
日本代表の今シーズン初のテストマッチが5日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で行われ、ウェールズ代表を24対19で破りました。日本代表の対ウェールズ戦勝利は、2013年6月以来2度目。ラグビー界の最上位層に位置付けられる「ハイパフォーマンスユニオン」の国・地域に勝つのは2019年W杯日本大会のスコットランド代表戦以来、6年ぶりでした。
世界ランキングは日本が13位に対し、ウェールズは12位。格上の相手ではあるものの、ウェールズはテストマッチ17連敗中だったため、チャンスは大いにあると見られていました。
しかも、この日は日中の気温が30度を超える猛暑です。6月26日に来日したばかりのウェールズの選手たちが暑熱順化するのは、容易ではありません。
前半を7対19で終えた日本は、後半に入って一気にギアをあげます。19分、スクラムハーフ藤原忍選手の速い球出しから、代表初キャップのフルバック中楠一期選手がトライ。30分、敵陣深くのラインアウトモールから、最後はセンターのハラトア・ヴァイレア選手が抜け出し、逆転のトライを決めました。
終わってみれば24対19。後半は17対0とワンサイドでした。
勝因はフロントロー(プロップ、フッカー)です。1番の紙森陽太選手、2番の原田衛選手、3番の竹内柊平選手はフル出場を果たしました。
その点を問われたエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、こう答えました。
「ドミネート(支配)し、相手を圧倒している選手を代えるわけがないでしょう」
30分のヴァイレア選手のトライは、スクラムでの相手の反則(コラプシング)が起点となりました。
紙森選手は昨年ニュージーランドに短期留学しました。この経験が生き、レフリーとの英語でのコミュニケーションがうまくいったようです。
「(試合を通して)うまくいかない部分もありましたが、レフリーとコミュニケーションが取れました。(試合中に)“スクラムをどう感じていますか?”と聞き、フィードバックをもらいました」
やはり頼りになるのは、キャプテンでもあるフランカーのリーチマイケル選手です。
「スクラムに関しては、相手がステップアウトしているように見えたので、レフリーに“見て欲しい”と話しました。後半は見てくれるようになり、ペナルティーを取ることができました」
この日、スタジアムに響いたのはエディーHCの「シバ!」という掛け声です。おそらくウェールズの選手たちは、何を言っているのかわからなかったでしょう。
要するに、芝に膝がつくくらい重心の低いスクラムを組もう、という指示です。練習の時から、選手たちはそのことを意識し、いわば合言葉になっていました。
もっとも、重心の低いスクラムは、今に始まったことではありません。第1次政権の時にも、エディーHCとマルク・ダルマゾスクラムコーチのコンビは、口を酸っぱくして、そのことを指摘していました。
以下は、当時の代表選手・大野均さんから聞いた話です。
「エディーさんはスクラムでも世界に通用するという考えで(第1次政権を)スタートしました。マルクさんは“日本人は正座ができるから低いスクラムが組める”と言っていました。“だから他国に真似できない低いスクラムを追求するんだ”と……」
現在のスクラムコーチはニュージーランドの名プロップ、オーウェン・フランクスさんです。J SPORTSラグビーの公式YouTubeのインタビューでこう話しています。
「チームがトップを目指す上で、スクラムも世界のトップになるというゴールがあります」
かつて世界から遅れをとった日本のスクラムが「世界のトップになる」というのですから、時代の流れを感じずにはいられません。ウェールズとの第2戦は12日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸で行われます。かつて「ティア1」と呼ばれた同一チームから同じ年に連勝となれば、日本ラグビー史上初です。
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