

　ジェイミーHCは、フルバックの1番手として松島幸太朗選手の名前をあげました。続けて「もし松島にケガなどがあった場合はレメキ、（セミシ・）マシレワでカバーできる」とも。ユーティリティープレーヤーが優先された背景には「レッドカードやケガなど、現代のラグビーではいろいろな事態が起こりうる」との考えがあるようです。転ばぬ先の杖、ということでしょう。

　そういえば過日、取材した際、元日本代表の今泉清さんから興味深い話を聞きました。今泉さんは高校時代に同じ高校生だったジェイミーHCと対戦した経験があります。加えていえば、今泉さんは早稲田大学卒業後、ニュージーランドに留学しています。

「彼はニュージーランドの南島マールボロ出身のせいか、堅実なプレーが印象的でした。マールボロ、オタゴ地方のある南島は、コーチが求めるプレーをする堅実な選手が好まれます。アシスタントコーチを務めるトニー・ブラウンも南島の出身です。一方で北島、特にオークランド地方などはファンタジスタ（創造性に富んだプレーをする選手）が好まれる傾向にあります」

　周知のようにニュージーランドは、北島と南島の2つの大きな島を中心に成立している島国です。北島と南島では住民の性格が違うように、志向するラグビーのスタイルにも違いがあるというのです。

　今泉さんの話を敷衍（ふえん）していえば、ファンタジスタタイプのスタンドオフ山沢拓也選手（埼玉パナソニックワイルドナイツ）も代表メンバーに名を連ねることができませんでした。意外性のあるプレーヤーより、タスクをしっかり実行する選手の方が望ましいと考えたのかもしれません。

　しかし、誰を選ぶか選ばないかは指揮官の専権事項です。今大会限りで退任するジェイミーHC。悔いのない采配を振るってもらいたいものです。